1.ベタ惚れ
―――――春。相変わらず生徒・先生共に変わりなし。
他のクラスは皆、友達作りに精を出し新しい先生に胸いっぱい。
しかし私達のクラスは到底ありえない。
普通にこのクラスは好きだから3年間一緒で嬉しいけどね。私は。
私が所属する美術室は、桜ヶ丘高校一階に存在する。
目の前は陸上部が活動する校庭。真上は吹奏楽部が活動する音楽室。
油絵の具の臭いが部屋に充満し、活動場所としては非常によろしくない。
その影響で部員の数も衰退。油絵の具…許すまじ。廃部になったら責任取ってもらおう。
良い点としては職員室から遠いこと=先生の目が届かない。ぐっじょぶ美術室。
もはや少ない部員の溜まり場と化している。決してサボリではない。ここが重要だ。テストに出るぞ。
そうだ。自己紹介を忘れていた。
九ノ瀬咲。高校3年生。性格といえば好奇心旺盛だろうか。
緩いおさげに貧相な胸。“見た目”真面目系女子である。
好きなものは面白い奴。嫌いな物はメンドーなヤツ。最近の私のお気に入りは―――――
「ゆっきー!あいらびゅー!」
「……うぜぇ。消えろ」
―――――雪染蒼。高校3年生。
典型的なサボリ魔である。