閑話 彼の隣に座る彼女は
「ダメよ、木下君」
私は今、彼に壁に追いやられている。いわゆる壁ドンだ。
「鮫島さん……いや明日香。君が好きだ。付き合って欲しい」
「そんな…じゃあ木村さんと橘さんの2人はどうするの?」
「2人とは付き合っていない。ただ仲が良い友達さ」
「……でも」
「俺は君だけが欲しい。俺だけの恋人になって欲しい」
そうして彼は私に口づけを……
ピピピピッ!ピピピピッ!
「……」
目覚まし時計を止める。せっかくいい夢が見れていたと思っていたのになんと運の悪いことか。
(今度はいつもの10分後にセットしておこう)
そうして鮫島明日香は目覚める。
私、鮫島明日香は真面目でキリッとしていて頭も良く運動が出来る凄い人とみんなから言われる。
そして男性に興味を持たない人とも言われた。
でも私はそんな人間じゃない。
私だって今恋してるし!
あっ…あれはちょっと恥ずかしくて素直になれないだけで興味がないってことじゃないの!
みんながおかしいの!! 下の名前で呼んでさ。あんなカッコいい悠人君と仲良く話すなんて!! 私だってしたいけど恥ずかしくてしょうがないんだから!!
私だって最初は、
「よろしくね!! 悠人君!」(*≧∀≦*)
て自己紹介したかったよ!! でもいざ目の前で話すと、
「よろしく…木下君」(`・-・´)<キリッ
誰よ! ……私だけど!!
でも悠人君は私の仏頂面の顔見ても「よろしく」と言ってくれた。
やっぱり彼は優しい。
日が経ち私は彼の隣の席になれた。神様ありがとう今度お賽銭しに行くね!
彼が隣になったので挨拶してくれたのだが、
「よろしく木下君」(`・-・´)<キリッ
とまた仏頂面で返事をしてしまった。 しかしもう仕方のないこと。今さら笑顔でよろしくなんて言ったら逆に彼に引かれてしまうかもしれない。それにクラスでも私のイメージがこれだし。
それにせっかく一緒に帰ろうと言ってくれたのに恥ずかしくて断っちゃったし……。
挙げ句の果てに彼が登校して「おはよう」と言ってくれるが、
「おはよう」(`・-・´)<キリッ
……もう無理癖になってる。
彼は気さくでよく話題を出し話しかけてくれるが、私から話しかけたことがない。そしてふと思った。
(悠人君の好きなタイプの女性は何だろう)
と。そう思った瞬間、
「what?」
と彼が聞いていた。もしかして声が出ていたのかもしれない。ええいままよと思い。
「好きな女性のタイプ何?」(`・-・´)<キリッ
ストレートに聞いた。今回はこの仏頂面に感謝した。一応この顔邪念が全く見えないほど無表情なので、「そういえば男性ってどんな人が好みなの?」という話題の1つとして出す事に成功。
「大和撫子…かなぁ〜」
と彼は答えた。
嘘っ…もう好きな人いたの?大和撫子さんっていう人が?私はすぐに聞き返した。その人が好きなのかと。
しかしそれは違い。
「いや、大和撫子ってのはイメージで、性格はおしとやか、凛とした部分もあり控えめな態度。知性的で清楚、誰にでも優しく不快感を与えない。正しく相手に尽くせる女性…ってのが大和撫子だな」
うん……私無理かもしれない。いや、彼は今悩みながら言っていた。急に質問されたから答えないわけにもいかず、そういう人が真っ先に出ただけ、多分そうよ!そうじゃないと自信なくなっちゃう......。
しかし給食の時間。木村さんが、
「悠人君の好きな女性のタイプは大和撫子なの?」
聞かないで〜〜!!
「まぁそうだよ」
すぐに答えないで悠人君!!
「それ以外の人に魅力は感じないという事ですか?」
深く聞かないで橘さん!! 私の心が折れちゃう!!
「いや好きなタイプがそうであってそれ以外は魅力感じないってわけじゃないから」
……よっしゃ!
「じゃあさ、こういう人嫌いってある?」
「「「優しくなくて無愛想で頭悪くて偉そうで穀潰しな人」」」
うん私だけじゃなくてよかった!
でもそっか〜やったぁ〜♪ じゃあ私にもまだチャンスはあるんだね〜〜♪
そう思っていると彼が、
「おかわりするか? しないなら片付けるから食器重ねてくれ」
私も含めみんなもおかわりをしないというと、すぐに彼が使っていた食器の上に重ねる。
「あっ…ありがとう」
「ついでだから気にすんな」
そう言って彼は全員分の食器を片付けに行く。
「ああいう気配りができるからみんな優しい貴方に惚れてしまったのね」
と呟くと木村さんが、
「あれを無意識でやってるんだからねぇ」
「悠人様は優しいお方ですからね、そこが良いところなんですけど…」
「やっぱり誰でもしてしまうの嫌……というわけね」
「そうなんです」「そうなの〜」
そりゃあ、あの優しさが自分だけに向けられたら嬉しいけど…それ以上に恥ずかしい///
「今度ゆっくりお話ししません?悠人様戻って来ますし」
「そうね」「うん」
「というか……鮫島さんも悠人様に好意を抱いていたのですね」
「あんな優しくてカッコいい人に惚れないのはレズくらいじゃない?」
「「……確かに」」
そして彼が席に戻って来る。
「片付けて来たぞ〜。おっなに話してんだ?」
「ガールズトークよ、木下君」
「なるほど、入ってはいけないな」
「察しが良くて嬉しいわ」
「oui」
「悠人君それ気に入ってるの?」
「oui。マイブームと言うやつだ」
そうして時間が過ぎていく。
「ない…ない…」
帰りのHR後私はお気に入りのキャラクターのストラップを探していた。多分今日無くしたので今日通った覚えのある場所を探していた。
すると、
「何か探し物か?」
彼に話しかけられた。そういえば今日は彼が日直だった。多分学級日誌を先生に提出しに行った帰りだろう。私はストラップを無くしたのでそれを探していると言った。
「探すの手伝うよ」
それを聞くとすぐに手伝うと言ってくれた。私はすぐにお礼を言って彼と探し始める。
私はこのまま廊下を探し、彼は教室を探すと言ってくれた。
そして数分後、
「もしかしてこれか?」
彼が見つけて来てくれた。
「そうそれ…ありがとう」
「おう…じゃあな」
そう言ってすぐに教室に戻ろうとする彼を見て、
(今なら誰もいないから一緒に帰れるチャンスかも!! やるのよ明日香!)
と思い彼に声をかけたが、自分の足を引っ掛けてしまい。彼をクッションにして倒れてしまった。
「その……ごめんなさい」
「平気だ…怪我はないか?」
彼は私の事を心配してくれた。そのことに嬉しさもあったが彼に迷惑をかけてしまった事がとても嫌だった。
「…うん」
(私は彼のむ、むむ…む胸に顔を埋めているのね!! やっ、やや、ややばいよ…!! リビドーが!! このままじゃ彼を襲っちゃう!)
「そろそろどいてくれないか?」
「あっ…ごめんなさい」
彼に声をかけられてハッとなる私。でも今の私は結構やばい状態なので、
「じゃあまたね」
すぐに教室に荷物を取りに行く。
(私のバカ!せっかくのチャンスを無駄にするなんて!! でも彼の胸板厚くて包み込まれそうだったなぁ////)
そして、にヘらと笑いながら自宅に帰る私だった。




