プロローグ1
プロローグです。
「おい、お前らこの戦い絶対勝つぞぉぉぉぉー!!」
一人の男が銃を掲げ叫ぶ。
「「「「おおぉー!!」」」」
彼の後ろにいる者達が一斉にそれぞれの武器を掲げ雄叫びをあげる。
彼の後ろには数万人の兵が銃や剣等の武器を持ち、すぐにでも突撃できる体制を維持し作戦開始の号令を待っている。彼らの人種、性別年齢は様々で、老若男女例外なく武器を持ち険しい表情をしている。そして、その歩兵団の前の地上には120mmの砲弾を放てる戦車が500両、上空を戦闘ヘリが10機、ステルス戦闘機が5機、ジェット戦闘機が100機飛んでいる。
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この世界は科学が進み様々な現象を科学で証明された世界。そして、ここは世界の中心と呼ばれた直径50kmの岩があった場所。
一人の科学者によって岩は破壊されそこはクレーターとなり、クレーターの中心に彼の研究所が砦のように佇んでいる。彼の名前はチャールズ=パーキンソン。チャールズは様々なエネルギーを研究し次世代の機械にそのエネルギーを試す一介の研究者だった。とあるエネルギーを見つけ、それを取り入れた機械を作成した事により彼の人生は一変してしまう。最初は研究者らしい探究心から次々試作し試行錯誤していった。次に動いた機械がどの程度の性能になったのかを測り、その実験結果に驚愕したチャールズは誰にもこの成果を伝えず自分一人でどんどん研究していった。・・・そして彼は動き出す。一つの目的のために・・・
『目的の為なら手段を選ばない』という輩は多くいる。しかし彼のように大規模で大掛かりな事をした者はいない。・・・いや、出来ない。彼は一つの目的の為にあるエネルギーで動く機械人形を使って動物、植物、土地、無論人々さえも目的のための犠牲として半年で世界の三分の二を破壊した。
そして現在。
「この作戦は我らの生存と仇討ちを同時に行うことになる。そして先月、我々の同士の情報によりあのアンドロイドを破壊出来る箇所を発見した。」
この作戦の指揮をしている男から一筋の希望が伝えられた。
「そして、その場所は頭の中心にある赤く光っている所だ!」
「おぉー!」「そ、そんな所に。」
兵士達の反応は様々だったが、一人の少年兵士の質問でその場は一瞬で静寂に包まれる。
「ねぇ、どうやって確認したの?」
「・・・」
指揮官からの言葉はなかなか出ない。それは仕方がないことだ。アンドロイドの性能は1km離れた狙撃手の弾丸を簡単に躱し、狙撃手に自身の指から出る弾丸で頭を打ち抜くほどだ。それにボディはこの世界で2番目に硬い金属で出来ている。
しばらく沈黙していた指揮官の口がゆっくり開く。
「・・・精鋭部隊30名、一般兵50名で隊を組み1体のアンドロイドを破壊。・・・生存者2名の証言により確認された。」
再びその場に静寂が訪れる。
「・・・おい!みんな絶望になるのはまだ早いぜ!!」
一人の男が叫ぶ。
「俺達はまだ『生きている』。まだ死んじゃぁいねぇ!!」
「だからどうしたの。」
その男の言葉に一人の女性が冷めた声で答えると
「あ゛あ゛?」
男は女性の胸ぐらを掴み自分の顔まで持ち上げた。
「いいかよく聞け。今まで生きてこれたのは『生きたい』と強く思い、何事にも足掻き抜いて来たからからだろうが!それを今更『相手が強すぎて無理です』みたいな声出しやがって!それによぉ『窮鼠猫を噛む』って言うじゃねぇか!ここまで追い詰められて何もせず死ぬ方が賢いのか?・・・そうじゃねぇだろ!!今こそ俺たちの力、あのイカレ科学者に見せてやろうぜ!!!」
「ッ、・・・誰が弱音を吐いたって?」
「お前だろうが!」
「私はただみんなを代弁して・・・」
「二人共もういい!!」
二人の会話を制するようにして指揮官が口を開く。
「さっきも説明したが、80名いてようやくアンドロイド1体破壊することができる。・・しかし、我らは一人ではない!我らには知恵があり、仲間があり、守るべき場所もある!そして我らは己が大切にしているもの為ならどんな力や能力をも発揮できるはずだ!家族、友人、物、場所、何でもいい大切にしている『もの』を思い浮かべそれを守る為に全力を出せ!!」
「「「「おぉー!!」」」」
「そして、我らを敵に回した事を後悔させてやれ!!」
「「「「おぉー!!」」」」
そして、戦いの火蓋は切って落とされた。
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司令塔は戦闘が一望できるクレーターの近くにある。司令塔の最上階には司令室があり、10台の画面が戦闘している兵士たちを映し出している。戦闘を行っている特定の箇所に3台配置、5台は兵士、他2台は無人の飛行機が付けている。司令室は最高司令官を中心に前と左右に画面が設置され、前には画面とは別に防弾ガラスで作られた窓がある。この窓から外を確認でき、いざという時秘密兵器を使用できるようになっている。画面の前には男女が2人ずつ配置されイヤホンマイクを付け作戦の指示や状況説明を行っている。そしてこの塔はこの世界で一番頑丈な金属で建てられていて普通の攻撃ではビクともしない。そして、その強度を信用し敵陣の前に置く(・)という愚行を実行した。
「軍曹!敵兵アンドロイド10体撃沈!全敵アンドロイド300が未だに活動中! そして50を超えるアンドロイドがこちらに接近中!」
「そうか!次、医療班状況報告!」
「はっ!負傷兵数2千とんで31名。重傷者506名。死亡者、確認出来るだけで200名!」
「ちぃ!戦車隊はどうした!!」
「30両大破!ステルス戦闘機1機撃墜!!続いてヘリが2機落とされました!!」
「ジェット機は!」
「10機撃墜され、くそっ!11機撃墜!!」
「くそっ、ここまでの戦力差があるとは!」
司令室の軍曹に次々と報告が入る。しかし未だにいい報告が一つも無い。
「ククク、馬鹿者共め僕の計画を邪魔しようなんて無謀だよ。でも、そっちから攻め込んで来てくれたのはありがたいね。・・・こっちから行く手間が省けたよ。」
電気音が部屋全体から聞こえる部屋で、回転椅子に座りパソコンを打ちながら外に出したハチ型の監視カメラから送られた20以上の映像を確認する男が呟く。カメラの映像は使用しているパソコンの画面ではなく、男の周りに浮かんでおりSFなどでよく観る光景だ。パソコンが置かれている机の周りには透明な円柱が何本もあり、その中には液体が入っており何本ものケーブルに繋がれたアンドロイドが直立のまま浮いている。男の技術はこの世界の100年も200年も先を行っている。そして、この技術はあるエネルギーを研究した成果でもある。男の名はチャールズ=パーキンソン。
「・・・早く出てきてくれないと、この世界壊しちゃうよ~」
「軍曹!このままではこちら側の死者が増える一方です!!」
「くそぅ!ここまでか!!全軍たい」
「軍曹あれを見てください!!」
一人の兵から『そこ』を見るように言われ軍曹は窓から『そこ』を見た。
「あ、ああぁ!!」
戦闘が行われている真っ只中に大きな光の柱が現れたのである。
「んん?あぁ、やっとお出ましですか。」
チャールズもその柱を確認した。そして、先ほどとは違い真剣な眼差しでその光を見つめている。
光の中から何か(・・)の集団が出てきた。その物たちの形は異形。10メートルはあるであろう大蛇、腕が4本ある人型、さらには茶碗やザルも浮遊しながら次々と異形な者達が光の柱から出てきた。
そしてその物達の先頭には目の周りだけを覆う赤い面をしているものが立っていた。その者は青白い光の集合体で身体を構成し、武者鎧のような手甲で腕から手の甲を覆い、鳩尾や脛胸など人体の急所を守るように鎧が覆い『格闘』に特化した鎧を着ていた。その為重量感は無く、素早く行動が出来るよう必要最低限の装備になっている。鎧全体は赤くこの世界でも畏れられている『鬼』という伝説の生物を思い描いてしまう。
「八百万の神々よ人間共に同化し加護と治癒を!俺は木偶を破壊してくる。」
「御意。・・それと主様よろしいですか?」
「何だ。」
主と呼ばれた赤鎧は声のした方向へ顔を向けた。そこにはふわふわ浮遊する茶碗があった。
「人間達に念話をしてもよろしいでしょうか?」
「構わん好きにしろ。」
「ありがとうございます。それと、何か妙な気配がします。油断しませぬようお心に留めてくだされ。」
「おう、わかった。」
司令室は沈黙していた。
『人の子よ聞こえるか?我らの主であるこの世界の最高神がそなた達を助けるとおっしゃった。我らはその命に従いそなた達を助ける。』
という言葉が突然頭の中に直接響き、軍曹はおろか戦闘中の兵士でさえ足を止め途方に暮れている。
「お、おいお前も聞こえたか?」
「ええ。あ、貴男も聞こえたの?」
「お、俺は索敵の為にヘッドフォンしてたけど突然頭の中に聞こえた!!」
兵士たちは混乱し足を止めてしまっている。それに気付いた者は僅か。そして対応が遅れてしまう。
「バカ者共!!敵前で何を呆けている!!」
軍曹が叫ぶ。軍曹も気付いた一人だったが一足遅かった。
「う、うわぁ。」
カメラを持っていた兵士にアンドロイドが近づいていく。その映像を見た誰もが殺られたと確信した。・・・しかし、一つの異形が兵士の前に現た。
「おい、俺がこれを引き受ける。お前は少し退いてろ。」
異形は赤い鎧を纏アンドロイドを見ると
「邪魔。」
と一言言って簡単にアンドロイドの首をもぎ握り潰した。
「う、嘘だろ・・」
映像を見たものは驚愕し司令室にまた沈黙が流れる。
「軍曹!報告します!!」
「お、おぅ。どうした?」
映像が映し出された画面を見つめていた軍曹に医療班が慌てた様子で報告しに来た。
「我ら医療班で治療していた計2057名無事傷が癒えいつでも戦える状態になりました!!」
「はぁ!?」
「っ、わ、私も未だに信じられません。しかし、私は直に見ました。異形なる者が突然現れ、負傷者に吸い込まれるように消え傷を完治させました。」
「ほ、本当か!!」
「はい!偽りなく。そして癒えた兵士達は・・・なんと言えばいいですか、『火事場の馬鹿力』?えっと、身体能力が大幅に上がり片手で1tぐらいの岩を軽々持ち上げていました。」
「・・・」
軍曹は開いた口を戻せず止まってしまった。
「おい、何を呆けてる!!」
その司令室へ一つの異形が現れた。
「「「ちゃ、茶碗!?」」」
「いかにも儂は茶碗だが、反応が微妙じゃな。」
茶碗は自分たちの素性を話し協力する旨を伝えた。
「では貴方がた神々はこの戦いに参戦されるのですね。」
「うむ。これだけの規模でこの世界を破壊したのだ。もう生物だけの問題ではない!我らが主、この世界の最高神様もこれを無下には出来ん。早急に手を打たないとこの世界が破壊されかねん!」
「それに、あなた方八百万の神々は霊体で実体が無い。その為戦うには我々の体が必要なのですね。分かりました我々も協力しましょう。」
「すまぬな。主のように霊体も実体も持っていれば話は早いのだが・・・」
「いえ、我々の仲間を癒して頂き感謝している上、神様の加護なるものまで与えて下さる。感謝の言葉は尽きません。」
「しかし既に死んだ者は生き返らんし、それに瀕死の重傷者の治癒も出来ん。神とて万能ではないからのぅ。死んだ者には悪かったと思っている。」
「その言葉だけで十分です。では、反撃開始としますか。」
「うむ。」
「全兵よく聞け!我らは勝たねばならん!しかし敵の戦力は我らを軽く上間合っている。だが、信じがたい事に我らに神々が手助けをしてくださるそうだ!我らには伝説の存在だった神が憑いている。恐れることはない!霊体であられる神々は戦う為に肉体がいる。共に戦ってくださる神々に我らの身体を使っていただこうではないか!!」
「「「おぉー!!」」」
「異論のあるものはいないな!!これより神々と共にこの世界を取り戻すぞ!!」
ありがとうございました。