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天槍のユニカ  作者: 暁子
第1章 凍てつく槍の来歴
7/62

2.いてはならぬ者(3)

 ディルクは早足でエイルリヒたちが待つ四阿へ戻ってきた。


 近づく足音に気がついたエイルリヒはカップを持ったまま振り返る。


「お帰りなさい兄上。随分早いですね、もしかして話はあまり弾みませんでした?」


 ディルクは弟の頭をわしわしと掻き回してから席に着いた。


 そしてティアナが勧めてくれたお茶を断りテーブルの上を見渡すと、大皿にたくさん乗っていたであろうケーキの類がかすだけを残してほとんど消えているのを目の当たりにして、顔を顰める。


「お前、一人で全部食べたのか」


「そうしたいところでしたが、ティアナが駄目だって。ほら、兄上の分ですよ。いらないならください」


 自分の手許にとっておいたケーキを指し示し、エイルリヒは凄みのある笑顔を浮かべる。


「……一つだけ貰う」


「どーぞお好きなのを」


 差し出された皿の上から焼き菓子を拾い上げて囓り、ディルクは残りのケーキを幸せそうに見下ろしてフォークを迷わせている弟を、まったく理解できずにまじまじと眺めた。いずれ彼の身体は小麦粉とバターと砂糖になるに違いない、と思う。


「それで、逢い引きの結果は」


「大して面白くなかったよ」


 ディルクは上着のポケットから布を取り出し、テーブルの上に放り投げた。


「ティアナ、これは本当に眠り薬か? 眠ったというより昏倒したように見えたぞ」


「簡単に申し上げると、眠り薬なのですわ」


 布を自分のハンカチで包み回収しながら、彼女は私情を排した事務的な微笑みを浮かべた。


「意識が戻ってもしばらくは朦朧としているはずです。殿下とお会いした記憶もうんと曖昧になります。ご心配なさらなくても四、五日で全快いたしますわ」


 布をティーセットのワゴンに隠すと、彼女は叩頭して四阿を出て行った。リータの後処理に向かったのだ。リータを運び出すまで、兄弟達はこの場で待機である。


 カミルがベンチの上でぐったりしているのにちらりと目を遣ったあと、ディルクは頬杖をついて大仰に溜息を吐いた。


「やれやれ、最近の医者は怪しげな薬を使うな」


 ティアナの父・イシュテン伯爵は、王家の主治医の一人だ。ティアナが用いる薬はすべてその父親から調達しているものだった。リータに嗅がせたものも、カミルに含ませたらしいものも危険はないというが、副作用やあとに残る症状が軽ければ気にしていないだけのようだ。空恐ろしいものである。


「そんなことを気にするよりも報告をしてください! 『面白くなかった』以外に、あの侍女から聞き出した情報をちゃんとまとめて!」


「面白くなかった、の一言に尽きるんだがな」


 エイルリヒはもぐもぐと口を動かしながら、喋るのを面倒くさがるディルクを睨んだ。


 あんまり迫力はない。口の端にはみ出たクリームがついている。


「血の効力については不明。不死に近い力があるのは本当らしい。火雷を操る力も多少はある。ただ、一居村を焼き尽くせるほどのものかは分からない」


「何それ、ほとんど確認が取れてないも同じですよ。何を話して来たんですか。まさか本当にいちゃついてきただけじゃないでしょうね」


「あの娘は趣味じゃない」


「……そうでしたか」


「初耳だったといえば、『天槍の娘』を城へあげたのは、昨年に亡くなったクレスツェンツ王妃だそうだ。まぁ、これも伝聞の伝聞で不確かだが」


 『天槍の娘』を庇護しているのは国王だと思っていた。しかしどうやら、ディルクの推測と実際の事情は少し違うらしい。


 王妃は亡くなる二年ほど前から体調を崩していたそうだが、『天槍の娘』の血を求めることなく、むしろ国王に勧められながらもそれを拒み続けて亡くなった。彼女は、娘の存在を疎んじていたからそうしたのだとディルクは考えていた。


「それは本当のことです。ティアナの父上がそう言っていました」


「なぜ王妃は娘の血に頼らなかったんだ? 癒しの力を持った血を得るために娘を城へあげたのなら分からなくもない。彼女が行っていた事業のこともある。素晴らしい万能薬は王妃の求めるところだったんじゃないのか? どうして自分の病のときに娘の血を使わないんだ」


「伯爵の話では、ただ養育するために娘を引き取ったんだとか……どうしてかその辺はちょっと言葉を濁した説明の仕方でしたね。気にしてなかったけど、一度訊いてみようかな」


 イシュテン伯爵は王家に関わる医師という肩書きゆえに、城の内側や水面下での貴族の動向にめっぽう詳しい。娘のティアナも王子の傍につけているため、彼のもとに集まる表立たない情報の量は多かった。もちろん王家の中、王妃の身の回りのことについてもよく知っていたはずだ。


「ただの村娘を、それも七百人の民を焼き殺した娘を養育するために、か。いくら慈悲深い人だったとはいえ、哀れみの心から出来る勝手じゃないだろうに」


「うーん、そう言われると気になってきます。仮に娘を引き取るのがクレスツェンツ様のわがままだったとして、陛下がそれを止めなかった理由は想像出来ますけどね。娘の血か、村を一つ焼き滅ぼすような力を利用したくて手許に置くことにした。利用できるものであると説明すれば、娘の存在を隠蔽して城に置くくらいなら、貴族の反対意見も弱まったでしょう。ただ、」


「クレスツェンツ様は、陛下の隣にある歴とした政治家の一人だった。不条理なわがままをいう女性ではなかっただろう」


 建国戦争の折、のちに初代国王となった男が戦いに出ている裏で、その妻であり今はシヴィロの王城に名を残すエルメンヒルデは、兵站と軍営を管理し夫の戦いを佐けたという。戦の後は国内の安定に向けて王が政治体制を整え、彼女は街の再建を指揮した。


 クレスツェンツ王妃は今上の二人目の正妃として位に就いてから積極的に衛生行政を担当し、国庫からその予算を獲得して、王都近郊の施療院を自ら運営する能力のあった王妃である。


 伝説的な賢婦・エルメンヒルデ王妃の再来ともてはやされた彼女が、数多の臣民を焼き殺したといわれる娘をなんの裁きにもかけずに引き取った。それも、ただ養育するために。彼女はそんな不合理を許す人物だったろうか。


「納得できない。伯爵に尋ねろ。絶対に何か知っている」


「命令しないでくださいよ。訊いてみようかなって言ってるじゃないですか」


「どうして最初からすべてを語らなかったのか、その理由もだ。でないと疑心暗鬼になる。お互いのためにも、今後はこうしたことがないようによく伝えておけ」


「……はいはい。そんなにいらいらしなくてもいいのに。甘いものを食べると落ち着くんですよ。ほら、特別にもう一個食べてもいいですから」


 そう言って、エイルリヒはタルトレットをフォークに刺しディルクの鼻先に突き出してきた。


 しばらく横目でそれを睨んでいたディルクだが、やがて気怠げにそれを受け取りもそもそと食べ始める。チーズとレモンのよい匂いがして美味しいが、エイルリヒほど甘いものが好きなわけではないので、さほどありがたくはなかった。


「失礼だなぁ。せっかくあげたんですから、もっと美味しそうに食べてください」


 ディルクは返事をせず、指先についたくずを舐める。


「陛下と娘の関係も巧く掴めないな」


「万能薬にもなる愛人のつもりなんでしょう」


「誰に聞いたんだ?」


「僕の想像です」


 そんな単純なものか、とは口に出さないでおく。


 王は、娘を庇護しながらも娘を避けているというのがディルクの想像だ。


 ティアナの情報によると、二人は時折この温室で会うことがあるらしい。お互いに距離を置き淡々と近況について話すだけだという。会談はいつもほんの十分で終わる。


 そして、王は娘に絶えず贈りものを寄越しているようだが、自ら西の宮へ足を運んだことは、この八年あまりで数回だけ。


 もともと王は国政に生きているような気質で、昔から女絡みの醜聞はほとんどない人だった。そんな彼が妃に迎えた女性は二人。


 一人目の正妃が子を産むことなく亡くなり、二人目に迎えた妃がクレスツェンツで、彼女との間にようやく生まれた王子が先月死んだクヴェン王子である。側室もおらず、クレスツェンツが亡くなってから王はずっと独り身だ。


 そんな王が今更若い愛妾を望むとも思えなかった。もちろん、彼が求めているのは娘のもたらす血の力であれば、娘を城に留め置いている理由はそれで充分である。しかし娘に対する厚遇は度を超している気がした。


 エルメンヒルデ城の西の宮は、王女などの継承権から遠い王族が住まいとする場所だ。ディルクの母も少女時代をそこで過ごした。その宮に『天槍の娘』を入れるのは、周りから見ればとても意味深だった。


「娘は血の見返りを求めているのかも知れませんよ。毎晩痛い思いをさせられてるんですし、批判も多いだけに陛下も後ろめたいところはあるでしょう? 案外陛下の方が脅されているのかも」


「それくらい小ずるい娘なら手懐けやすいんだが」


「さっきの侍女のようにのこのこ出てきてくれれば、あとは兄上お得意の誑し込みの術が使えますからね」


「そんな魔術は心得ていない」


 ディルクは不愉快そうに吐き捨て、ティアナが用意してきた貴族のリストを広げ眺め始めた。




     * * *




 本の背表紙を物色しながらゆっくりと図書館の中を歩き回れば、それだけで落ち着く。


 これらはすべて王家の所有物で、王族の教育と娯楽のためだけに揃えられていた。だからユニカにとって図書館は、他者が踏み入らない、温室よりさらに安全な場所だった。


 王城に召し上げられる前から読み書きを習っていたので、ユニカは城に来て間もなくここへ通うことを覚えた。子供向けの読みものも豊富だったので、心を閉ざしていた彼女にとって図書館は誰とも関わらずに暇をつぶせる恰好の庭となった。


 侍女のフラレイとテリエナは、読書用に備えられた机と椅子のところで待たせてある。二人は熱心に本を眺めて回るユニカを奇妙なものでも見る目つきでちらちらと観察しつつ、小声でお喋りに興じていた。


 彼女たちがさえずる声も遠く、ユニカは立ち並ぶ書棚の奥深くまで足を運ぶ。


 先日まで読んでいたのは国教にまつわる聖人たちの物語の本だったから、今度は気分を変えて民衆向けに発表された王家の伝記にしてみようか、と思った。それにしても、


(そろそろ読み尽くしてしまうわね)


 踏み台に登って目当ての本を引っ張り出しながら、ユニカは本の森を見渡してみる。


 ここに通い続けて八年。歴史、伝記、地方の伝承や物語、思想、薬学。一人で読んで理解できそうなものはだいたい読んでしまった。残っているのはよく分からない図形が書かれた数学の本や、時代によって更新されてきた法典くらいである。


 新しく本が足されることはあまりない。王は(ちまた)の出版物に興味があり収集しているようだが、それらがこの図書館に収まるのはだいぶあとのことになるだろう。


 侍女達のお喋りを盗み聞きしていると、街では庶民が書いた小説や紀行文が流行っているらしい。ついでにいうとなかなか下品なものも多いようだが、それが面白いとか。


 気はひけるが、それとなくそういう本を王にねだってみようか。


 今日持ち帰る本を選び終えると、ユニカは侍女達を呼んで図書館を出た。


 陽射しがあっていつもより温かく、柱廊(コロネード)を歩いているとよい気分だ。雫を垂らして解ける氷柱が虹色に光っているのを見ると、もう少し足を伸ばして温室まで行ってみようかと思えてくる。


 心が赴くまま、ユニカはふらりと温室へ足を向けた。しばらく部屋に籠もっていたのだ。シヴィロ王国では冬にこれだけの陽射しがある日も珍しい。温まった温室で本を読みたい。


 しかし、慌てて温室へ駆け込んでいく人影が見え、ユニカは顔を顰めた。入っていったのは担架を抱えた兵士が二人と、女官と思しき娘が一人。


 近づきすぎないように、しかし温室の出入り口がよく見えるところへ移動し、ユニカは無意識のうちに柱の陰に隠れた。


 少し待つと、兵士は二人で何かを運び出してくる。何かではない、誰かだ。


 付き添っている女官は困惑気味にその周りをうろついて、運ばれる誰かに声をかけていた。


 具合を悪くして倒れたのだろうか。しかしどうして女官が温室に? 王は執務中のはずである。そのほかに温室へ立ち入れる王族などいないはずだが。


(ああ、新しいお世継ぎが来たのだったわね)


 先日、ドンジョンの門で姿を晒してしまった相手の顔を思い出し、ユニカは溜息をついた。


 彼が温室にいるのかも知れない。よいお天気だもの。到底ご一緒する気になれないので部屋へ戻ろうと思ったところへ、フラレイが耳打ちしてきた。


「ユニカ様、あれ、リータですわ」


「え?」


 もう一度柱の陰から顔を出して一行の様子を窺う。


 運ばれている者の髪色を見てはっとした。黒っぽい茶髪。桃色のドレスの裾には白や赤の花と蔓の刺繍、リータのドレスで見覚えがあった。


「一緒にいるのは、今朝リータを呼びに来たティアナですわ」


 その周りをうろつく娘にも、よくよく見れば覚えがあった。クヴェン王子と一緒にいた気がする。リータを温室へ連れてきて何をしていたのだろう。


「フラレイ、リータが心配だわ。どうしたのか聞いてきてくれる?」


「はいっ」


 フラレイは同僚を案じてか、すぐに飛び出して行った。リータを運ぶ一行を呼び止めると、こちらを指差しながら何ごとかをティアナに尋ねている。


(こっちは見なくていいのよ)


 ユニカが隠れていると気づいた彼らは、明らかにぎょっと目を瞠ってそわつき始めた。


 ティアナが早口に何か言って、何度も頭を下げている。それからすぐにフラレイが戻って来た。


「ティアナ様が、リータのお父様に内々にご用意いただきたい品物があったそうで……ほら、シャスハト男爵は有名な豪商でしたから、それで内密にお話をしていたところ、リータが急に倒れてしまったそうです」


「倒れた?」


 あの、いつも元気があり余っていて強気な振る舞いの目立つリータが? 今日は一度も顔を合わせていなかったし、昨日も彼女は非番だったので会っていない。しかし一昨日は、いつも通りつんとした目でユニカを睨むこともあるくらい元気だったと思うのだが。


 兵士とティアナはどうしていいか分からない様子で立ち往生している。ユニカだって指示を出せるほど状況を呑み込めていないのに。


 しかしティアナからするとリータの主人はユニカなので、出くわしてしまったからには意向を伺っておきたいのだろう。


「フラレイ、リータについていってあげて。静養が必要なら陛下にもご報告しなくてはいけないし、あとで様子を教えて」


 フラレイは大きく頷いて、再びティアナ一行の許へ戻った。フラレイから事情を聞いたティアナが、ユニカの方へ向き直り深く頭を下げる。勝手に侍女を連れ出した事への詫びも含んでいるのだろう。


 たっぷりと間を置いて頭を上げた彼女は、その瞬間目を見開いた。


 それを怪訝に思う間もなく、


「きゃあっ」


 すぐ後ろにいたテリエナがユニカの隣にばたりと倒れてきた。柱廊の石床に打ち付けられる様子は、倒れたというより突き飛ばされたような。


 さらに動く人の気配。ユニカは振り返る。


 が、その途中で左の腰に熱いものが突き刺さった。


 誰かが激しくぶつかってきて、ユニカは思わず本を放り投げ勢いのまま柱に叩きつけられる。


「……っぅ、く」


 胸を打った痛み以上に、腰に感じる痛みの方がずっと強い。息が止まりそうだ。


 ユニカは痛みを堪えて自分の下半身を見下ろした。


 ドレスの腰から下に、じわじわと赤が広がっていく。


「きゃああああ!!」


 石床に這いつくばっていたテリエナはそれを見るや絶叫して気を失ってしまった。


 ユニカから数歩離れたところに兜で顔を隠した兵士が立っていた。彼の手には刃が真っ赤になった短剣が。


 床に転がった女官には興味がないらしい。刃を振りかざすと、彼は柱にすがって立つユニカに再び襲いかかる。


 殺される。


 ユニカの身体は本能的に刃を避け、柱の反対側へ逃げた。鋼が大理石を抉る耳障りな音と、いらだった舌打ちの音が聞こえる。


 まだくる。ユニカは刺し傷を押さえ、柱廊の外へよろけながら逃げた。


 その背中を兵士の短剣が斜めに走る。雪に足を取られ転んだお陰で、切っ先はコルセットをがりがりと削っただけだ。


 傍に見えた石像にすがりついて立ち上がると、今度は後ろ髪を乱暴に掴まれた。痛みで仰け反れば、温室の近くで呆然と様子を見ているフラレイ、そして兵士たちの姿が見えた。


 彼らは助けてくれない。


 助けてくれるひとは、もう傍にはいない。


 背後から感じる殺気。静かになった頭の奥でぱちんと青い光が弾ける。


「うわっ!」


 明るい陽光の下では見えないほどの小さな稲妻が、ユニカを押さえつけていた兵士の短剣から腕へと走った。怯んだ兵士からユニカは逃れるが、出血のせいで石像に背中を預けたまま動けない。


「よくも……!」


 反撃に激昂した兵士はユニカの首を押さえつけ、短剣をユニカの胸めがけて振り下ろす。


 その瞬間、二度目の電撃。


 剣は胸を逸れて腹部に刺さり、ユニカの呻き声と兵士の悲鳴が重なった。


 先程より強力な電流は兵士の右腕を焦がしていた。彼は束の間痛みに悶えていたが、何としてもユニカの息の根を止める決意をしているのだろう。左手で剣を拾い再び向かってくる。


 焼き殺してしまおう。


 目の奥で、青い光がバチバチと激しく弾けていた。


 この光でこの男を包んでしまえ。


 冷えた胸の奥で何かがはち切れようとした瞬間。


「やめろ!!」


 怒号に、ユニカは呼び戻された。


 我に返った途端、どっと左肩に衝撃が走る。突き立てられた赤い剣。わき上がる痛みが呼吸を邪魔する。


 身体から力が抜けていくユニカを見下ろしながら、兵士は剣を棄てかすかに笑って身を翻した。


 血の臭いが胃からせり上がってくる。


 痛みと出血で視界が暗くなる中、石像に寄りかかったままユニカはずるずると座り込んでいった。


 誰かが叫びながら駆け寄ってくるが、鋭いはずのその声もぼおっと響くだけで、何を言っているのか分からない。


 遅れて襲ってきた恐怖に、ユニカは涙をこぼしながら目を閉じた。

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