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20 お隣さんに





「私引っ越しするの」





ある日学校で明日香がそんなことを言った。さりげなく何でもないような感じで。


「……転校するのか?」


だとしたら寂しい。里奈、マリア、明日香、俺の4人で何かをしていたことが多い。それが当たり前の日常。楽しい時間、俺にとってかけがえのないもの。それが失われるのだ。

しかし、仕方のないことだ。転校してもL〇NEがあるしな。連絡は取り合える。


「いえしないわ」

「なぬ?」


今の俺のちょっとした内心シリアス返して。全く俺の女々しい一面が出てしまったではないか。


「今の家より良い家に住みたいってお母さんが言い出してね。探したら良い一軒家があったからそこに引っ越そうってだけ」


「何だ、そんなことか」

「だとしたらこんな軽く言わない」

「てっきり転校して寂しくなるところだったよ〜」

「あら、ごめんなさいね」


ニヤリとしながらいう彼女。ふぉう、いい笑顔です。


「んで……いつ引っ越しするんだ?」

「明日の土曜よ、もうあと運ぶだけだから……その後荷物を出すだけね」

「ほぉ〜良い家だといいな」

「見た感じ良い家だったわ」


その後普通に女の子に囲まれて過ごした。




次の日の土曜の昼過ぎ、掃除機をかけ家の掃除をしている時、



ピンポーン



とインターホンが鳴った。


珍しい。この家に誰か来るとは…しかし宅配便ではないな。宅配はいつも真夏が受け取るようにしている。宗教勧誘かセールスウーマンだろうか。


玄関を確認すると1人の女性がいた。しかし変なことに誰かに似てる感じがしているのだ。


そしてその女性は紙袋を持っている。


「どちら様ですか?」


とりあえず誰か聞いてみる。


「あっ……今日隣に引っ越して来た鮫島です」



……ん? まさかな。



俺はカツラを被り玄関を開けてその女性と会う。よく見ると明日香と似ている感じがする。


「ご丁寧にありがとうございます。私は木下ですよろしくお願いします」

「いえいえ、あっ一応娘もいるんです。明日香〜!」



……。



「お母さん、そんなに大きな声出さなくても平気よ。お隣さんに迷惑……」

「おっす明日香、これからはお隣同士だな」

「よろしく木下君。世間ってすごく狭いのね」

「えっ、知り合いなの? それに木下君って……君もしかして悠人君?」

「はい、娘さんにはよくお世話になってます」


俺はカツラを取る。明日香がいるのだ。変声しても意味ないしな。


「嘘、本物!?あ〜〜やっぱり本物だ!! 可愛いしカッコいい!!」

「うぇ? ウプッ!」


明日香のママさんに抱きしめられた。魅惑の果実が……てこれこの前にやった。てか奥さんこれセクハラですよ。


「お母さん悠人君を離して! 私もまだしたことないのに!」


「今世紀最大のラッキーウーマンに何言っても無駄よ小娘」


自分で言うのそれ? しかも俺を抱きしめる力強くなってるし。とりあえずこれ以上は辛いので脇腹を平手で叩く。


「あっ、ごめんなさい。会えたのが嬉しくてつい」


「いえ、気持ちは分からなくもないので」


感情が高ぶると途端に積極的な行動をするようになるんだよね。分かるよ。


「よろしければ上がります? お茶くらい出しま「是非っ!」」


全て言い終わる前に食い気味で答えられた。大人の対応など知ったことかと言わんばかりに。


「いいの木下君?」

「ここ外だからな。他の人の目に映るのは困る」





家に上らせたのはいいのだが何を話せばいいのか分からない。とりあえずお茶を出そう。


「粗茶ですがどうぞ」

「男の子にお茶入れてもらえるなんてね〜。やっぱり引っ越して良かった!」

「ごめんね、木下君」

「気にするな」

「あっこれ饅頭どうぞ」


鮫島のママさんが持ってきた紙袋を渡して来る。


「ありがとうございます、えっと……お名前は?」

美雨みうです。よろしくね悠人君」

「はい、よろしくお願いします」


さて……何を話そうか。明日香となら日常的な話題でも話せるんだけどな。


「明日香のお母さんはどんなお仕事されてるんですか?」

「もう、悠人君ったら……美雨でいいのよ。ていうか美雨って呼んでほしいな」

「いや、しかし、分かりました美雨さん」

「ありがとう、仕事はね……アイドルのプロデューサーをしてるの」


アイドル……か。


「それは凄いですね」

「ふふふ、やりがいのある仕事よ」

「この前担当してた男子アイドルが急に引退してキレてたくせに」

「あんな印税目的で入ってきた奴なんていなかったいいね明日香?」

「うわ〜」

「明日香それってもしかして、この前話してた人?」


数日前にテレビで最短で辞めたって結構騒がれていた人だったはず。確かデビューして1年だっけか。


「そうよ、男子アイドルって小遣い稼ぎ感覚でやってる人が多いらしいの。ねっお母さん」

「これといってかっこいいわけでもない、我儘で愛想もないし歌もそんなに上手くない。でも男だから人気が出る。そして小遣い稼ぎ感覚だからすぐに辞める人が多い。最長でも3年だったかしら。振り回されるこっちの身にもなってほしいわ」

「大変なんですね」

「何処かにいい子いないかなー」


チラチラとこちらに目線を向けてくる美雨さん。


「お母さん木下君は駄目よ」

「はーい、分かってまーす」

「ん? 今の話がつかめない。明日香どういうこと?」


俺は駄目ってやっぱり性格的に無理とかそういうのだろうか。それとも顔が駄目なのだろうか。


「お母さんは木下君のファンクラブの会員なの。だからそういう商業関係とかの話はNGなの」


へぇ、知らない間に色々とルール決められてんだな。新聞は公式認定した後は柳田さんに任せっきりだし。今度ファンクラブについて聞いてみるか。彼女なら深く知ってそうだし。


しかし男性アイドルねぇ……。やはり将来的に職は持っといた方がいいのだろうか。


「まぁ、もし悠人君がアイドルに興味あるならこれにすぐ電話して? 力になるから」


俺は美雨さんから名刺を受け取る。


なになに金剛プロダクション…って確か1番大きなアイドルの事務所じゃないか。


「じゃあそろそろ帰りましょう。まだ荷物全部出してないからね。あっ、あともう1ハグしていい?」


美雨さんはとっても素直らしいね。言うことが直球すぎるもん。


「駄目よお母さん。じゃあ悠人君また」

「おう、いつでも遊びに来いよ。どうせ土日は基本暇なんでな」

「じゃあ明日またお邪……「じゃあね♪ 悠人君!!」」

「えっ? ……あっ、はい」


なんか言おうとしていたのに連れてかれてしまった明日香。今の途中を聞く限り多分明日もお邪魔したかったのだろう。しかしそうはさせんと母親に邪魔される。


……なんか可哀想だな。


しかしお隣さんね、なんかラブコメ的な展開がありそうだな……。


と思う俺であったが、



「うお……すげぇ。茶柱立ってる」



自分の湯呑みを見ると茶柱が立っている。それを見ていると、


あれ……今何考えてたんだっけ? まぁいいか。


となるのであった。




その後のL○NEで明日香が4人グループで引っ越しについて里奈とマリアに話すと、


【いいなー!! 私も悠人君のお隣に引っ越ししたい!】


里奈の羨ましいと言う返信と


【悠人様、お隣さんの土地買い取ってくるのでしばしお待ちを】


マリアのこわ〜い返信で少し震えた。


【私マリア、今悠人様のお隣さんの土地買い取っています】

【マリア、それはやめようね】


普通に出来るからなお怖いですマリアさん。俺には釘をさすことしかできないんですよ?


【冗談です♪】


全く貴族様のジョークは心臓に悪いぜぇ。



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