閑話 会えない彼を思う婦人 後
ゲームセンターに着く。そして入る前に
「あっ、一応ゲームセンター内はうるさいので気をつけて下さい」
と彼は一言注意を言ってくれた。
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
しかし入ってみると、
「〜〜〜〜〜っ!!!」
まさに音の爆弾。様々なゲームの音が混ざっているのだろう。まさかこんなに大きいなんて。
少しクラッとなってしまうが、
「大丈夫ですか!?」
と彼が後ろから体で支えながら耳を塞いでくれる。彼に触れられている嬉しさもあるが、それと同時に彼に寄りかっている状態。彼に包み込まれている感じがして心臓の鼓動が早くなる。
「ええ、大丈夫です」
「まさか1階が音ゲーと格ゲーエリアなんて」
「静かな場所はあるんですか?」
「いや、ゲーセンは何処もうるさいです。とりあえず俺のイヤホンを耳栓がわりに使ってください」
そう言って私の耳にイヤホンを入れる。イヤホンはBluetooth、ワイヤレスで音楽が聞ける物らしい。これで少しは楽になった。
「ありがとうございます」
「いえいえ気にしないでください。南さんも平気ですか?」
「いえ、私は結構来ていたりするので大丈夫です」
「ではプリクラでも撮りましょう」
「プリクラ? それは何ですか?」
「奥様、写真を撮ってデコレーションする機械のことです」
「そうなんですか。でもいいんですか悠人さん、他にやりたいゲームはあるんじゃないんですか?」
「興味はありますが、また今度でいいです。それより俺はエリナさんと南さんで楽しみたいので」
まぁなんて嬉しい事を。
「ありがとうございます」
「えへへっ、悠人様ありがとうございます」
「いえ、こうして来られるのもエリナさんと南さんのおかげですから」
そしてプリクラの機械の前で、
「みんなで一緒に撮りますか?」
「「いえ、2人っきりで撮りましょう」」
「あっ、はい」
少し食い気味に言ってしまったが仕方ない。この機会を無くしてしまったら、いつまた一緒に来れるか分からないですからね。
「では先にリボン、撮りなさい」
「そうですね、どういうものか実際に見てもらってからの方がいいですからね」
「分かりました奥様! さぁ悠人様撮りましょう!!」
私は外で待つことにする。すると、
『貴方達2人の相性を測っちゃうぞ〜♡ 貴方達の相性は………75! 仲良いねぇ〜〜、もしかして初々しい恋人関係かなぁ? これからも数字高めてレッツLOVEライフ!
チッ……リア充め』
………。
落ち着きなさいエリナ。これはそういうアプリケーションみたいなもの。まず仲が悪ければプリクラを一緒に撮らないはずです。ランダムに出される数字に惑わされる私では、
「この機械って最新機種で高性能だから相手との仲の良さって結構当たるらしいよ」
「マジッ? うちらも撮ろ撮ろ!」
………私と彼の数字も高いといいですね。
2人が写真を撮り終わり、次にデコレーションをするらしい。ハートやキラキラ、顔の編集など様々である。彼もこれは初めてのようで平仮名で『ゆうと』『りぼん』と書いていた。
しかし隣のリボンは、
相合傘やハートを多用。顔の編集など一切せず、文字のみ。『ラブリーでチャーミーな私達♡』『※私達の仲は壊れません』『ズッ友だよ!』ムムッ! 羨ましいですねぇ。私も真似をしましょう。
デコレーションする前の写真もたくさん個性溢れているものばかり。2人笑顔でダブルピース。腕を組んでいるもの。ふんッと2人そっぽ向いたもの。リボンが軽くコブラツイストをかけて2人笑っているもの。
……本当に恋人みたいな事してますね。悠人さん許容範囲が広すぎないでしょうか。
しかし、リボンがこれくらいしているのだから私も平気なのかもしれない。
「では悠人さん、今度は私とお願いします」
「はい、よろしくお願いしがスッ!」
……。
「忘れて下さい」
「イヤです♪」
「エリナさんきらーい!」
可愛い。
そして私と彼がプリクラに入る。
「そういえば、刀持ってないんですね」
「一応銃刀法に引っかかるのですよ、今日も何回か警察に身分証明書見せました」
「何やってんすか」
偶に彼の敬語が崩れることがある。多分それが彼の素なんだろう。敬語を使うのは私が年上だから。
もし私が彼と同世代なら友達言葉で話してくれていたのでしょうか。
「敬語が難しいのなら、使わなくてもいいんですよ」
その方が私も嬉しいんですけどね。
「……何となくですが、年上には使わなければならないという使命感が」
「ふふ……何ですかそれ」
「タメ口が良いというのなら少し待って下さい。慣れていないもので」
「はい、待ちます」
「はい、待ってくれさい」
「混ざりましたね」
「無理はいけないですね」
「では撮りましょう」
「oui」
写真はさっきのリボンと同じ様なポーズをお願いした。彼は普通に了承してくれた。そして、
『2人の相性図るぜよ! 相性は……60! 焦るでない焦るでないぞ!! まだまだ知り合ったばかりであろう! 急がば回れでござる!!
……振られてしまえ』
「この最後の一言何ですかね?」
「機械のことですから放っておきましょう」
ええ本当に。
「……そうですね。それよりあと2枚ですよ。どんなポーズで撮りますか?」
「そのままでいて下さい」
「立つだけですか?」
「はい」
悠人さん、貴方は温かくとても優しい。貴方と一緒に何かをすれば全てが楽しく行える事でしょう。
「な……なななッ」
「ふふっ……。 どうしました?」
私は彼の頰にキスをした。
初めてのキス。
悠人さん、私はここまですると決めたんですよ?
絶対に落としてみせます。
「エリナさん、あまりからかわないで下さい! 俺慣れてないんですから」
「ふふふっ、学校で色んな女の子達を誑かしている貴方が言いますか?」
「うぇっ!?」
凄く顔を赤くして慌てている。もしかしたらこういうのに免疫がないのでしょうか。
慌てている彼を見ていると落ち着いてくる。
「すっ、好きで誑かしている訳では無いです!」
「知っていますよ、でも優し過ぎるのも罪ですよ?」
「分かってるんですけどね。いつか刺されるんじゃないかと思ってはいます」
「嫌ですよ? 悠人さんの殺傷事件なんて」
「俺だって我が身が大事です」
『あと1枚撮るぜよ! 準備するぜよ!』
「あと1枚ですね」
「あっ! 撮る時少ししゃがんで貰えますか? 俺の背と同じくらいに」
「ええいいですよ」
私の身長は160くらい。彼は確か150くらいだったはず。なので少し膝を曲げるだけでいい。
肩を組むのだろうか、腕を組むのだろうか。彼の事だ、また新しいポーズでもするのだろう。
私はカメラを見ながらシャッターを切るのを待つ。
そして、
カシャッ!
と同時に頰に何かが触れているのを感じた。
それはカメラを見ていたのですぐに分かった。
彼が私の頰にキスをしたのだ。
「からかわれたお返しです!」
とそっぽを向いている彼。
しかし、私はその後の記憶がない。
「うーん」
起きたらそこはリムジンの中だった。見たところ家にちょうど着いているところだった。
「あっ……おはようございます」
「あれリボン? 悠人さんは?」
「もう家に送りました」
「そうですか」
「良かったですね。頰にキスされるなんて」
「夢じゃなかったんですね」
「見事に現実です。おまけに王子様抱っこされていましたし。あっ写真見ます?」
「えっ? それは何故ですか?」
「奥様運んだの悠人様ですから」
自然と顔が熱くなる。
「今日の奥様可愛いですね」
「なっ、切りますよリボン!!」
「慌てて刀すっぽ抜けてますよ」
「あわわわっ……」
「見事私同様悠人様に骨抜きにされてますね」
「もう知りません!」
「とりあえずプリクラをどうぞ」
私は引ったくる様にリボンからプリクラを受け取る。
デコレーションやらはどうでもいい。大事なのは、
「ありました」
彼が私の頰にキスをしている写真。
やはり夢ではなかった。
これは私の宝物にしよう。
「後悠人様に奥様のLI○Eのアカウントを教えておきました。多分もう連絡来てるんじゃないですか?」
「グッジョブですリボン。今月の給料は楽しみにしといて下さい」
「やったね!」
私は携帯の通知を見る。
【木下悠人さんから友達登録の申請があります。登録しますか】
当然はいを選択。
【お身体は大丈夫ですか? 今日は楽しかったです。本当にありがとうございました。よければ返信下さい】
……優しい。
【突然倒れてしまってごめんなさい。私も楽しかったです。また今度遊びに行きませんか?今度はマリアや真夏さんや優奈さんも一緒に】
送信した瞬間に既読がついた。もしかして気になってずっと張り込んでいたのでしょうか。
【いいですね! みんなで行きましょう】
あっそういえば。
【後イヤホン借りたままです。どうしたらいいでしょうか?】
実はプリクラを撮るときにポケットに入れたままで返すのを忘れていた。
【スペアはあるので大丈夫です。エリナさんは毎日忙しいと思うので返さなくても平気です】
えっ貰えるんですか? 貰えるのなら欲しいですね。
【じゃあ貰ってもいいですか? 凄く便利そうなので】
【どうぞどうぞ。コードが無いので結構邪魔にならないですからね (´∀`*)】
【ありがとうございます!】
そして、
「あら?」
玄関に靴があるのを見る。まだ女子会は続いている様です。ならばここは、
「自慢したいですね」
しかしその行為は愚行だったとのちに思う。




