プロローグ5
プロローグの最終話です。今回は短いです。
「・・・・う、うう・・」
ここは何処だ。それより俺は存在しているのか?・・・妙だな。世界を観ようとしても世界が見渡せない。それに重力を感じるだと!
「気が付いた?」
「ム?」
鈴のような澄んだ女の声が俺に響く。・・・どこかで聞いたことがある声だ。
「・・・誰だ?」
「私よ。久しぶりね。」
「ああ、お前か。いつぶりだろうか?」
「ええっと、私がまだやんちゃしてたときだから・・・おそらく30億年ぶりかしら?」
「久しいな、感情の神よ。」
「ええ、久しぶりね。力の神。」
この声の主は俺と同じく始祖の神。俺は『力』、彼女は『感情』を司っている。
「・・・にしても、お前の姿が見えんのだが?」
「・・・・」
「ん?どうした?」
「・・・『目』を開かなければ今の貴方は何も見えないわ。」
「目だと・・」
「・・・ごめんなさい。私が貴方の下へ駆け付けたときはもう貴方の世界が消滅する寸前だったの。それに、この世界に連れて来ようにも貴方、疲弊しきっていてそれに耐えられそうになかったの。それで近くにあった『人の肉』を貴方用に再構築してその肉と一緒にこの世界に回収したの。」
「そうか・・・俺はまだ存在しているんだな?」
「ええ。」
「すまん。助かった。礼を言う。」
「え?」
「フム、礼を言ったつもりだったが違ったか?」
「え、いいえ。合っているわ。貴方が急にお礼を言ってビックリしたのよ。」
「それならこっちも同じこと、邪神や破壊神と呼ばれたお前が他のものを救うとは。」
「あ~、そんなことも言われてたわね。人間の負の感情を頂く・・え~おほん、もとい提供してもらうために色々やったからね。」
「・・・なぜ俺を助けた?」
「まぁ、一度も貴方に勝てなかったのに先に居なくなられるのが嫌だったのと、貴方程のものがどうしてここまでボロボロになったのかが知りたかったのよ。」
「そうか、なら話そう。」
俺は彼女に事の顛末を全て教えた。
「・・・と言う訳だ。」
「・・・そう。それでそいつの正体は掴めなかったの?」
「ああ。俺の神力が半分以上あったらわかったかもな。」
「それは自業自得じゃないの。自分の世界に不干渉しすぎよ!」
「すまん。」
「まぁ、いいわ。神力がある程度回復するまで私の世界『クライシス』で休んで。」
「礼を言う感情の神よ。」
「あっ、今私『慈愛の神ミスラ』って呼ばれているの。ミスラって呼んで。」
「分かったミスラよ。だが、名とは酔狂なことだな。」
「いいえ、信仰を集めるには名はいいものよ。名前によって『もの』が固定され認識がしやすくなるし~・・・そうだ!私が貴方の名前付けてあげよっか?」
「いや俺は・・・」
「分かり易く強そうな名前がいいわね。・・・竜馬、ドレッセ、イスカンダル、ミシェル、妙蓮、う~ん、ラハートやビルゴなんてどう?」
「・・・だ。」
「え?」
「修羅だ。今日から俺の名前は修羅だ。」
「分かったわ。修羅、いいえ『武神修羅』。」
「武神?」
「ええ、貴方太古から強かったでしょ。それに因んであなたの世界の戦う神『武神』と付けてみたけど気に入らなかった?」
「いや、いい。あと・・・」
こうして慈愛の神ミスラに助けられた『武神修羅』。そして、この世界『クライシス』で信仰を集め回復するため様々な出会いが始まる。
ありがとうございました。