プロローグ3
プロローグの3話目です。
司令室に上下黒のスーツを着た男が入ってきた。
「貴様何者だ!!警備兵は何をしている!!」
「おっと、外にいた兵士達は旅に出たよ。・・・永遠に帰ってこない旅にさ。」
「何!貴様『神の加護』がある兵士をどうやって!!」
軍曹は男に詰め寄る。そして、軍曹は男に見えないよう後ろ手で皆に逃げるように指示を出した。
「どうって、こう、やっ、て!」
そう言うと男は司令室内を目にも止まらぬ速さで駆け再び軍曹の目の前に立った。
「・・・」
「あ、君だけは生きているから。・・・ちょっと目障りなもの(・・)が浮いていて邪魔されちゃった。」
「な、何が起きたんだ。」
軍曹が周りを見渡すとさっきまで言葉を発し動いていた部下たちがピクリとも動かず、先程まで聞こえていた声が聞こえなくなっていた。
「お、おいどうし・・」
「触れるな!」
「え?」
茶碗の神が叫ぶ前に軍曹の手は女オペレーターの肩に触れてしまった。そして『ゴト』という音と共に彼女の首は床に落ちて首があった場所から血が心臓の鼓動に合わせてドクンドクンと流れ出してきた。
「ひ、ひぃ!」
軍曹はその場に尻餅を付き腰が抜けてしまった。
「触れるなと言ったであろう!・・・しかし参った。此奴儂達をここから逃がすつもりは無いらしい。」
「当たり前じゃないか。俺を見た奴を生かしておくとでも?」
「おい人よ!儂が時間を稼ぐお前だけでも・・」
「はい、貴方もここまで。お疲れ様でした~」
「な、儂が手も足も出せんだと・・」
『パリン』という乾いた音と共に茶碗の神は砕け崩れていった。
「な、何故だ!!幽体である神を消滅させるなど!!」
「う~ん五月蝿いね。冷静に考えてみろよ、『神の加護』の兵を殺せて~神・・っと云ってもこいつらは低級神だが、そいつらを殺せるんだぜ?」
「ま、まさか!!」
「はい、ここでしゅ~りょ~!ど疲れさん!」
軍曹の身体は地面に倒れおびただしい血が床を赤く染めていく。
「ふぅ~、これで俺の行動がしやすくなった。彼には悪いけど・・・全部ぶっ壊してやる!ククク、あは、あはははははははははははははははは・・・」
「おい!おい!司令室!応答願う!!っち妨害電波か?」
「状況が分からん。一度撤退しよう!」
「そうだな。今の状況を把握して本陣を叩き潰そう。」
「全員後退!司令塔までの退路開くぞ!」
「「「おおー!!」」」
この異変に気付いた者たちは拠点である司令塔に撤退することにした。
「隊長!前方に20の敵影確認!」
「殲滅し、道を開け!」
「「「おおー!」」」
「一陣前へ!かかれー!」
チャールズは映し出された映像をポカンと口を開け見ていたが、その表情をみるみる青ざめさせていった。
「ど、どういうことだ!話が違うじゃないか!!何で、何で『神の加護』を受けている人がこうもあっさり死ぬ!!」
彼が見たものはあっさり倒していたはずの男型アンドロイドに肉塊に変えられていく兵士たちの映像だった。
「アンドロイドの性能はあれほどのものではない!なのに何故!何故なんだ!」
「フム、あれはお前の仕業ではなかったのか?」
「え?」
チャールズは声のする方へ顔を向けた。そこには赤鎧を纏った最高神が立っていた。
「俺はお前があのまま『わざと負け』俺を祭りあげるつもりだったと思ったが。・・成程、お前何かに利用されたな?」
「・・・り、利用された!?そ、そんな!!」
「ご明察!貴方とは直接話をしたいと思っていました。」
いつの間にかチャールズの傍に上下黒スーツの男が立っていた。
「カ、カール!ぼ、僕を利用したって!!」
カールと呼ばれた男はチャールズを一瞬見たが気にせず最高神と話しだした。
「どうも、お初にお目にかかります。彼からはカールと呼ばれている者です。以後お見知りおきを。」
「・・・どこのものだ。シヴァか?カーリーか?それともロキの奴がまた悪さを考えたか?しかし、この世界の破壊はまだ1億年ほど先と言われていたがどう云うつもりだ。」
「いえいえ、私はそのような神々とは関係のないものです。破壊に関しては・・・私自身の道楽、とお考え下さい。」
男カールは悪びれもせず神に言い放った。
「そうか、ならばここで散れ!!」
神は男に向かって拳を放つ。しかし、あっさりその拳は避けられてしまう。
「・・・何故だ。」
「フフフ、まだお分かりになりませんか?」
「まさか。」
「その『まさか』です。上り坂、下り坂、まさか!ってな具合で・・・」
「御託はいい。」
「・・・では、そこのチャールズ君に説明しましょう。おっと、今私を攻撃しても本体は別の所にありますので、指を咥えるなり、歯ぎしりするなりして下さい。」
「くだらん。」
「では、今の状況を説明しますね。チャールズ君まず『神』という存在は生物の生き死にと信仰で力が変化します。まぁ基礎になる力はもともと備わっていると考えてください。次に『神』は様々な物や空間にも存在します。いいですか~ここテストで出ますよ~!」
「そ、そんなこと今はどうでもいい!!何故あんなにアンドロイドが強化されている!君が提案した作戦とは全く違うじゃないか!!」
「ギャーギャーうるせぇな!俺の説明を聞け!異論や口答えをして俺の説明を邪魔するな!黙っていろクズが!!」
「ひぃ。」
チャールズは身体を強ばらせそれ以上言葉を話さない。そんな彼を見てニコリと笑うと
「よろしい。続きを、この世界は元々『神』を信仰しているものが少なかったです。そして今現在世界の三分の二が破壊されています。・・・では、神の力はどうなります?はい、チャールズさん!」
「よ、弱くなる。」
「おおー!大正解!!いや~山田くん座布団一枚ってなんでやねん!!」
「・・・」
「はい、ここ笑うとこ!正解したからじゃなく、上手い事を言ったら貰えるよ的な事も言ってよ!」
「くだらん。」
「ちぇー、最高神さま反応が酷い!・・・で、その弱っているところに、ハイ画面見て~」
チャールズは映し出された光景を見た。映し出されたのはアンドロイドから逃げ惑う兵士達。先程までの威勢と自信に満ちた目は誰一人していない。敵への恐怖と勝てない絶望感。兵士達は逃げるのに精一杯になっている。
「見ましたね。今兵士達は恐怖や絶望感で必死に逃げています。その負の感情は最高神さまの力を大幅に下げ、逆に私には大きな力が流れ込みます。例外的にこの負の感情も力にする『神』もいますがここにはいないので私の一人勝ちですね。まさに超人、無敵、最強!ってな具合です。」
「そ、そんなことが!」
「あと、作戦はあまり変わっていませんよ?殺戮ショーがちょっと早くなっただけです。」
「・・・ま、まさか。」
「そう!ま!さ!か!チャールズ君貴方は優秀ですね。絶望に苦しむ顔は私が直々に拝見しますので光栄に思ってください。」
「じ、じゃあ神の論文を国の最高機関に出し、認めさせるってのも嘘か・・」
「ご明察!そんな事するわけないじゃん。ん~いいねその絶望感!!美味だね~!!」
「もういいか?」
と神が声をかけた瞬間カールは穴だらけになりボタボタと肉塊と変わってしまた。
「フフフ、俺は本体じゃないからね~」
「知っている。そっちの処理もすぐ終わる。」
「ならいいけど~」
「耳障りだ。消えろ。」
『ボ』という音を立てカールだったものは跡形もなく消滅した。
司令室の一角にその男は立ってこの状況を楽しんでいる。
「いい眺めだね~。もっともっと絶望してよ!!」
「消えろ。」
彼の後ろから突然声が聞こえ、彼を横薙ぎに手刀が放たれた。
「あっぶないな~。けど今の貴方の力では俺には勝てないよ。」
「・・・」
手刀を躱した男、カールは勝手に話しだした。
「俺の力は無機質の性能を自分の力分だけ上げることができる。あのアンドロイド達は俺の力を関与させてるから普通の50倍はあるかな~?」
「消えろ。」
次々に襲い来る手刀、蹴りをカールは躱していく。
「そうそう、この司令塔には秘密兵器があるらしいよ~。あっと、これかな~よっと!」
カールは司令官が座っていたであろう椅子の一箇所をおもむろに押した。
「フフフ、これでここは爆発するよ!じゃあね~」
「逃すと思うか?」
「残念!もうこれは本体じゃないよ~本体は何処でしょ~う?」
「・・・」
「酷いな~何か反応してよ!」
カールが文句を言っていると下の方で大きな揺れが起きた。
「おっとっと。じゃぁこの体も要らないね~。・・・では、再び出会えるならその時まで失礼いたします。」
『ドサッ』という音と共にカールが地面に伏し動かなくなった。
「・・・」
神はただ人神崩壊しだしたそこに佇んでいた。
ありがとうございました。