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私の最高の弟  作者: アパッチ
1章
7/13

回想。


 ---Side空朱(回想)


 その日・・・僕のママはいなくなった。


僕がまだ幼稚園にあがったばかりだったとき。


入園式を終え幼稚園での生活に不安と期待を覚えて、半ば興奮気味に帰宅した時、ママが突然倒れた。


もともとママは心臓が弱く、いろんな薬を飲んでやっと普通の生活が送れるような状態だった。


それでもママは僕の前ではいつも笑顔で、そんな姿ばかり見ていた僕はこの先も優しいママとちょっと厳しいけどやっぱり優しいパパと3人で幸せな生活が続いていくものだと思っていた。


パパは動揺しながらもすぐに救急車を呼び、発作が出たときに飲む薬をママに飲ませようとしていた。


しかし、意識を失ったママは薬を飲むこともできず、僕はただただママに泣いてすがりつくしかできなかった。











---ピッ、ピッ、ピッ・・・


「ママ!ママ!!」


白に染められた病室。その中にはいくつものよく分からない機械が所狭しと並べられ、そこから伸びたコード類がママの体に取り付けられている。


そしてそんな機械に囲まれたベッドの中には、目を閉じたまま呼吸だけを繰り返すママが眠っていた。



あの後ママは救急車で運ばれ、すぐに緊急手術をすることになった。



そして手術を終えたお医者さんがいろいろ難しい話をしていたけど、ほとんど何を言っているのか僕には理解できなかった。


でもなんとなく、僕はこのままママが目を覚まさないかもしれないと直感で感じ取っていた。



今はパパがお医者さんとまた難しい話をしているらしい。


去り際に「ママのそばについてやってくれな。」と言い残し、今まで見たこともないような複雑な表情を浮かべていた。


「ママ・・うっ、ぐすっ・・・」


僕は何もしてあげられないの?


ママ・・・嘘でしょ?帰ってきてよ?


僕こんな嘘嫌いだよ。


ママだって僕が嘘ついたら怒ってくるくせに。


僕だって怒るんだよ?


ママ。


「ママ・・・早く起きてよ。・・・・僕明日から幼稚園があるんだよ?お弁当作ってよ。・・・ママ・・・ぐすっ、ひっく・・・」


僕の顔は涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになっていた。


それでも僕はママのそばにすがりついて、シーツが汚れるのもおかまいなしにママの体に顔をうずめていた。



すると・・・












---さわっ。


「・・・え?」












何かが僕の頭を撫でる感覚がした。


それはつい数時間前まで当たり前のように感じることのできた、でも今となっては懐かしいと思える感覚だった。


「・・・マ・・・マ?」


「・・・く・・う・か。」














そうそれは目を覚ましたママの手の感触だった・・・

 

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