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11 ヒロインショー

 

 休日のある日、


「ヒロインショーを見に行きたい?」


「うん!」


 朝ご飯を食べ終わり俺が皿洗いしている時に優菜に相談された。最近何というかお父さんになった気分がしてならない。


「何のだ?」


「プリンキュア!」


 ああ〜〜プリ◯ュアと同じやつか。


「何処でやるんだ?」


「駅5つ過ぎた所にあるデパートの屋上!」


 それなりに遠いな。これは俺が判断していい問題じゃないから真夏と相談するか。


「遠いから真夏に相談しないとな」


「分かった!」


「おう、偉いぞ」


「んっ」


 頭を差し出してくる優菜。これは頭を撫でろというサイン。優菜のとても可愛い仕草。こういう仕草は子供のうちにしかしないからな。


 優菜もいつかグレるのだろうか。「おいクソ兄貴ジュース買って来い」なんて言われたら何日か寝込むだろうな。



 俺は頭を撫でようとするが泡がついてるので水で洗い流しタオルで拭く。そして俺は優菜を撫でる。


「♪」


 優菜はとても嬉しそうに鼻歌を歌っている。こういう反応してくれるのが嬉しいからついあまやかしちゃうんだよな。


「にーちゃもプリンキュア見よ」


「おう、いいぞ」


 俺も面白いから見てるんだけどね。戦闘時の効果音がドシャアッ! グシャアッ! って音が結構笑える。女の子向けのアニメのくせして殴る音が結構リアル過ぎる。


『プリ〜〜♪ プリ〜〜♪ プリンキュア!!』


「プリ〜〜♪ プリ〜〜♪ プリンキュア!」


 俺の隣でダンスを踊りながら歌う優菜。マイク代わりにリモコン持って絶賛アイドル気分。可愛い。


 懐かしいな…俺も昔は仮面ライダーの変身シーンの時一緒にしてたっけ。


「にーちゃも踊ろ!」


「え?」


「教えてあげるから!」


「いいぞ」


 俺も初心に戻って楽しみましょうか。




 ーー1時間後ーー




『プリ〜〜♪ プリ〜〜♪ プリンキュア!!』


「「プリ〜〜♪ プリ〜〜♪ プリンキュア!!」」



 完コピ出来ました。



『「「貴方のハート狙い撃つ♪ バッキュンバッキュンバッキュンっと!!」」』



 俺今凄い輝いてる…気がする。汗を掻くって素晴らしいな!



「にーちゃ! これでヒロインショー行っても大丈夫だね!!」


「おう、任せろ」


 たまにはこういう事するのもいいな。







「ヒロインショー?」


 現在夜。真夏が仕事から帰って来て晩御飯を食べ終わって俺が相談しているところだ。優菜は今日は踊り疲れたらしく早めに寝たよ。


「何とかならないか?場所が場所だから俺だけじゃ連れていけないんだ」


 里奈とのデートの時は歩いて行ける距離だったので問題はなかったが、今回のは流石に遠出な気がする。それにこの前のストーカーの件もある。あの日以来外に出る事は学校とスーパー、デパートに行く以外無くなった。


「その日休みだから何とかなるけど、やっぱりストーカーの対処考えないと」


「そうだな」


「男子警護官雇わない?」


「真夏がそうして欲しいなら別にいいけど?」


「んーでも知らない人に任せるってのも嫌」

 

 俺も思う。それが仕事の人でも初対面の人をそう簡単に信用して警護して貰うってのも何かと心配だな。


「また今度考えてみないか?」


「そうね」


「とりあえずその日ヒロインショーね」


「分かったわ。ところで悠君」


「何?」


「…あまり無理しなくていいのよ?」


「え?」


「学校に行くようになってから家事をしてくれるのは嬉しい。でもそのせいで悠君に無理させちゃうのは嫌なの」


「……」


「もっと我儘言ってあまえてもいいのよ?」


「ん」


 実際俺の年齢はもう合計で20を過ぎている。昔はどうやってあまえていたかすら覚えてないし、どうあまえればいいか分からない。


 親に楽させればそれが親孝行と思っていた。しかし逆に我儘言ってあまえて面倒をかけて欲しいと言われるなんて。



 もしかして俺は焦り過ぎたのではないか。



 いきなり人生が変わってしまったから、早め早めにと親の真夏に迷惑をかけたくなく、楽させるため家事を覚え始め、あまえることをしなかった。




 今の俺は小学1年生の子供であるのに…




「……真夏」


「何、悠君?」


「耳かき…してくれない?」


「……いいよ、膝枕してあげる♪」


 そうして俺は真夏に膝枕され、耳かきをされる。


 真夏の顔を見ると、嬉しそうな顔で俺に、


「どうしたの?」


「いや…気持ち良いだけ」



 そうだった。誰かに大事にされるってこんなにも心が満たされるんだったな。



「あとさ…一緒に寝てくれない?」


「ふふ…いいよ♪」






 これからは少しずつあまえようかな。









 ○ヒロインショー当日のデパートにて○




「私はプリンキュアを見に来た〜!!」


「来た〜!」


 兄妹揃って両手を上げてポーズを取る。周りから見られているがどうでもいい。気分を大事にせねばな。


「ふふ…2人とも可愛い!」


 その様子を写真で撮っている真夏。何かをする時写真を撮るのはもうお決まりになっている。


「にーちゃ、ママ!! 早く早く!! 前で見たい!」


 俺と真夏の手を引っ張りながら急かすように歩き出す。もうねーちゃとは呼ばなくなった優菜は諦めるしかありません


「優奈、分かったから落ち着け」


「そうよ、急ぎすぎると転ぶよ?」


「うん!」


 こういう小さいイベントには参加したことがなかったからどういうものか楽しみである。


(コミケばっかり行ってたからなぁ〜)


 実に今では懐かしい思い出だ。ていうか始発で行っても入場するのに何時間もかかるってやっぱりコミケはヤベェだろ。


 屋上に行くと、大勢の子連れの女性達がって当たり前か。子供向けアニメなんだからな。


 席は最前列から4番目くらいの列に座れた。近過ぎず、ステージ全体を見れるから中々良い場所に座れたと思う。


 まずヒロインショーってのはやっぱり悪役が登場して観客席の子供をステージに攫って、その後ヒロインを呼ぶんだっけか?



 シンプルイズベストである。



 逆にギャグ入れられると子供は混乱する。まあ小学生くらいは下ネタで結構笑うからいいんじゃないかな。



『みんな〜〜!! こーんにーちわー!!』


 "こんにちはー!!"


「こんちわー!!」


 始まった。優菜は元気に挨拶している。俺?こういうのって黙っちゃうんだよな。なんか知らないけど。


『今日はみんなのためにプリンキュアが会いに来てくれたよ! さぁ早速…「はっはっは!!!」この声は一体誰!?』


 バァーン!と爆発が起きステージから煙を出ている。そしてその煙の中から、


「私はニューヒン! 今日はこの会場を征服しに来た!! 手始めにこの会場の子供を人質にしてやろう!!」


 "きゃー!!"


 悲鳴が聞こえる。まぁ悪役に攫われるのは怖いからな…。というか、このニューヒン原作キャラなのです。実はプリンキュアよりニューヒンの方が俺は好きです。


 ニューヒンはどの子供を人質にするかステージから降りて観客席に来る。


「では……この子を人質にするとしよう」






 うん連れてかれてるよ。






「きゃー♪ にーちゃ助けて〜〜♪♪」






 優菜が。


 てかあの子人質になったのにめっちゃ楽しんでるんだけど。


「ほう…ではそのニーチャちゃんも連れて行くとしよう」


 すげぇにーちゃって呼び名を俺の名前と勘違いしやがった。


「優菜! ニーチャ!」


 そして真夏も空気読んでるし。しかしカメラ起動させながらな。


 優菜と俺が連れて行かれる様子を見て泣きそうになる他の子供達。ごく普通のヒロインショーだ。



『なんてことなの!! あんな可愛い子供を人質にしようなんて! こうなったらプリンキュアを呼ぶしかないわ!! みんな〜〜一緒にプリンキュアを呼ぼう!! せーーーのっ!!!』



 "助けてーープリンキュア〜〜!!!"



 プリンキュア先生、助けて下さい。



「誰かが私達を呼んでいる、それは助けを求める時!!」

「天や地が呼ばずとも貴方が助けを求めているのなら迷わず参上!!」



「「邪悪なる者達よ私達が裁いてあげる!!」」



 バァーーーン!!!



 爆発と共に2人組の赤と白のプリンキュアが登場する。そして子供達は大興奮。優菜はというと、



「プリンキュア…カッコいい!!」


 目をキラキラさせてプリンキュアを見ている。この子人質になってる事忘れてるよね。凄いねぇ。



「ニューヒン! その子達を解放しなさい!!」


「ふふふ…出来るものならな! 野郎どもやっちまいなっ!」


「「「イッー!!」」」



 あっ…ショッ○ーの戦闘員だ。



 そして戦闘員との戦闘が始まる。当然プリンキュア2人が勝つわけで…



「ニューヒン貴方で最後よ!!」


「さぁその子達を解放しなさい!」


「何勘違いしているんだい? 野郎どもは所詮下っ端……私とは月とスッポン。奴らを倒した程度で私の負けが決まったわけじゃないわ。プリンキュアよ格の違いを教えてやる!!!」


 すげぇ…やっぱりニューヒンはカッコいい悪役だな。人質取ったけど結局は自分の実力で倒そうとする悪役…俺好きだぜ。



 ニューヒンはプリンキュアを圧倒し、プリンキュアはピンチに陥る。


『大変! このままじゃプリンキュアが負けてしまうわ!! みんな〜〜プリンキュアを応援して元気を分けてあげて〜〜!!!』



 "がんばれープリンキュア〜〜!!"



 そしてその応援のおかげで、



「みんなのおかげでパワーアップ!! さぁニューヒン!」



「「貴方は今の私達に勝てないわ!!」」



「くっ! 子供達の力を借りなきゃ立てない貴様らに私が負けるはずがないっ!!」


「くらいなさい!! 私達の必殺!」


「「キューティクルハートブレイク!!」」


「キャァァァ〜〜!!」


 必殺によって吹っ飛ぶニューヒン。ありがとうニューヒン。カッコよかったよニューヒン。負けても俺はニューヒンの方が好きだよ。


「ありがとうプリンキュア!!」


「ふふ、もう安心よ」


 助けられて抱きつく優菜。赤のプリンキュアに優しく撫でられている。流石プロこういうのには慣れてんだな。


「ありがとうございます」


「いえ…これが仕事っすから」



 素で返さないで下さいよ白のプリンキュア。



 子供の夢は最後まで夢を壊さないで欲しい。



 その後握手会があった。もちろんプリンキュアとニューヒンが握手していた。でもやっぱり悪役に人は集まりにくい。まぁ俺は気にせずニューヒンに行ったけど。


「これからも頑張って下さい。私ニューヒンが好きなので応援しています」


「ありがとね!」


 嬉しそうに握手してくれた。あらニューヒン可愛い。ギャップ萌えってやつだな。


 その後普通に素で話してたの気づいて男性とバレてしまうかヒヤヒヤした。


 そして俺はいつも女声出すために努力していたりする。子供だもん少しは誤魔化せる。






「今日は楽しかった〜〜♪」


「ああ……ニューヒンカッコよかったな」


「あっ…そういえば悠君はニューヒン好きだったんだっけ」


「うん、近くで見れて嬉しかった」


 ニューヒンは良い悪役、ハッキリと分かるんだぜ。


「さて、今日はもう帰りましょう」


「そうだな」


「にーちゃ! 早く帰ってプリンキュア見よ!」


「はいはい」


 俺と真夏は優菜に手を引っ張られる。こういう日常を大切にしないとな。



 木下家は今日も平和です。



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