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閑話 女子会

 


 現在ここは橘家。そこには木村里奈、鮫島明日香、橘マリア、木下優菜、木下真夏の5人が集まっている。


 この5人は木下悠人の知らない間に知り合いとなり友人になっていた。それは好きな人である木下悠人をみんなで共有しようという事だからだ。


 話す内容は木下悠人について。木下真夏、木下優菜曰く、


「「悠君にーちゃは自分の事をあまり話したがらない」」


 とのこと。なのでいつもの生活の観察などによって情報を交換している。


 実際は聞かれてないから彼が話さないだけなのだが。


「ねぇ、ところでマリアちゃんエリナさんは?」

「お母様は急遽お仕事が入ってしまったので、そちらを優先しました」

「そうなんだ〜、残念」

「ええ、本当に」


 橘エリナもこのグループの中の1人なのだが、多忙の為に参加できることが少ない。今回は参加できる予定だったが急遽予定が入り不参加となっている。その度にマリアが話し合いの内容を報告している。


「ではまた悠人様について語り合いましょう」

「では私からにーちゃについて語ります」

「ちょっと待って優菜ちゃん」


 我先に話そうとする優奈を制する明日香。


「何ですか?」


 もう話したくてウズウズしている優菜に明日香は、




「毎回思ってたんだけど……羨ましすぎるの!」




 本音をぶちまける。


「え〜〜」


 急に理不尽なことを言われ、呆気にとられる優菜。


「だって木下君に毎日朝起こしてもらって、朝ごはん食べて、弁当作ってもらって、抱きしめられてる。さらにお風呂にも一緒に入ってるってずるいよ!」

「あまえるのは妹の特権ですから」

「妬ましい!」

「明日香ちゃん!?キャラ崩れてる!」

「里奈ちゃん!私は元々こういうキャラなの!私だってみんなみたいに悠人君って呼びたいのに……」

「明日香ちゃん落ち着いてください……」

「まぁまぁ、明日香ちゃん少し落ち着いて」

「シャラップ! 真夏さんも同罪です!」

「へへへ……」

「ママ、照れる所じゃないよ」

「そうね」

「ところでにーちゃの洗い方凄くきもちいいんですよ!」

「「「優菜ちゃん?今すぐに表に出ましょう」」」

「冗談ですよ!?」

「どうどう、みんな落ち着いて」

「「「うぅ〜! 」」」


 少し荒れている雰囲気だがこの光景は日常茶飯事である。




 その頃木下悠人は、


「むむ〜、……今日の飯何にしよう」


 スーパーのチラシを見ながら今日の献立を考えていた。


「おっ?サーモンとイカが安い。今日は刺身だな。そうだ、あさりの味噌汁もいいな」


 そしていつものように女装して近所のスーパーに向かった。





「そういえば……気になってたんですけど。悠人様は貰ったラブレターどうしてるんですか?」


 マリアは思い出す。朝登校すると毎日のようにラブレターを開いて読んでいる彼の姿があった。


 ちなみに女子達の間では彼がラブレターを読んでいる時は絶対に話しかけてはいけないという暗黙のルールが出来ている。


「棚作って五十音順に並べてるわ」

「本当に木下君ってマメなのね」

「夏休み前に500通突破なんて言いながら返事書いてたし」

「うへぇ、1学期でそんなにラブレター貰ってるんだ」

「いや、ラブレターじゃないのよ」

「どういうことですか?」

「今貰っている大体8割が……文通しているものなの」

「「「「えっ?」」」」

「悠君が言うには、『話したいけど恥ずかしいから文通してもらえない?』とラブレターに書かれてたらしいの」

「えっとじゃあ今貰っている全員の文通相手になってあげたってことですか?」

「そうなの」

「マリアちゃん、悠人君が誰とも付き合う気がないってのは5月中には学校全体に広まってたから、多分それ以降のラブレターは全部文通だと思う」

「にーちゃは大変なことしてるんだね」

「何回か夜に返事を書いてるの見たことあるけど、もう締め切りギリギリの作家を見ている感じで仕方なくって」



「「「「……」」」」



 誰も何も言えず、そして思った。



(((((優しすぎる所為で体壊したらどうしよう)))))



「止めなかったんですか?」


 明日香が聞くが、


「止めたけど、『人の好意を無下に扱えないよ。振られたけど文通したいって書かれてあってさ。なら、…それくらいの我儘は聞いてあげたいんだよ。それに元々俺の我儘で振ったんだからおあいこだよ』だって」

「良い人過ぎるよ悠人君」

「ええ……本当ですね」



「その表情がカッコよくて止められなかった…」

 


「「「「おい」」」」

「……はっ!!その顔は何十年生きた青年のようだったのよ!!」

「「「「ええ〜〜」」」」


 何だそれはと思う少女達。


 しかし、それを言われて想像する。


 今はあどけなさとかっこよさを持つ少年。だが現在も体は鍛えられて引き締まっている。顔もニキビ1つなく、万人が見惚れるであろう美形。


 それが青年となった姿を想像すると、



 ………。



 自然と顔が熱くなってしまう。


「正妻は私ですからね!」


 そして唐突に優菜は言う。


「なっ!? 優菜ちゃんその話はまだしないって言ってたじゃん!」

「本当です! まだ結婚とか……早いじゃないですか〜〜」

「全くマリアちゃんも大概よ」

「明日香ちゃん、それブーメランよ」

「というか……決めるのは悠人君だし」


 結局ここで話して正妻が誰だと話をしていても決めるのは彼である。まして誰を選ぶかも分からないのにこんな話をしていいものか。


 あわよくば全員で幸せになりたいと願う彼女達であった。




 そして時間は過ぎ……。




「まだ終わってませんか?」


 橘エリナが戻ってきた。多少汗もかいており、とても急いだのだろう。


「お母様どうしたんですか?」

「いえ、今日偶然にも悠人さんとお会いする事ができまして」



「「「「「えっ!?」」」」」



「ふふふ……いよいよ私にも好機が来ました!あのパーティ以来ずっと会えなくて寂しい思いをしていましたが少しはマシになりました」

「ところで何処で会ったんですか?」


 真夏が聞くと、


「帰りにスーパーに寄ったんですがその時に。偶然にも悠人さんが買い物しに来ていたんですよ」


 これを小学生組は、


(((普通に主夫してる)))


 と思いつつ聞いている。


「それで少し時間があるならお話でもと誘い彼とゲームセンターに」

「えっ? エリナ様何故ゲームセンターに?」

「真夏さん、そろそろエリナと呼んでもよろしいのですよ?」

「もう少し待っていただけますか?」

「ええ待ちますとも。ゲームセンターに行ったのは悠人さんに行ってみたいと言われましてね。それで私も初めてでしたが向かうことになったのです」

「それで何をしたんですか?」

「プリクラ?というものを撮りました。どうですか可愛く撮れているでしょう?」


 そこには悠人とエリナがツーショットで写っているプリクラが。それにデコレーションで名前が可愛く書かれている。それだけなら羨ましいだけですむからいいのだが……。




 エリナが悠人の頰にキスをしているものがあるのは何故だろうか。




 さらには悠人がエリナの頰にキスをしているものもあるというのはどういうことだろうか。




 ……。




「悠人さんって意外と大胆なんですね」


 と頰を染めながら言うエリナ。





 彼女がこの後どうなるのかはお察し下さい。





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