フルスイング
暗いトンネルの中を 歩いていた
出口まで後少し、そしてトンネルを抜けた
ピピピピピっ…
目が覚めた
朝が来た!朝飯を食べ仕事着に着替える
「何だったんだろ?あの夢は」
出勤して コーヒータイム
本日の段取りは 発破した場所での作業を中心に考えられた
作業開始のチャイムが鳴った
機体のチェックを済ませ、現場に向かった
ホイールローダーが吹っ飛んだ破片をかき集める
パワーショベルが積み込みをしながら 選別作業
俺は 破砕していく
午前の作業が終わり、 オペレーター達は少し難しい顔をしていた
「あの デカイ塊って 落ちないっぽいな」
「嫌な所で割れて 岩盤の角に引っかかってる」
昼飯を食べながら ミーティングする
やはり 危険な所は確実に作業しようと
話し合いで決まった
午後の作業開始
すると 本社から社長と常務が来た
工場長も 今出勤だ!
「お疲れ、ちょっと現場見に来た」
社長と会うのは 初めてだった
常務は 面倒臭そうだ
「お前らに 任せたら 仕事が増えるわ」
ん?何の事だろうか?
二人は 工場長に連行されて 現場に向かった
オペレーター達も それに続く
「ほれ、やっぱり こんな感じになったわ」
工場長は この状況を解ってたかのように言った
発破の後 割れ方や状態をよく見ている
「本社の指示通りやって、危険箇所が増えたわ」
常務は反論する
「仕方が無い、発破も高いんや! コストが合わん」
「そぅ言うが、お前のやり方やと 採石法違反になるぞ」
「言うな!最終的に検査前までに形になってりゃ 問題は無い」
そのやり取りを聞いて 社長と俺達は不安を感じる
社長は俺達から現場の状態を聞いて
何か思った事があるらしい
「とりあえず 工場長と常務と副長、事務所で対策考えよぅか」
残った俺達は 危険の無いように作業開始するように指示された
夕方 事務所でミーティングする
「残りの原石は あと一日分あるか無いか」
「製品は一日分は ストック出来た」
「次にの 発破はどこにする?」
「まぁまぁ、ちょっと静かに」
常務が 全員を見る
「大体 今の現状は把握した、ちょっと考えがある
ワシに任せとけ」
チッ…
工場長は 機嫌が悪い
翌日 残りの原石を採掘する
俺は 上の段に登り 発破の準備 岩盤処理した
「こんな所より もう1段上から発破した方が よくないかなぁ?」
「普通は そうするんだわ」
常務が何考えてるか 大体の想像は出来た
山の下部分ばかり発破して 大量に岩盤を崩す作戦みたいだ
「これ、採石法じゃダメなやり方だった気がするんだけどねぇ~」
「そうなんだ!!」
「確かじゃ無いよ、何m以上かは ダメだったと思ったよ」
パワーショベルのオペレーターが言うには
安全に作業する為に 高さは何m 1段の幅は何mとか決まりがあった気がするらしい
工場長は 高さを7m 幅は10m確保してくれる
山全体の2/3は 工場長の指示で西側を採掘してある
実に 危険箇所が少ない
残りの1/3が 常務の指示で東側 今問題になってるエリアです
東側の山は 断崖絶壁 高さは20mは 軽く超えてるだろうか
一歩間違えば 大惨事になる可能性が高い
今日の発破は2段目からの予定です
「ここ発破したら 上から来ますよね?」
「来るだろうな、常務は工場長みたいに確実ってより 効率ばかり考えてるから 俺達も危ない目に
何回か遇ってる」
確かに 一回の発破で 沢山の原石を採掘出来たら
そりゃ効率いいのは分かるけど…
だから 今回の崩落は起きたのか?
「この前にやった時は あまり上から落ちなくてな、
だから 今回 雨で崩落したんじゃないか?」
やっぱりそうか 工場長 ゴメン
俺 勘違いしてた
てっきり 東側は工場長の指示で崩落したと思ってた
俺達は 作業が終わり、機体の整備に倉庫に戻って来た
工場長は ミニユンボで 狭い所とか 掃除中~
常務が 事務所でセクハラ三昧
夕方 発破の準備が出来た
常務が 工場長の所に声を掛けに行った
「おぃ、工場長~」
「……………………」 ブォ~ん ブォ~ん
「おぃ、工場長ょ~」
「あぁ~、」
工場長 呼ばれてミニユンボで旋回
常務のボテボテした身体を フルスイング~
吹っ飛ぶ常務… 着地地点は泥の中~
常務起き上がる
「おぅ、すまん」
工場長 一応謝る 見てた連中は必死で笑いをこらえる
常務… 泥だらけで こっち見つめないで
常務が何か工場長に言った
「おぅ、お前ら 発破すんぞ」
工場長と 泥だらけの常務と一緒に 退避 高台に登った
ウー…
発破!
ボカーん ボカーん ドスーん
土煙半端ない!
目を凝らす
工場長が 睨みます
常務は 泥だらけで タバコ休憩
チッ
工場長が また機嫌悪い 舌打ちするから分かりやすい
「おぅ、 あれだけ残ったの どうするんや?」
常務は山を見た
「あんなもん 下ほじくり出したら落ちて来るやろ」
「お前がやるんか?」
「ワシは そんな暇と違うぞ!これで今週は発破終わりや」
「あぁ、これだけでか?」
「ワシの計算では、落ちて来た分を考えたら大丈夫や」
まだ 火曜日、週末まで採掘する原石が足りない気がするけど
工場長 どうするんだら?
「お前の予想通りやと えぇけどな」
「大丈夫や、ほなワシは帰るで 後は頼むぞ」
工場長は 発破した現場を睨んでいた
事務所に戻り オペレーター全員に 常務の指示を伝える工場長
そして その危険性も
「角度は約75゜ってとこか、岩盤は層になってる
滑り出したら長さ10m超 幅5mくらいか、落ちて来るぞ」
「今回の 失敗?」
「あぁ、失敗や!また無駄に発破して小割りする事になるやろ」
工場長の読みは当たった、 発破で破砕された原石を採掘すると その下に岩盤の層があった
って事は 厚みは約1mって所か?
まだ 崩落はしないが、もし採掘中に崩落したら重機ごと 7m下の地面まで落ちる可能性が高い
「ブレーカーで 突っついてみる?」
「出来るのか?」
「分からないけど 落ちれば問題は無いでしょ?」
「無理せずにやるってんなら いいぞ」
俺は 現場で岩盤を見上げた
機体の腕を 少し伸ばした状態で 割れ目を攻撃する
足元が悪い
パワーショベルに 少し傾斜した足元を作ってもらい
再チャレンジする
「どぉ? 大丈夫?」
「いい感じです!これなら 狙える」
ガガガガン… ガガガガン… ガガガガン…
少し割れたか!
ガガガガン… ガガガガン… ガガガガン…
「なかなか 落ちないなぁ~」 ピキッ!
ガガガガン… ピキッ! ガガガガン… ピキッ!
「どぉ? やっぱ 無理っしょ?」
「割れはするんだけど…」
「まぁ、工場長も無理はするなって言ってたし!
俺ぁ 先に下戻ってるぞ」
「了解です!!」
ガガガガン…ピキッ! ガガガガン…ピキッ!
ガガガガン… ピキッピキッ!
「ダメだなぁ~」 ピキッ!ピキッ!ピキッ!
諦めて戻ろうと旋回する
ピキッ!ピキッ!ピキッ!ピキッ!ピキッ!
ガタガタ~ ピキッ!ピキッピキッピキッ!
何か 気配を感じ もう一度旋回した時
空に 一筋の影が通り過ぎた
ピキッピキッピキッ…
「逃げろ~」
工場長の声が響いた
次の瞬間 岩盤が崩落してきた
俺の方に向かって
太陽の光りは 遮られ
岩盤は 俺の真上に
避けきれない
俺の視界は 真っ暗になった…
身体が動かないし少し 息苦しい…
俺は 岩盤に潰されたのか…
次第に 意識は薄れていった
…




