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私のパパは異世界神   作者: 格闘王
第1章 出会い
6/30

魔王と勇者

本編始まります。



「ちぇ、せっかく皆殺しタイムが出来ると思ったのに~。まぁ、いいや。あんた倒して後からじっくり皆殺しにするよ。」

「我がそう易易と殺られる訳が無い。貴様には色々と聞きたいことがある。覚悟しろ!」

「へいへい、僕に勝てたらね~」

「では行くぞ!」

「...」


ここは『魔王』と呼ばれる者の城の謁見(えっけん)の部屋である。広さは奥行30m高さ20mの大きな空間で、()の目の前に二人の男が対峙している。そして、俺はこの城の玉座に座って見ている。一人の男は黒く漆黒に近い甲冑、黒い兜、そして漆黒の柄のバスターソードを右手に剣先を相手へ向け走り出す。その男が着けている甲冑の肩から腕、兜には刺々(とげとげ)しい装飾が施されており大抵のものは近づく事をためらうだろう。

もう一人の男は対照的に白銀の甲冑、白い兜、手には白い柄のロングソードを持っている。こちらの装飾は、兜の右耳付近に白い羽が一枚、甲冑の至る所にその羽をモチーフにした装飾がされている。

 黒い装備の男は、空いている左手で黒い球体を(てのひら)の上に出現させ白い装備の男に投げた。白い男も同じように空いている手から白い球体を出現させ相殺する。その攻撃が戦いの合図だったようだ。次々と黒い球体を投げつけながら白い装備の男に迫っていく。そしてそれを白い球体で相殺しながら黒い装備の男にロングソードで切り掛かる白い装備の男。


 この世界には魔法というものがあるそうだ。彼らが使っていたものはこの魔法で、黒い球体が闇魔法で対照的に白い球体が光魔法だそうだ。この世界のものなら誰しも知っている常識だそうだ。余談だが俺は魔法が全く使えない。


 話は変わるが俺はこの世界のものではない。400年前俺はここではない世界のいわゆる『神』をしていた。俺の世界では魔法は無く、科学があった。俺の世界はある『者』によって破壊された。俺は辛うじてこの世界の『神』によって助け出されたが力は大幅に消耗したため、傍にあった俺の世界の人の体と同化させ助けられた。


この世界の『神』に頼み込み400年前からこの世界の神聖な戦いの立会神になった。俺の存在は神聖な戦を行うものにしか見えないようになっている。400年間様々な戦いを見てきた。(いくさ)、死闘、死合、そして今目の前で行われている『魔族とヒューマンの戦い』も俺の管轄だ。この戦いは『魔王と勇者の戦い』とも言われ様々な種族が対立し何百回も行われている。時には光と闇、魔物と人、人と人、水と炎ってのもあったな。


 今回は黒い装備の『魔王』と白い装備の『ヒューマン』の戦いだったな。さて、昔を思い出すのは数百年ぶりかな?こんなことを思い出すとは俺も少しは力が戻ったかもしれない。


さて、今回の二人は今までになく対象的だ。一人は平和を望み前向きに様々な方面から他の種族に交流を試みた。もう一人は、意見や話を聞こうとせず対立するものを一方的に殺した。

この話を聞いて()の者はどう思うだろう?やはり黒い装備の『魔族』が後者で前者が白い装備の『ヒューマン』だと思うだろう。そんなものなら俺は戦いが終わるのをただ待つかこの場を()るだろう。しかし、今回はなんとも興味をそそられる。『魔王』と呼ばれる存在が他を心配しヒューマンと共存を願っている。『勇者』と呼ばれる存在は、他の考えを悪と考え(例えが悪いが)自分以外は畜生以下と思っている。どちらも『人間』なのにと俺は考える。俺ら『神』の感覚は人型のものを人間としている。魔族、神族、リザードマン、ドワーフ、エルフ、妖精、竜人なんかも俺らにとっては『人間』だ。


 さて、今回の『魔王』と『勇者』はどんなものを見せてくれるのだろう。この400年間俺が認めた戦いは決して多くない。両手もあれば足りるだろう。そんな事を思っている時も戦いは続いている。そうそう、名乗っていなかったな、今俺は『修羅』と名乗っている。今の俺は短くツンツンした黒い髪、黒い目、引き締まった腕、すらっと長いがしっかりと筋肉が付いている足。腹筋は割れているが、あまり筋肉は付き過ぎていない細マッチョを少し肉付きを良くした体型である。顔は、まぁ普通だ。

今『神』として戦いを見る為ある装備を身に着けている。この世界の神に威厳が目に見える装備をと言われた。そしてこの世界の『神』の彼女に渡されたのが今の装備だ。400年間立会神としてこの格好で見てきたが、そろそろこの格好は厳しい気がする。全身黄金のフル装備。俺の世界で居た英雄王が同じ装備だった気がする。他に装備がないのでこれを装備するしかない。こんな考えを巡らせることができるのも久しぶりだ。この男に同化してから考えが偏った方向に行く。この男の知識と考えのせいだろ。『助けてもらって何もしないのはいけない』と直ぐ思い、何か出来ることはないかと提案し任されたのが今の神職だ。こんな事を考えるのもこの男に同化した為だと俺は推測する。この男が大和(やまと)人だと思ったからである。礼儀を重んじる国の人間を大和人と俺の世界で扱っていた。直ぐそれを思い出しこの男は大和人だと定義した。俺は前の世界の『神』だが、全てを知っているわけではない。前の世界でもこの世界でも『神』は多く存在する。そのトップだったのが俺や彼女だ。彼女『ミスラ神』はこの世界のトップだ。


「我が剣に宿れ闇の精霊よ!」

「・・・全てを照らし出し滅っせよシャイニングレイ!!」


そんなことを考えていたら状況が変わっていた。満身創痍で左片膝を付き右手で負傷した左腕を庇う『魔王』、その魔王の首元に剣を突きたてニヤケた表情でまだまだ余裕の『勇者』。二人は何か話をしているようだった。


「最後に言い残すことは無いか?あれば聞いてやらんでもないぞ。」

「ならば、我以外のものにはもう手を出さんでほしい。」


魔王は切実に勇者に頼む。


「・・・でもタダってわけにはいかないよ。」


そう言うと勇者はうっすら笑いを浮かべる。


「ならば、我の命を渡そう。」


魔王はそう言うと目を瞑り体から力を抜いた。勇者は無言のまま魔王の命をロングソードひと振りで奪った。


静寂が訪れこの戦いは終わった。今まで見てきた戦いならばこの場での戦いは収まりその後、後ろで待ち構えているどちらかの軍勢が行動を起こす。しかし、この場には魔王(・・)勇者(・・)しか居ない。魔王軍は勇者が来たと同時に魔王の命令でここ『魔王城』からほぼ全てがこの場から退去。勇者には仲間はいない。いたとしても、既に勇者の玩具にされ殺されるか正気ではいられなくなり到底戦いには参加出来ない。少しでも違うことを言えば殺され、その力につけ込もうしたなら直ぐ骸にされる。その為、今ではあまり勇者に近づくものも居ない。この勇者の思考は危険なものだ。考えが偏りすぎて幼稚、なのに力を持っているせいで否定するものを悪とし消す。あまりにも逸脱した考えの者はこの世界の神『ミスラ』や他の『神』がなんとか出来るのだが、異世界から来た人間なので手出しが出来ない。この男はたまたま空いていた異世界に繋がっていた穴から出てきたそうだ。他の世界のものに手を出すのは『神』といえど『世界の崩壊に関連するもの』でなければ出来ない。そして俺はこの世界のものではないのであまり深入りすることは得策では無いと考えている。


「あひゃひゃひゃ、馬っ鹿じゃねーの本当に命を差し出したよ。」


勇者は笑いながら魔王からロングソードを引き抜き魔王を笑う。


「そうそう、何が『我以外に手を出すな』って?はっ、そんなこと俺様がいつ承諾した!」


勇者はそう言うと魔王の亡骸などには興味を持たず、魔王城を破壊しだした。魔法剣を使いバターのように壁や家具、全てのものを楽しんで切り裂いている。まだ神の俺が居るにも関わらず好き勝手に暴れている勇者。勇者というかこちらが『魔王』だな。まぁ俺に攻撃してこない事をみると、動かない俺に興味がないか、始めから気づいていなかったと俺は考える。無駄な破壊行為が俺に飛び火しそうなのでこの場から離れる事にした。俺の気配を消し否可視化した。飛び火したところであまり俺には被害は出ないと思うが・・・俺は自分の祀られている所へ空間移動で直ぐ帰ろうと思ったが、一応『城』なので門から帰ろうと思った。ただの神の気まぐれだ。そして、俺は勇者に背を向け出口である門へ歩き出した。

ありがとうございました。

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