焦燥。
「・・・あっ。」
寝ちゃってたのか。
ふぅ、懐かしい夢を見ちゃったな。
時計を見ればもう夕方の6時を回るところであった。
3時のおやつにお姉ちゃんにケーキを持っていったから・・・あっ!?
「早くお皿回収しにいかないと、また怒られちゃう!」
僕は眠気が一気に覚めてお姉ちゃんの部屋の前へと向かった。
しかし・・・
「あれ?・・・お皿出てないや。」
やっぱり・・・食べてくれなかったのかな。
なんで僕、こんなにお姉ちゃんに嫌われてるのかな?
僕のお姉ちゃん・・・如月 蒼華。
とても美人で、小学生にしてもすっごくスタイルがよくて、最初であったときは思わず見惚れてしまった僕の新しいお姉ちゃん。
でも会った時から僕に対してはずっと険悪な態度をとってくる。
それでも僕はママとの約束を守るために、お姉ちゃんの仲良くなれるよういろんなことをしてきた。
お姉ちゃんのために料理を覚えたり、お掃除もがんばったり・・・そして最近になって少しだけお姉ちゃんの態度が変ってきて・・・
今日なんか、いつもなら「いらないわよ!」って、ママとパパが見ていないところでは一口だって食べない僕の料理を、「置いておいて。」って言ってくれて・・・とっても嬉しかったのに。
もしかしたら、ママとパパに見せるようなあの眩しい笑顔を僕にも見せてくれるかもしれないと思ったのに。
「・・・やっぱり、後から入って来た僕なんかと仲良くなんてなれないのかな。」
はぁ。
僕はため息をついてその場を後にしようとした。けど・・・
「あれ?・・・開いてる?」
そう、蒼華お姉ちゃんの部屋のドアが開いていたのだ。
いつもは、僕と家で二人っきりで留守番する時なんかは特に、鍵まで閉めてほとんど自室から出てこないお姉ちゃん。
僕は半ば、お姉ちゃんに怒られるのを覚悟でその部屋に入ってみることにした。
「おっ・・お邪魔しま~す。」
おそるおそるお姉ちゃんの部屋に入る僕。
「わぁ。」
そこはピンクの壁紙が張られていたり、可愛らしい人形が並べられている、女の子らしい部屋だった。
「・・・ごくっ。」
なんだか僕は罪悪感と気恥ずかしさを感じつつも、やはり好奇心に負けてさらに部屋の中へと進み行っていた。
そしてお姉ちゃんの勉強机の上に視線が行くとそこには、空になったお皿とフォークが残されていた。
「あ・・・・お姉ちゃん、食べてくれたんだ。」
僕はその机の上にあるお皿とフォークを回収すると、自然と笑みを浮かべていた。
「・・・・??それじゃあお姉ちゃんはどこに?」
僕はそれから家中・・・っといってもマンションなので、リビングとお姉ちゃんの部屋、パパとママの部屋、お風呂場、キッチン、トイレぐらいしか探す所はないんだけど。
「・・・どこにもいない。」
その時僕は悪い予感がするのを感じていた。
僕はその予感のするまま玄関へと足を向けていた。
「・・・開いてる。」
そして玄関の扉を調べてみると鍵が開いていた。
「・・・??」
そして扉を開けてみると、玄関の外に見覚えのあるカチューシャが落ちていた。
「これ・・・お姉ちゃんの?」
その時僕の心は悪い予感と不安な心で満たされていた。
僕は焦る気持ちそのままに、裸足のまま外へと飛び出していた。