ちょっぴり甘い。
---ある時、パパが数日の出張で、ママがそのお見送りに付き添うことになった。しかし、仕事の関係上数日の出張といってもパパの荷物は多く、それだけで車はいっぱいになってしまい、付き添える人数が一人だけということになってしまった。
出張先まで車で往復半日かかり、荷解きもあるため付き添いにいけば帰ってくるのは明日ということになる。
そのためか、ママはパパに付き添いたい気持ちがあるものの、大好きな幼い私たちを家に、1日とはいえ置いていくことに対して抵抗があり、出発ぎりぎりまでそのジレンマに挟まれていたのだが、そこは私がママの背中を押した。
「私ももう小4なんだからね!ちゃんとお留守番ぐらいできるs、ラブラブの二人の邪魔なんてしたくないよ!」
そう言うと、ママはいつもの私に見せてくれる最高の笑顔で私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。
「(はぁ、きっと私はこのために生きてるんだわぁ。)」
私はしばし至福の時間を味わっていた。
・・・・失敗した。
私は目先の幸せを優先するばかり、ある問題に直面した。
ママの帰りは明日の夕方で、その間家には私と空朱の二人だけ。
ママが再婚してから、家に二人だけになるのは初めてのことだった。
今私は自室で勉強・・・するフリをしながら焦っていた。
いつもなら友達と遊んでいれば、ママといればあっという間に過ぎる1日がとてつもなく長く感じた。
「・・・って何を私は気張ってるのよ!そうよここにいればあいつは入ってこれない。」
空朱はこの家に来てからというもの、まだ私の部屋に入ったことはない。
・・・というか嫌いオーラ全開の相手の部屋に誰が好き好んで入るだろうか。
そんな思考に行き着き、少し安堵の表情を浮かべていると。
---コンコン
「!?」
「あ・・・あの。蒼華・・・さん。」
あいつがやってきた。
「なっ、なによ?」
「あの、僕。・・・おやつにケーキを焼いてみたんだけど・・・イチゴがいっぱい入った・・・」
ケーキ!?あいついつの間にそんなもの作れるようになったのよ!?
しかもイチゴがいっぱいって・・・私の好みまで調べて。
「・・・ふんっ。まさかそれで私を“かいじゅう”するつもり?」
ふんっ・・・・そんな手に引っかかってたまるもんですか!
「・・・・けっ、ケーキだけそこに置いてどっかにいって!」
・・・・まっ、負けてないんだからね!別にケーキを食べたぐらいで嫌う気持ちには何も変りないんだから!
そしてドアの前から気配が消えたのを確認してケーキをとる・・・それは。
「うわぁ~」
とても小1が作ったものとは思えない程のできであった。
それはふんだんに生クリームとイチゴを使った私好みのシンプルなショートケーキだった。
「ん?」
「<たべおわったら、おさらはそとにだしておいてください。かたづけます---空朱より。」
「・・・ふんっ。」
そのケーキはとても・・・・おいしかった。