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私の最高の弟  作者: アパッチ
1章
11/13

私の最高の弟。



 ---ドンッ!!


「ぶひゃっ!?」


---ゴロゴロゴロー、ドンッ!


「ぶへっ!」



「・・・え?」


今まさに、あの気持ち悪い男に襲われそうになった瞬間、目の前の男が横に吹き飛ばされ、その丸い体を転がしながら床を数m転がっていった。


「ハァハァハァ・・・」


そして私の目の前には・・・


「く・・う・か?」


私の弟・・・空朱の姿があった。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・おっ、お姉ちゃん。大丈夫?」


空朱は息を切らせながら心配そうな瞳で私のことを見ていた。


「どうして・・・どうしてあんたが・・・うっ」


私は、いつも邪険に扱っていたはずの空朱が来てくれたことを嬉しく思っていた。


そして同時に安堵を覚え、今まで耐えてきた恐怖が一気に噴出してきて涙が止まらなくなっていた。


「うえぇぇえ~~~ん、くうか~~~!ごわかっだよ~~!!」


私は恥も外聞もなく、手足が縛られたまま空朱にすがりつくようにして泣いていた。


「わわっ、おっ、お姉ちゃん。」


そんな私を、今まで散々邪険に扱ってきた私を空朱は何も言わず抱きしめてくれた。













「・・・っててて。・・・ああん?誰だよ!僕の邪魔をするのは!!」


そしてしばらく私が空朱の腕の中で泣いていると、さっき空朱の体当たりでマットから転げ落ちたブタ男が起き上がってきた。


「・・・?・・・ほぉ~~。」


「ひっ!」


私は先ほどの恐怖を思い出し、空朱にすがりつく。


そんな私を、私よりも小さく弱々しい体で抱きしめてくれる空朱。


「ぶひゃひゃひゃっ。お前は確か・・・如月の所の“妹”の方じゃないかぁ。ぶへへっ。」


・・・・いっ、妹?


「ぶへへっ、いいねぇ。美少女姉妹を同時に楽しむのも。・・・ほぉら、お姉ちゃんと一緒に気持ちよくしてあげるから、そんな怯えないで、お兄さんとあぞびましょうねぇ~~。」


さっきまでいきり立っていたその男は、空朱を見るやいなやまた下卑た笑みを浮かべてこちらへと近づいてくる。


・・・っていうか空朱は“妹”じゃないっての!!


確かに見た目はちっこくて、ほそっこくて、女顔で、なんか趣味とか正確も可愛くて・・・・・やばっ、妹にしか見えなくなってきたわ。


「・・・じゃ、じゃあお兄さん。僕がお姉ちゃんの変わりに遊ぶから、お姉ちゃんは離してあげてよ。」


「・・・なっ、何言ってんの空朱!そもそもあんたおと・・もがががっ!?」


私が空朱の性別を正してやろうとすると、急に空朱の手が私の口を塞いだ。


なにするのよ!


っていうか私の身代わりになるなんて・・・なんでこんな私のために。


「ぶへっ?・・・へへへ、美しい姉妹愛ってことかぁ?いいねぇ。ぶへへ。」


「じゃあ!」


「でも駄目だ。」


空朱は一瞬喜ぶも、すぐにその表情は曇ったものにさせられた。


「お前の姉ちゃんは僕のことを激しくイラつかせたがらねぇ。ぶへっ・・・この僕の傷ついたデリケートな心は、もうその純真無垢な体で癒してもらうしかないんだよねぇ~。ぶへへっ。」


「・・くっ。」


苦渋に唇を噛み締める。


「っというわけで、姉の責任は妹の責任って訳で・・・二人一緒に僕の傷ついた心を癒してもらうがらねぇ~。ぶひゃひゃ!」


---クイクイ。


すると突然空朱に袖を引っ張られ、目線は男に向けたまま小声で私に囁いて来た。


「お姉ちゃん、足の縄だけは緩めたから僕がアイツを引き付けてる間に逃げて。」


「なっ・・・なに言って!」


「うわぁあああああああああああああああああ!!」


そう囁くやいなや、空朱は男に向かって再び突進していった。


しかし・・・


「おっとっと~。へへ~~」


しかし、今度は不意打ちとはいかず、体格差もかなりあったため簡単に受け止められて、空朱は男の腕の中に捕らえられてしまった。


「くそぉ!・・・あぐっ!!」


「ぶひゃ!?」


すると空朱は自分を捕らえている男の腕に噛み付いて反撃を試みた。


しかし、それは男の分厚い脂肪のせいか、男をわずかに怯ませるにとどまり戒めは解かれないままであった。


「こいつぅ!よくもやったなぁ!!・・・もう怒った!今すぐひん剥いて、その体たっぷり楽しませてもらうからなぁ!!」


「・・・ぐぅぅう!」


「やめて・・・」


やめてよ。


なんで?なんでそこまですんのよ。


なんで私なんかのためにアンタがそんな目にあってんのよ!


「お姉ちゃん!早く逃げて!!」


---ビリリー!


「きゃっ!」


「ぶひゃひゃひゃ!!」


「空朱!」


私が一人呆然としている間にも男の魔の手は空朱に襲い掛かり、もはや上半身の服はその機能をはたしてはいなかった。


誰か!


誰でもいい!!


お願いだから空朱を・・・


私の大事な“弟”を助けて!!
















---ドンドンドン!


「おい!誰かそこにいるのか!!」


「!?」


「ぶへっ!?」


「!?」


私の願いが通じたのか、倉庫の異変に気がついた誰かが来てくれたみたいだった。


「おい!返事をしろ!!」


「!?・・・たすけ・・助けてください!空朱が・・・私の大事な“弟”が襲われてるんです!」


「なっ!?弟!?」



---ドゴーン!


すると倉庫の扉の鍵が壊され、そこには警察官らしき人と通報したのであろう民間人の姿があった。



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