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幕間2
「それでは、過去とは何だ」
と、男は訊いた。
ふむと頷いて、魔術師は答えた。
「確定したモノだ。誰にも触れないモノだ。お前、”残され人”か?」
「そうだ」と男は答えた。
「皆がオレのことをそう呼ぶ。しかし、”残され人”とは何だ」
「過去はどこにも残らない。過ぎ去った過去は無数に続く今に次々と塗り替えられていく。しかしたまに、塗り替えられることを拒んで別の今に取り残される者がいる。特に武人に多い。お前のようにな。それが”残され人”だ。歴史に残された者。漂着者だ。お前のいた世界は、もう深い歴史の層の下だ」
「そうか」と、感情のない声で男は頷いた。




