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119 写真集

 


「リボン、1つ聞いていいか?」

「はい、何でしょう?」

「骸骨の写真集って欲しいと思うか?」

「好みが分かれますね。普通の骸骨なら悪趣味と思いますが、中身が悠人様であるなら欲しいと思うでしょう」

「歪んでんなぁ」

「歪ませたのは、間違いなく貴方です」


 非番の為、自宅に遊びに来ているリボン。

 悠人の片手には、件の話題である写真集があった。


 握手会を撮影会に変えた事を境に、せめて写真集を出せと問い合わせが殺到。ガン無視決めていたのに、結局は自分も一緒に撮りたいという息子達の強い希望で拉致される形で撮影をする事に。


「てかさぁ、今思えば撮りすぎじゃない?」

「多い事は良い事だと」

「もう雑誌じゃねぇのよ、辞典並みの厚さなのよ」

「私、この368ページのサイバー感溢れる機械仕掛けの衣装が好きです」

「ごめん、対話しよ?」

「でも、いつもの姿が馴染みがあって好きです」

「ねぇ、聞いて?」

「そうですね、六法全書くらいの厚みはありますね」

「うん、そうだね」


 数ヶ月かけて様々な衣装、撮影に携わるスタッフの意見を取り入れて、じっくりと行われた。文句を言わず、基本的な指示には従順な悠人でもそれ程かけたのだ。


 しかも、この機会を幸いと多くのプロカメラマンが殺到して、各々の撮りまくった。そこに、今後撮影依頼をして顔を縦に振ってくれるかどうか怪しい被写体が3名並んでいるのならもう大変。カメラマン一人一人の撮影枚数も馬鹿にならない。


 暫くは、レンズを見たくはない悠人。そうして、出来上がった写真集は身内には先行で配布されて、悠人以外は各々睡眠を取る前に眼福な毎日を送っている。


 それはフェアではないと思い、自分用に彼女達にレンズを向けると、恥ずかしがって手で顔を隠しはじめる。


「ざっけんな、俺も皆の写真を寄越せ」


 後日、自撮り写真が幾つか送られて来た。

 しかし、殆どが顔は手で隠されていた。いや、エッチな自撮り写真風になってるのは何故? 普通に屈託のない笑顔であればそれで良かったのだが、と悠人は疑問に思った。


 まともに送ってくれたのは、夜々くらいであった。それでも恥ずかしかったのか、少し頬を朱に染めていた。それはそれはとても愛らしい写真であった。


 とりあえず、その写真を待ち受けにして、暫く過ごした。その間、同級生達にその写真を見られて夜々との関係を根掘り葉掘り聞いてきたので、普通に話した。


 その後日、夜々を除く全員顔が隠さない写真を続々と送って来た。皆には申し訳ないが夜々の写真を待ち受けにし続けた。


 妹とその友人には、脛を蹴られた。



 閑話休題。



「面倒であると思ってても、ちゃんと撮ってるじゃないですか。全部、綺麗にカッコよく撮れてますよ」

「……結局は、楽しかったしなぁ」

「そうですか、それは良かったです。


 撮影時の事を思い出し、笑みを浮かべる悠人を見て、軽く頭を撫でるリボン。


 無理矢理参加させられたからといって、本気で帰ろうと思えば誰も止めれないというのに、何だかんだで楽しんでしまう悠人が少し単純過ぎた。


 というか、散々痛い目に遭いかけているというのにも関わらず、昔と態度があまり変わらないのが少し心配にもなったリボン。


 後日、写真集は意図的に予告もなく唐突に販売開始。


 それは、奴が「えっ、もう出したよ?」という意思表示に基づき、箝口令を敷き販売日まで世間には一切情報を与えずに準備を終えていた。


 全ての書店での店頭販売、ネットショッピングのメイン画面での前触れもなく告知にされた物だからもう大変。


 そして、金額も10万円というふざけた金額をしている。映りの悪い男性アイドルの写真でも数10ページで数万の世界でこの額なのだ。それが1000ページ以上である。金額100万は軽く超えてもおかしくないだ。


 あまりにも、破格の金額であるが、サンプルの写真自体はグラウザーのみ。よって、中身は男ではあるが、二次元のキャラクターを全面推しにした写真集。要するに、コスプレ写真集に近いから、ここまでの金額を下げられたのだ。


 ちょっと早めの夏コミ活動かな?


 だが、タチの悪いジョークか遅過ぎたエイプリルフール数日目と思われてしまうのは必然。また、変な事やりやがったなと疑うのも当然である。


 それが数々のネットショッピングでされていれば嫌でも本当と思いたくなる。


 だが、書店に行けば現物が既に店頭販売しており、SNSでも「なんか売ってる!?」と写真付きで報告があがれば、すぐに真実だという事に気づく。しかし、金額が金額なのでクレカ片手に書店に走る事は出来なかったし、小中高生のお小遣いの前借りでも不可能に近かった。よって、当日にこれを即時に購入出来た者は、少なかったという。


 因みに、販売後次の日、奴は教室にてその写真集を広げている姿を目撃した。


 奴は、ホームルームが始まるギリギリまで図書館にて過ごした。






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