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幕間1
男はようやく魔術師を見つけた。魔術師は荒野で、何かの術の準備をしていた。男は魔術師に歩み寄って、不躾に訊ねた。
「未来とは何だ」
と。
ふむと頷いて、魔術師は答えた。
「不確定なモノだ。ワシの考えでは、未来なんぞというものは存在しない。あるのはあくまでも今だけだ。無数の今が続いて、ひとつの時間の流れとなっておる。わずかな過去に今があり、わずかな未来に今がある。それぞれの今は、まったく異なるものだとワシは考えている。
未来が幾つにも分岐していくと考える者もいるようだが、ワシはそうは思わん。ワシが知っているのは、ただ無数に繋がる今だけだ」
「それで、あんたは今、何をしているんだ?」
「次の今に移る準備をしているところだ」と、魔術師は答えた。