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碧巨人ヴィレ  作者: 漣職槍人
親友との約束
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1-6. 碧巨人再び

碧巨人の姿は先ほどのもの少し変わって碧の体に赤い筋が増えていた。シルバーと蒼の筋と供に体を走る赤い筋が新たに加わった恵那を表しているようだ。しかし、シルバー、蒼、赤の並んで流れる筋とは打って変わって残念なことに三人の意志はばらばら。二人のときのように少しでも意志が交じり合うことさえない。

貫志、恵那。私は巨体の維持に集中する。戦いは二人に任せる。

 じゃあメインはあいつと戦闘経験のある貫志に任せるぜ。あたしはダメだと思ったらそのつど手を出させてもらうから。

 わかった。

 クプラがこちらに気がついて振り返る。またお前かとでも言うように、キギャアアア、とクプラが咆哮をあげた。

 クプラへと向かって走り出す。クプラは腕のリーチが短い。そしてティラノサウルス似の体系で蹴りもできない。代わりに助走のついた体当たりなどの体全体を使った攻撃が強力。だからこそ、距離をつめて動きを抑え、細かな攻撃でダメージの蓄積を狙う。

 クプラの頭に拳で連打を打ち込む。

クプラは逃げるように身をひねるが逃がさない。蹴りによって頭の位置を軌道修正。再び拳で連打といきたかったが相手だってバカじゃない。体ごと身をひねって回転。勢いのついた頭部を蹴るも押し返される。崩れた体勢を立て直す中で遠心力の加わった尻尾がこちらに向かってくる。避けられない。出力の安定しないヴィレでは受け止めることも不可能だ。

 あたしに任せろ。

 恵那の声に体の主導権を譲る。両手のひらの前に一枚の四角形のバリアを精製。身をかがめて斜面状に構えたバリアで尻尾の力の方向を変えて受け流す。そして、尻尾がバリアの上に乗り切ったころを見計らって、

 おりゃあああああああああ

 恵那が雄たけびをあげながら体全体に力を込めて手足を伸ばした。

 前傾姿勢のクプラは後ろの重くて長い尻尾で重心バランスをとっている。その尻尾を思いっきり上に持ち上げられたクプラは案の定前のめりに体勢が崩れて倒れた。

 これぞ湖の騎士ランスロット様直伝の水の流れのごとき受け流し。

 恵那の声に、アーサー王の円卓の騎士かよ、と苦笑しつつも、よくやった、と褒める。

 前のめりに倒れたクプラの背中に馬乗りになり、頭上に何度も拳を振り下ろす。

 クプラの背中が青白く光った。

 警鐘が鳴り響いたときには遅かった。

 放射状のプラズマが発生。吹き飛ばされた。

 半円上のプラズマバリア。背中を守るための技のようだ。

 ブレスと違い広範囲に分散させて放たれるおかげで攻撃としては威力が弱くて助かった。これがブレスであったなら、合体が解けて敗北していたかもしれない。

 でも合体も二回目。こちらも限界ギリギリ。もう食らえない。

恵那やビィレの疲労を感じる。膝をついてしまう。

 くそっ。体が動かない。

 どうやら限界のようだ。やはり三人でもだめなのか?

 何言ってんだヴィレ。ここで諦めたら試合終了だぜ?まだ負けてない!あたしたちが諦めない限りまだ戦えるだろ!ああああああもう、なんで体が動かないっ!

 ・・・れ・・・な!・・・が・・・

 二人のものじゃない。声が聞こえた。破壊された街からの断末魔だろうか。聞きたくない。勝てなくて、守れなくてごめん。

 心が、意志が枯れる・・・

 貫志っ!

 恵那の呼ぶ声。相変わらず彼女の声は感情むき出しだ。こんなときだからこそ頼もしい。おかげで何とか気力を振り絞っていられる。時間の問題かもしれないが・・・

 バカ!聞こえないか!この声が!あんたには聞こえないのか?

『頑張れ!負けるな!』

二人以外の声が聞こえる。声の数は徐々に増えていく。

 貫志。聞こえるか?私にも聞こえる。街の人たちの応援する声が。

『頑張れ!負けるな!碧の巨人頑張れ!』

 ああ、聞こえるよ。恵那、ヴィレ。

 ほら、聞こえてるじゃないか。

 僕たちは負けられない!

 体に力がわいてくるのを感じる。再び立ち上がる。

 先に起き上がっていたクプラが視界に入る。鉄塔にかぶりついて給電していた。こちらに気づくとよろよろとぎこちない動きで振り返る。ダメージの蓄積で大分弱っているらしい。下手に攻めてこようともせず、こちらを明らかに警戒していた。

 背中が青白く光る。戦いを長引かせないために決着をつけようとしている。プラズマを吐く体勢に入った。

 マイネン光線で対抗してもバリアを張って守りに回っても持久戦で負ける。どうする?

 恵那。何か良い案はあるか?

 任せろ。

 恵那に主導権を譲ると突然身をかがめて前に向かって飛んだ。前転を一つしてクプラの足元へ。しゃがんだ状態から飛び上がる勢いで立ち上がった。

 頭上への衝撃。クプラの顎下を見事にヴィレの頭頂部が打ち抜いた。

 頭上を見上げながらクプラが数歩後退。

 ほら、どうよ。

 ナイスだ。あとは任せろ。

 自慢げに声を上げる恵那から主導権を返してもらうと踏み込んでクプラの下顎に額を押付けて腕を首に回す。頭を元に戻せず、上を向いたままクプラはプラズマを吐き出すこととなった。

 まだまだっ!

 腕に力を込めて徐々に口を塞いでいく。

 行き場を失ったプラズマがクプラの口の中で爆発。その衝撃を額に感じた。

 いまだ。とどめだっ!

 腕を放してバックステップで後退。

 クプラは頭上を見上げていた。青白く光る口元から煙が上がっている。

 出力の持たない光線なんかじゃ意味がない。ただ一瞬。高出力の一撃があればいい。

 拳にマイネン光線を纏った。

 地面を蹴り上げてクプラに向かって飛び上がる。

 これが僕の!

 あたしの!

 私の!

『ヴィレ(意志)ッ!』

 雄叫びと供にマイネンパンチが打ち込まれた。

 クプラのダメージが限界値を超えた。苦しそうな泣き声をあげた後。クプラの全身にひびが入り、青白い光が漏れる。まるで映画で見たビルの倒壊のようにクプラの体は崩壊した。

 勝った。

 街の人々の歓声が聞こえる。

 勝利を示すように直立不動で経ち、空を仰ぎ見た。


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