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第70話 ユウマの葛藤

ユウ「お久しぶりでーす‼ バカ猫が遅くなってしまい申し訳ありませんでした」

黒猫「いや、ね。俺ももうすぐ高校3年生になって大学受験があるから、勉強とか色々と忙しいんだよ‼」

アクア「あっそ。まっ頑張りなさい」

黒猫「アクアちゃん冷たくない⁉」

ルナ「気にしたら負けですぅ」

アクア「あっ‼ ルナちゃん今日私の家に来れる⁉」

ルナ「全然行けますけど……どうかしたんですか?」

アクア「食材が余っちゃって……一緒に料理の練習しよ?」

ルナ「はい‼ ユウ君達も勿論一緒に食べますよね?」

ユウ「悪い。今日はレインとセシルとバカ猫で外食する予定だったんだ。そっ、そうだよな⁉」

バカ猫「おっ、おう‼ 覚えてるぜっ‼」

ルナ「そうですか……ならしょうがないですね」

アクア(逃げたわね……)

『どうぞ、中に入って下さい』

「失礼します……」


やはりこの村で1番偉い獣人。

部屋は他の獣人の部屋より大きく作られていた。あと何気にぬいぐるみが多い。

可愛いものが好きなのだろうか。


『あっ、あんまり見ないで下さいね……///』

「……あっ、すいません‼」

アフロディーテーさんは、顔をリンゴのように真っ赤に染め上げて俯いた。

アフロディーテーさんも若い女の人だからその辺の気配りが足らなかったかもしれない。


『えっと……とりあえずそこに腰掛けて下さい』

「どうも……」



しばしの沈黙。



気まずいよっ‼ なんで俺はこっちの女の人とは気まずくなるんだ⁉

これも一種のスキルなのか⁉


でも今回のは俺が悪いみたいだし俺から話を切り出そう。


「えっと、地球についてのことなんですが……」

『あっ……そうでしたね‼ お話しなくては』

「お願いします‼」


『私達のいる世界が“グラニデ”というのは、ご存知ですね? “グラニデ”には古くから言い伝えがあります。「他の世界より舞い降りし者、我が世界を正義の道へといざなう」というものです。他の世界というのは恐らく“地球”のことでしょう』


そんな言い伝えがあったのか……。

それじゃあ俺が勇者みたいな者ってことになるのかな?


『“正義の道へといざなう”これは他の世界から来た者が、悪を滅ぼすということでしょう。貴方はこの世界で悪者に相応しい人を倒しましたか?』


「……はい。悪者なのか分かりませんが」


俺は今までの経緯をすべて話した。地球から来たことも含めてすべてだ。


『そうですか……。だから先ほどあのようなことを聞いたんですね』


「はい。なんかロニが悪いことをしようとしている気がして」


腐っても警察官の息子だからな。

正義感はあるんでい。


「アフロディーテーさん。結局俺は元の世界に帰れるんでしょうか?」


『結論から言うと帰ることは出来ます。ですが……』


アフロディーテーさんは、難解なパズルを解いている時のような顔をした。


「何か不都合な点でもあるのですか……?」


『そう、ですね……。私達が今いるこの村は、リンヤー族の本村です。この村が位置するのは北ブロック。また同じように南ブロックにもミンヤー族の本村があります。その二つの村を最短距離の直線で結んだその長さの半分の所に異世界へと通じる扉があります。ですが、その扉を使うと二度とこの世界に帰ってこれないとも言われているのです。それでも元の世界に帰りたいのですか?』


フゥ、と溜め息を一つ。

アフロディーテーさんは心配そうに俺を見つめていた。

恐らく俺の心情を思ってのことだろう。


「でも言われてるってことは、実際にそうとは限らないんですよね? まだ戻ってこれるという可能性も……‼」


『そればかりは私にも分かりません。ミンヤー族なら何か知っているかもしれませんが……』


「でも、俺の――知り合いに通行証みたいなので、地球とグラニデを行き来できる奴がいるんですけど、それは無理なのですか⁉」


『えっと、そんなこと私達には出来ないと思いますけど……。ミンヤー族の方でそのようなことができるのかも知れませんが』


「なら今すぐミンヤー族の村に行かなくちゃ……‼」


『ユウマさん。厳しいことを言いますが、それは無理でしょう。あなたには、今ロニがしようとしていることを止めなくてはいけないというやることがあるはずです。それが最優先ではないのですか?』


「……っ⁉ そうですね……。すこし動揺し過ぎました」


『いえ、無理もないと思います。もし私があなたの立場だったら、そうなっていたでしょうから』


「アフロディーテーさん……」

『話はこれぐらいにしておきましょう。あとはユウマさんが、決心するだけでしょうから……。どうです? 一緒に昼食でも』


「はい。いいですよ」


『それじゃ作ってきますので待ってて下さいね?』


「手作りなんですか⁉」

てっきりどっかの店で食べると思っていたけど……。


『勿論です‼ なにか希望はありますか?』


「なんでもいいですよ~~」


キッチンへと走っていったアフロディーテーさん。


俺は素直にイスに腰掛けて待っていることにした。



俺はどうすればいいんだろうか?

この世界に来て間もない時には、バカ神を恨んでいた。

なんで俺をこんな目に遭わせたのか? ってな。

だけど時間が経つにつれて次第に思いが変わっていった。

アクア、ルナ、レイン、セシル。

あいつらとアリアンスを組んで、合宿をしたり、ディオ先生に色々と教えて貰った。

そして初依頼をこなし、桐生と会った。ハーデスさんに助けてもらい、海に行ってみんなで遊んだりもした。

他のアリアンスとも戦ったし、ライとも出会えた。

ハイネ先輩やミレイユちゃんとも花園祭で親しくなったな……。


……ようするにだ。

この世界に長くいればいるほど、元の世界――地球に帰るのが辛くなってしまう。

またグラニデに帰って来ることは出来ないと言われているが、もしかしたら、時間が経てば地球から自由にグラニデに来れる日がくるかもしれない。


でも……そんなに長くは待てない……‼

そんなの何十年も先のことだろう。

だからあまり長くこの世界にいてはまずいんだ。

この一件が終わったら、元の世界に帰ろう。

帰りたくなくなる前に……。


『できましたよ~‼ ミートソーススパゲッティとフレッシュサラダです』


「おぉ‼ うまそうですね。いただきます‼」

『ありがとうございます。作ったかいがあります。いただきます』


俺は昼食をご馳走になった後、アフロディーテーさんと別れて宴まで仮眠をとることにした。

レインとセシル談笑中……


レイン「んっ? メールか?」

セシル「ユウマからだけど……」


『悪い‼ 6時30分によく俺達が飯を食べにいく店に来てくれ‼ 断ったら……ルナ様お手製料理の餌食となるだろう』


レイン「……はっははは」

セシル「なかなか笑えない話だね……」


続くかも……

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