人型携帯電話 役人タイプ
呼び鈴が鳴ったので私がドアを開けると、そこには見知らぬ男が立っていた。
「誰だ?」
「私は未来からやってきた、人型携帯電話、役人タイプです。特に高性能というワケではありません。ただ、国からの支援金を元に開発されましたので、信用度の高い物が作れたと自負しております」
「ほう」
「他のメーカーさんのように目新しいだけの機能を増やさず、お客様の事を第一に考えられました。ですから、どんな人でも安心してお手にできると思います」
「……それで、値段は?」
「……おっと、そこですか。そこは何と言いましょうか、はい。物作りの国、日本といえど、全ての要望には応えられませんというか」
「つまり、何なんですか? ハッキリ言ってくださいよ」
「少々、お高くなってしまいまして……」
「具体的にいくら?」
「いやいや、想定の範囲内ですよ。市場平均の3倍程度ですし」
「……なんで、そんな高くなったのさ」
「そこは安全性を優先して、検査を繰り返したと言いますか……」
「検査ぐらいじゃ値段が3倍にはならないでしょ。どんな検査したの?」
「ええーと、まず携帯の性能委員会を設立し、性能について議論する場所を作りました。ただ、1つの所から意見を聞いていたのでは偏ってしまいますので、加えて4つ団体を作りました。その上、公平な判断が出来るように性能調査の会を設立し、結論に隠蔽がないよう性能検査委員会の検査委員会を……」
「ただ、役人が天下り先を増やしてるだけじゃねーかっ!」
と言って、私はドアを閉じたのだった。