1 目覚め
俺は普通の高校生だった。
当たり前のように学校に行き、身に付かない教育を受ける。だが身に付かないとはいえ成績を下げることはしない。
それなりに勉強していい成績を出していく。
少しアキバ系であったが表に出しても話題として話すことはなかった。
誰かを好きになることも嫌いになることもなく、誰にでも普通に接した。そのおかげもあって男女共に友達は多くいた。
だが将来の夢は特になかった。楽しいことや面白いことはたくさんあったし、やってきた。でも将来自分が何になりたいのがなかった。適当に公務員になり安定した生活をすればいい。そして親孝行していければいいだろう。そう思っていた。
それの何が悪かったのか……。気がつけば、
「おぎゃー!! おぎゃー!!」
「お母さん!! 男の子です!! 元気な男の子ですよ!!」
赤ちゃんになっていた。
訳が分からない。
俺は確かに自宅のベッドで寝た。その日はコンビニのバイトで、夜勤の人が遅れたので俺は残業。そして夜勤の人は1時間以上遅れ、帰る時間は12時を過ぎていた。さすがに疲れたので家に帰りそのままベットに入った。
そこまで正確に覚えている。なのに、
「お母さん、息子さんを抱いてあげてください!!男の子を抱ける日が来るなんてとても嬉しいです!!」
ナースの人が興奮しながら俺を抱き上げ、1人の女性に渡される。そして俺は母親らしき人に抱かれ、頰と頰をくっつけスリスリされている。
「ああ〜もう!! 可愛い!! 悠人一緒に幸せになろうね!!」
どうすればいいか分からん。でもこうなっては俺はこの人の息子として生きていくしかないだろうな。
全く人生って何起こるか分かったもんじゃない。
まぁ楽しく過ごせりゃいいかな。
だがよく考えると赤ちゃんとなった俺はおしめを替えたり、母乳を飲まなければならないのだ。
赤ちゃんプレイですね分かりたくない。
でも今は、
「おぎゃあ!」(これからよろしくな。…母さん)
新しい母親に挨拶しよう。綺麗だし。どうせ伝わらないだろうけど気持ちだけ。これからいっぱい迷惑をかけるのだ。これくらいはしとかないとな。
「悠人が笑ったわ!!」
……前の母さんや親父も俺を産んだ時こんなに喜んでいたのだろうか。
そう思うと親孝行出来なかったことが残念だ。
なら今の母親に親孝行をしよう。でも随分と先になるけどな。
「私決めた!! 悠人と結婚する!」
……ぶっ飛ばし過ぎだよ、母さん。
まだ生まれたばっかりだってのにちょっと将来が不安になった。