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111 ちょっとした顔合わせ




「はづき、おはよう」

「あっ、おはよう、明日香」


早朝、教室にて挨拶を交わした2人。

今までは、教室に入ったとしても誰とも交わすことのなかったそれ。はづきは、ぱっと明るい表情で返事をした。


「一応、紹介するわ。そこの馬鹿は、里奈。ストーカーの柳田。後、お嬢様のマリアと花香よ」

「ちょっと、私の扱い酷くない?」

「私の収集能力にあやかって情報得ているあなたがそれ言う?」

「まぁまぁ、良いじゃありませんか」

「よろしくお願いしますね、蒼星さん」


雑な紹介をされたことに文句を言うゲーマーとストーカー。それを宥める金髪ドリルと自己紹介をする背中フェチ。


「ええっと、蒼星はづきです。よろしく」


いきなりカースト上位勢の紹介されて、恐れ多くも自己紹介を返すはづき。


「お兄様方は素敵な方々と聞いておりますが、あのお方もとても素敵なんです。語り合いましょう。まぁ、あのお方の背中は1番優れているのは間違いないですが」

「えっ、そういう感じ?」

「私もね、不完全燃焼だったの。急に、話折られちゃったしね」

「というか、結局誰なの明日香の好きな人?」

「それは駄目です。彼を知っている者が名前を出す事は禁じられています」

「いや、マリアさん。それ厳しすぎない!?」


好きな人の事を名前を言ってはいけないあの人扱いする5人に早くもツッコミを入れるはづき。だが、はづきは昨日の聞き覚えのある声と、先程のマリアと花香の会話からどういう人物かは察している。


しかし、中の人の顔、名前は昨日の段階でも明日香に教えてもらえていない。


「まぁ、貴女ならこれくらい大丈夫でしょう」


そう言って、柳田が差し出したのは、1枚の写真。場所は、カフェテリア。髪の毛を伸ばし眼鏡をかけた男にも見えるようで女にも見えるような人物。

その隣には、柳田もちゃんとおり2人揃ってピースをしていてなんとも羨ましい光景ではあった。


「……この人?」


だが、はづきが疑いをかけながら言葉を漏らした。

大貴族であるマリアと花香の思い人であり、あの狂人の中身であるのだから、天は更に一つ二つ程優れたもの与えているだろうと確信していた。


しかし、今の写真から率直に出てしまった感想は、「地味」の一言。流石に、それを口に出すわけにはいかないとはづきは大変言葉を選びながら反応しようとするが、


「地味と思うのは間違っていない。でも、好きな人の魅力は私達だけが知っていれば良いって思ってるから気にしないで」

「柳田さんも遠慮しないね」

「だって、そういう関係だもの」


明日香もそうだったが、告白されてもいないし、してもいない関係であるはず。明日香同様にこんなにも自信満々に言える彼女の発言を聞いて、奴と彼女達の繋がりが深い事を理解した。


「これが私のお兄ちゃん達、カッコいいでしょ?」


だがしかし、はづきも絆であれば負けていない。

血の繋がりを持ちながら、更に将来を約束した家族である。ここで怖気付くのは、愛されている自分の沽券にかかわる。


ここからは、私のターンだ。


はづきも、彼女達に自慢話をした。








「この本、続きないんですか?」

「あるにはあるんですが……今は女性棟にあるようで」

「……女性棟での図書室って入って借りても大丈夫でしたっけ?」

「一応、禁止はされてません。けれど、入ろうとする物好きはいません」

「分かりました、ありがとうございます」


悠人は、借りていた本の続編を求めて、女性棟の図書室へと向かう。


ネットで購入して配送すれば、そんな手間をかける必要はないのだが、せっかく学校に通っているのだ。施設を利用して、本を借りて読むというマイフェイバリットスタイルを貫いている。


「すみません、この本の続編あります?」

「えっ!? あっ、少々お待ち下さい!」

「お久しぶりですね、元気してました?」

「元気よ元気! 私も悠人君に久しぶりに会えて嬉しい。この本の続編、男子棟になかったんだね」

「そうなんですよ。折角なので、女性棟の図書室がどんな風になってるのか見に来ました」

「それで、どんな感じ?」

「男子棟よりめっちゃ広い」

「あー、タブレット配られるからそっちで見れるもんね。あっ、貸出されてないからG-1と書いてある棚に置いてあるはず。一緒に探そうか?」

「大丈夫です。自分で探してみます。ありがとうございます」

「うん、見つかんなかったら言ってね〜」


図書委員の知り合いにパソコン端末を使用して、調べてもらい案内された場所まで向かう。暫く探して見つけ出し、そのまま借りて図書室を出た。


「これで明日の読書の時間も楽しめー?」


そんな独り言を呟きながら、1人歩いていると、里奈達がこちらに向かって歩いて来ているのに気がついた。しかし、いつもの面々に加えて悠人が知らない女性が1人。


「あっ、クソボケ」

「おいこら、眼鏡」


初対面の女性がいるというのに、思い当たる節がある悪口を言われしまい、反射的に悪口で返してしまった。

言ってしまってから、まずったという表情で初対面の女性を見る。


「ええっと、こんにちわ。蒼星はづきです」

「木下……悠人です」


はづきも困った表現をしながら自己紹介を行なった。

その様子を見て、完全に引かれたなと思いつつ、自己紹介を行う悠人。


「では、私はもう戻るので、機会があればまたお会いしましょう」


とはいえ、今は女性の交友関係はあまり広げたくない悠人としては、さっさと去りたいのである。女性棟にという事もあり、周りの目に触れる可能性がある。社交辞令を並べて足早に彼女達の元から離れようとする。


「またな、皆」


だというのに、笑みを浮かべながら別れの挨拶をするもんだから、里奈達は溜め息を吐きそうになった。いや、とても嬉しいんだけれども今やっちゃダメでしょ、と。


明日香達に対する好意がダダ漏れな悠人の背中を見て、



「あれは、確かにクソボケだね」



明日香達は、苦笑いをしていた。



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