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閑話 お嬢様、彼に夢中

 


「マリア、殿方を信用してはいけませんよ?」


 私はそうお母様に学んでいました。私の家系は代々続く世界1の貴族。その長女としてしっかりしなければなりません。


 お見合いをして、会話が進んでもその裏には私の家の財産目当てだと思い断りました。後にそれが本当だったのにも驚きでした。


 私に寄ってくる殿方は全員私を見ていない、橘家の娘としか見ていないのです。誰も橘マリアと見てくれない。殿方は信用出来ないとずっと思っていました。


 でも今は違います。だって、



「マリア、おはよう」



 私を見てくれる彼が今目の前にいるのですから。




 彼との出会いは入学式でした。殿方なのに小学校に入学するなんて珍しいどころではありません。とても常識外れな彼に私は興味を持ち、そして運良く同じクラスになりました。


 そして、個人的に自己紹介すると私は握手を求めてみました。お見合いでも握手を求めてもすることはなくはぐらかされました。しかし、彼はすぐに握手をしてくれました。して当然という雰囲気で。私が変に反応してしまった所為で逆に「してはいけなかった?」という反応もしていました。


 やはり彼は常識外れです。


 女性に優しく、召使いのように扱わず、来るもの拒まず去る者追わずというスタイル。どんな方でも来いという、女性に男性の免疫をつけさせるためにいるような方です。


 授業も真面目に受け、身体力テストでは女性にも負けず劣らない程に体を鍛えている事が分かりました。


 その時に勝負し彼に勝利しましたが、もし木村さんも参加していなければ引き分けでした。木村さんには感謝しなければなりません。


 そのおかげもあって彼にお願いを聞いてもらいパーティに行くこともできたのです! 本当に嬉しかったです!


 私のお母様には彼の事を前から話していましたので反対はされず、逆に会ってみたいと言われました。


 いざパーティに参加すると、彼のドレスはまさかのウェディングドレス。私もお母様もいえ…誰もが驚きを隠せない状況でした。歴史上初めてウェディングドレスを着る男性を見る事になるとは思いませんでした。


 とても美しく、そして華やか、優しい彼にとても合う最高のドレスでした。

 そして、彼のお母様である真夏さんに偶然会う事が出来ました。自己紹介ではちょっと意識して挨拶したせいで警戒されてしまいました。今度、彼のことについてちゃんと話し合いたいです。


 その後私のお母様が来て自己紹介。彼と楽しくお話出来て嬉しそうでした。そしてお母様はすっかり彼を気に入ってしまいました。


 殿方を信用してはいけないという言葉は一体何処へ行ってしまったのでしょう。

 そして、お母様は突然結婚してはどうかと彼に聞きました。しかし彼は、


「まだそんな歳でもないじゃないですか。橘さんに考える時間がもっとあった方がいいですよ」


 断る理由も私の事を考えてくれていたんです。それが嬉しかった。本当は別に結婚しても良かったんですけど。そうして、密かに喜んでいるとお母様と彼のお母様が彼に抱きついていました。


 嘘……と思いながらも私も対抗して何処か抱きつこうとうろたえていると、リボンから正面が空いていると言われたので私は直ぐに抱きつきました。


 彼は辛そうな顔をしていたので、もう少しだけ…もう少しだけと思いながら抱き付いていたら彼の顔はゲッソリとしてしまいました。悪い事をしてしまったと思いながらも彼に抱きつけた喜びが大きい。悠人様ごめんなさい。


 それに、彼に名前で呼んでもらえるようになって、私は幸せです。


 でも、お母様だけずるいです。私は名字でずっと呼ばれてたのに直ぐに名前で呼ばれるなんて全く不公平ですよ!



 パーティに入場した後彼は直ぐに殿方達に連れ去られ、お母様も別の方々と会話していて、私は知り合いに囲まれてしまいました。「あの殿方は誰なのか?」「どうやって知り合ったのか?」など彼について色々聞かれました。私はここで嘘をつく必要もないので正直に、


「学校の同級生です。私がお願いして今日は来ていただいたのです」


 と答えましたが、


「嘘をつかないで下さい! そんな事より私にも紹介して下さい!!」


 やはり信じてもらえませんでした。というか後者が目的ですよね? と思いながらも、とりあえず宥めます。すると、


「ふん……どうせお金で雇ったんでしょう?」


 と憎まれ口を叩いてくる人が1人。


花香はなかさん……」


 彼女の名前は山崎花香やまさきはなかさん。世界1の貴族である橘家、その次世界2が山崎家である彼女。そのせいで対立することも多々あります。私としては仲良くなりたいのですけど。


「それでいくらかかったのかしら?」

「ちゃんと彼の意思で来て頂きました。これ以上悠人様を侮辱するのは許しませんよ?」

「まぁ、今日はそれで構いませんわ。ではまた今度」


 全くいくら信じられなくてもあんな言い方しなくても。でも確かに逆だったら私もそう思ってしまうので仕方ないことかもしれません。


 実際彼と会って話さないと本当に信じられない話ですから。


 その後もずっとお話している間に自由時間が終わってしまい、ビンゴ大会の時間がやってきました。しかし、お母様と合流出来たのですが、彼はまだ戻ってきていないので、2人で探しました。


 直ぐに見つからなかったので何かあったのかと心配して焦ってしまい、彼を見つけた時は少し声を荒げてしまいました。


 そして、ビンゴ大会。私の目当てはもちろんかわいいクマさんです! あのクリッとした目、もふもふしてそうな見た目、その愛くるしいぬいぐるみを是非私の手に!


 彼が欲しいのを聞くと意外にも掃除機でした。まさか主夫業をしているとはさすが悠人様! 凄いです!


 そんな会話を続けていきビンゴ大会は始まりました。


 でも……私のビンゴカードの番号が全く呼ばれることがありませんでした。そうしている間にもビンゴした方々は次々と景品を持っていきます。


 ついてないです……今回は諦めた方がいいのでしょうか。


 お母様と彼も慰めてくれたおかげで立ち直れそうでしたが、追い討ちとばかりにまた私のカードの番号が呼ばれることはない。


 とりあえず、席をはずしてこの気まずい空気を変えようと思いました。折角、来てもらったのに彼を退屈にさせたくなかった。本当についてないです。


(ダメよマリア! 折角の悠人様と参加したパーティです! 戻りましょう悠人様のところに! そして楽しみましょう悠人様と共に!!)


 そう思い2人の元に戻りました。私が戻ると彼は、


「待ってた、ほら……これマリアにプレゼントだ」


 私が欲しかったクマさんのぬいぐるみを渡してきました。


 ……え?


「折角のパーティだ、気分落としてちゃ楽しめないだろ?」


 彼はずるい人です。本当は私が楽しませなきゃいけないのに気を使わせてしまうなんて私は嫌な女になっちゃうじゃないですか。彼の優しさにあまえてばかりで私は何もしてあげられてないです。


 でも私は嬉しさを抑えきれず彼に抱きついてしまいました。普通ならセクハラで訴えられる。


 でも彼は……微笑みながら頭を撫でてくれました。


 髪型を崩さないように優しく大切に…その行動だけで私の心は満たされました。ずっとこのままでしてもらっていたかったのですが、


「とりあえずマリアのカード、最後までやろう」


 まだゲームは続いていたらしいです。もう終わっていればよかったんですが残念です。


 とりあえず彼から離れてビンゴゲームの続きとしましょう!



 結局何処も空かなかったんですけどね。でもそれが逆におかしく、みんなで笑い合いました。




 パーティが終わって私とお母様は「夕食も食べませんか?」と聞きましたが、


「ごめん、夕飯の準備しなきゃいけないから」


 そうですよね。主夫業をしているのですから、断るに決まっています。それに私は今日彼にあまえてばかりで何もしていません。でも、


「今日は楽しかったよ、ありがとう」


 彼は笑顔でお礼を言ってくれました。私の方こそ本当にお礼を言わなくてはいけませんのに。本当に彼は優しいです。


「悠人さん、今日はとっても楽しかったわ」

「そう言ってくれると嬉しいです」

「今度は2人でお会いしましょう」

「……まぁ機会があれば」

「ええ作りますから、ではまた今度橘悠人さん?」


 え……お母様?何をしていらっしゃいますの?


 リムジンは発進し、私は直ぐに、


「お母様?さっきの話は……」

「ふふふ……彼本当に優しい人ね。まだ小学生だというのに」

「ええ……知っています」

「頑張れば私もお嫁にいけるかしら?」


 お母様は真面目に言っておられる!


「ええ!?」

「彼くらいなら花嫁1人や2人……10人はいてもいいかもね?」

「……そうですね」


 確かに優しい彼を他の方が放っておくはずがありません。そして、里奈さんも……やはり好意を抱いています。それに彼のお母様である真夏さんも……。


「一緒に頑張りましょうねマリア」

「はい!」


 悠人様いつか貴方の花嫁になれるよう努力いたします。



 因みに彼から貰ったクマさんのぬいぐるみに悠ちゃんと名前をつけました。毎日一緒に寝ています♪





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