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9 パーティ

 

「ついに来たな」


 さて今回のメインイベント。つっても俺はただ楽しくパーティーに参加しマリアに恥をかかせないようにするだけなんだけど。


 思ってたんだけどやっぱり俺の格好は注目を生む。それにマリアやエリナさんがいるから尚更だな。


「ところで俺は一体何をすればいいんだ?」


 そう忘れていた。ペアで参加して欲しいと言われたが、具体的に何をすればいいか分からない。ダンスだと経験無いから詰む。ビンゴ大会など経験を必要としないものだと嬉しい。


 しかも未だに会場に入ってすらいない。何やら裏で何かを待っている様子。


「これから入場するので私の隣にいて下さい」


 と言われ俺はマリアとエリナさんの間に立つ。


(入場? あぁそうか、エリナさんが主催しているからか。メインとなる人が入場するのは何処もやっているしな)


『本日はお忙しい中にお越し下さいまして誠にありがとうございます。これより橘家主催パーティーを開催いたします』


 きた……すげぇ緊張する。まさか入場することになるとは思わなかった。まぁ知ってても緊張するんだけども。


『どうぞ皆様前の方にお集まりください』


 アナウンス通りに俺達が入場する階段の横、前に人が集まる。そして部屋全体のライトが消える。そしてこれから入場する階段だけにライトを点け、視線を集めている。


『それでは前方中央階段に御注目下さい。橘エリナ様並びに橘マリア様、そしてパートナーの木下悠人様の御入場です』


 オーケストラによる演奏が始まる。


(マジか、この中で入場かよ……)


 俺の動悸は激しくなる一方だった。


「大丈夫です悠人様。私がいますから」

「ふふっ、悠人さん何かあっても私達がフォローしますから安心して下さい」


 俺が緊張している事に気づいていたようで落ち着けるように声をかけてくれる。ふぅ…さて行きますか。


「ありがとうございます」


 俺は2人に手を引かれエスコートされながら入場した。




 ◆◆◆◆


 未だかつてない程の衝撃を会場にいた人々は受けていた。


 何故なら男がウエディングドレスを着て登場したのだから。


 男性は歴史上初めてウエディングドレスを着た男性に驚愕、女性はその男性の美しさに目を奪われた。そして誰もが今日はサプライズで結婚式を挙げると言われても納得する程。


 実際するのだろうと思っていた。


 前以て見ていた人もウエディングドレスを着ている男性を見るなんて夢でもないこと。一目見ただけでは満足出来ず興奮していた。


 しかしウエディングドレスの男性の立ち振る舞いはおぼつかない。1度転びそうになったが橘エリナ、マリアがそれを防ぐ。その事に「ありがとう」と頭を下げお礼を言っているのは遠くから見ても分かる。誰がどう見ても仲睦まじい様子だった。


 入場した後、橘家現当主である橘エリナが、


「本日は私、橘エリナ主催のパーティーにお越しくださり誠に感謝いたします。今日は楽しんでお過ごし下さい」


 と軽く挨拶する。しかしそんな事よりも隣の男性について詳しく話を聞きたかった。


 全員がそう思っていると、


「そして私の娘のパートナーである木下悠人様の格好についてですが本日結婚をする訳ではありません。今回は試着という形で皆さんにお披露目させていただきました 」


 だとしてもいつか結婚するんでしょ? と思いながらその話を聞いていた。


「では最初は自由時間となります。その後ビンゴ大会を開催いたします」


 全員が橘家とそのパートナーの元に駆け寄った。


 そして女性は橘家の2人と、男性はパートナーである木下悠人と話そうと。



 ◆◆◆◆


「ウエディングドレスを着る奴なんて初めて見た」


 それが最初に言われた一言だった。うん…まぁ気持ちは分かるよ。


「でっ……どんな感じなんだ? ウエディングドレスの着心地ってやつは」


「いやぁ私も初めてパーティに参加して着るドレスがこれなので」


「マジか、レベル高ぇな!」


 なんか凄いやつって思われてね?全然違うからね?え……ここは気持ちわりぃやだおめぇとかなると思ってたんだけど。同性には優しいのかな?


「俺今度着てみようかな……」

「おっ? いいなそれ!」

「今度のパーティーでは全員ウエディングドレスで参加にしてみるか?」


 いや結婚式に着ろよ。てかノリノリだな。


「皆さんもペアで参加ですよね? パートナーの方はいいんですか?」

「いや、別にいい。金渡されて来ただけだし。それにいやらしい目線で見てくるからな。あまり近くにいると食われそうで怖くてな」


 うんうん、と頷く男達。


 気持ちは分かるよ。学校でも一部の先生とか上級生の視線がいやらしい目つきだったし。


「お前は金渡されて来た訳じゃなさそうだから違和感があるのは仕方ない」

「はい、確かにそうです」

「俺もそんな女性を見つけたいよ……」


 うんう……ん?と言った表情の男性達。あっ...そこは賛否両論なんだな。


「いや……いらねぇだろ女なんて」

「いても邪魔なだけだろ」

「でも俺愛されたいし」

「どうせ身体目当てだって」


 ……でもやっぱり否定派が多いな。やはりこの世界の男性の殆どは女性を嫌っている。誰かに愛されたいと思っていてもその相手を見つけるのは難しいだろうな。


 顔を見れば全員がイケメンだしな。普通にホストクラブでも作れそう。


「もしかしたら最初に結婚式挙げるのもお前かもな」

「それは言い過ぎでは?」

「何となく言ってみただけだ」

「さて、俺らも金貰ってるしパートナーの所に戻るぞ。それにこれ以上長くいたら橘家に拗ねられそうだからな」

「戻っても近すぎるから離れろ! って言うんでしょう?」

「まあな。それじゃあな」

「はい、また機会があれば」


 そしてみんな離れていく。だが何人かは残っていた。まだ俺に話す事があるのだろか。俺も早く橘さんのとこに戻りたいんだけどな。


「ちょっとこっち来いよ」

「……分かりました」


 明らかに敵意丸出しな奴等だ。そうだよそういう反応を求めてたんだよ。いきなり好感を持たれたらこっちが変に警戒しちゃうんだよなぁ。


 てか今気づいたけどこれやばくね?





 ついて行くとやっぱり人がいない場所まで来た。そしてやはり、


「お前……橘家の方に気に入られて少し調子乗ってないか?」


 DE・SU・YO・NE!


「いえ、別に人に気に入られるのは気分がいい事じゃないですか?」

「ましてやお前みたいな平民層にいそうな奴が橘家の様な高貴な方といる事自体がおかしい」

「そうですか。それは私や貴方が決める事じゃありません」

「いーや! 俺が決める事だ!」


 面倒な奴だな。てか誰だよ、こんな馬鹿みたいに我儘な人間に育てたの。ナルシスト全開ですなぁ。


「じゃあ貴方が橘さんとペアを組めばよかったじゃないですか?」

「……」

「断られたんですね」

「やかましい!!」


 まさか殴り掛かってくるとは。どんだけ沸点が低いんだよ。だが正当防衛でも問題は起こしたくないし、ましてや坂田さんのウエディングドレスに汚れや傷をつけたくない。


「いいんですか、このドレスは橘さんが用意してくれたものですよ? 傷や汚れ付けてもいいんですか?」

「てめぇ! ……へっどうせお前はそうしなきゃ自分を守れないんだな! 行こうぜ、こんな弱虫なんてすぐに振られるに決まってんだ」


 おっ……勘違いしてくれてラッキー。


「じゃあな弱虫」


 そう言って去って行く。ありがとう知らない人! やっと面倒ごとから解放されたぜ。さて橘家の元に行こう。




「悠人様! 探しましたよ!!」

「ふふふ、どこに行っていたのですか?」


 あら、結構お怒りで。


「すみません。トイレに行こうとして道に迷いました」


 まぁ無難な言い訳かな?ちょっかいかけられたのは言わない方がいい。


「もう自由時間が終わってビンゴ大会です。はい悠人様の分のカードです」

「ビンゴかぁ、運ないんだよな」

「ふふ、当たらなかったら悠人さんに個人的に好きな物をあげましょう」

「エリナさん、ゲーム性を大事にして下さい」

「ふふ、悠人さんはからかい甲斐がありますね」


 エリナさんのジョークじゃなくてマジでやりそうだから怖い。


『これからビンゴ大会を始めます。今回の一番の景品は島です』


 なぬ! ……貰っても嬉しくない! しかも名前がないあたり手に入れた人が名前を付けるというわけか。流石貴族やることのスケールがでかいぜ! 俺ら庶民は最新のゲーム機で喜ぶんでな。


「悠人様は欲しいのはありますか?」

「んー、おっ?最新の掃除機か、あれが欲しいな」


 ダイ〇ンを超える機能とは欲しい、実際に使って確認せねばな。


「「えっ?」」

「え?」

「悠人さんもしかしてもう主夫業を?」

「まぁ、家事くらいは普通にしてます」

「立派ですね!」

「意外です」


 へへ、褒めても何もねぇぞ。


「マリアは何が欲しいんだ?」

「クマさんのぬいぐるみです!」


 可愛い……見てるこっちがホッコリするねぇ…。


 景品を確認してみると2頭身くらいの大きさ可愛いクマさんが見えた。多分あれが欲しいのだろう。


「手に入るといいな」

「はい!」

「私にも聞いて下さいな?」

「えっ?普通にないんじゃ?」

「そうです」


 無いの! 聞かせといて無いんか!!


『それでは最初の番号は……93!!』


 おっ、あったあった!




 《そしてゲームが進む。》




 現在16番目の番号が言われている。ここまでとなるとビンゴも何人かは出てきた。当然1番目の人は島を選んだよ。


 ちなみに俺のビンゴカードは3リーチであと少しなのだ。しかし俺の隣で負のオーラを纏っている少女が1人。


「むむむ……」


 そうマリアだ。すごい! 真ん中以外空いてない!


「マ……マリア、大丈夫?」


 あまりにも顔をしかめているのでエリナさんが心配している。余程欲しいんだろうな。


 しかし1つくらい穴空いてもいいのに1つも空かないとなると運が悪いってレベルじゃないぞ。


「何故悠人様はもう3リーチなのに私のは1個も空かないんでしょう」

「まだ景品は残ってんだ。まだまだこれからだぜ?」

「そうですね! まだまだこれからです!」


『次の番号は……45番です』



 ピシッ



 マリアが固まった。マリアのビンゴカードを見るとやはり……45の数字がない。


 この子ビンゴカードの番号が空かない呪いとかかけられてんじゃないの?


「私お手洗いに行ってきます」

「ビンゴカード、預かっとくよ」

「……ありがとうございます」


 マリアは席を外した。俺もエリナさんも声をかけれなかった。


「このビンゴカード呪われてんじゃないですか?」

「ええ、まぁ本当にあるのね」


 気まずい空気になった。


『次の番号は……78番です』


 あっ、ビンゴだ。


「行ってきます」

「ええ、おめでとう」



 ……掃除機はまた今度でいい、クマさん貰うか。



 景品を受け取る。もちろんマリアの欲しがっていたクマのぬいぐるみだ。あのままじゃ今日はマリアが笑顔で過ごせなさそうだし。俺としてもそんなのは嫌なのでな。


 クマさんを持ってエリナさんの元に戻る。


「まぁ、悠人さん」

「いやぁ、マリアには笑顔でいてもらいたいので」

「ふふ、ありがとう」


 そしてしばらく2人で話しているとマリアが戻ってきた。


「ただいま戻りました」

「待ってた、ほら、これマリアにプレゼントだ」

「えっ……これはクマさん! でも悠人様どうして?」

「折角のパーティだ、気分落としてちゃ楽しめないだろ?」

「悠人様、ありがとうございます! 絶対大切にします!」


 喜び余って抱きついてきた。


「うわっと!」


 体勢を崩しそうになるがなんとか耐える。喜んでもらえてよかった。そう思うと自然と口が緩んでしまう。おまけに頭を撫でてやる。


「まぁ、悠人さんったら」

「えへへ、悠人様」

「とりあえずマリアのカード、最後までやろう」

「はい!」


 だが結局マリアのカードは真ん中以外空くことなかったがその時はみんなで逆に笑い合った。





「今日は夕食もご一緒にしたかったです」

「ごめんな、ご飯の準備しないといけないから」

「そうですか、残念です」

「今日は楽しかったよ、ありがとう」

「はい!」

「悠人さん、本日は本当にありがとう。私もとっても楽しかったわ」

「そう言ってくれると嬉しいです」

「今度は2人でお会いしましょう」

「……まぁ機会があれば」

「ええ作りますから、ではまた今度橘悠人さん?」


 まさかのマス〇さんポジ……だと?


 それを最後にリムジンは発進する。俺はそれを見送る。そして見えなくなり俺は家に入る。


 とりあえず飯の準備だ。


「ただいま〜!!」

「おかえり優菜、お泊まり会は楽しかったか?」

「楽しかったけどにーちゃが居なくて少し寂しかった」

「そうか、そうだほれ」


 俺はウエディングドレスを着た自分の写真を見せた。


「どうだ? 似合ってると思うんだが」

「すごい似合ってるよ! にーちゃこの写真貰っていい?」

「いいぞ」

「イェイ! にーちゃ大好き!」

「ははは……ほら飯だ、食うから準備手伝ってくれ」

「うん!」


 こうして俺の初めての社交パーティは終わった。


「ところでにーちゃ女の人に抱きつかれたでしょ、少し話しよ?」

「……」


 全く嗅覚の鋭い妹は苦手だよ。





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