2話「奴隷の少女」
「…ん…ここは?」
見知らぬ天井に困惑した少女が、あたりを見回す。
コンコン
扉がノックされる。
ガチャ
スープの乗ったお盆を持った白髪の少年が部屋に入ってくる。
「起きたか」
少年は聞いてくる。
「は、はい」
「まだ混乱しているみたいだな」
少年はお盆をベッド横のテーブルに置き、近くの椅子を寄せて座る。
「あ、あの……私、魔獣に襲われて死んだはずじゃ……」
少女は少しおどおどしながら聞いてくる。
「いや、死んではなかったぞ?出血が多かったから治療はしたけど」
「そう…ですか…ありがとうございます」
少女の表情が少し和らぐ。
「あぁそうだ、ほら、これ、さっき採った山菜で作ったスープ。うまいぞ」
少年はスープを渡してくる。
「い、いや、いただけません…」
「遠慮すんなって、ほら」
半ば強引に、少年はスープを手渡す。
「じゃ、じゃあ…おいしい…」
「よかった。まずいって言われたらどうしようかと」
「そ、そんなこと言いませんよ!」
少女は食い気味に、やや大きな声で言う。
「少しは元気が戻ったみたいだな」
「……」
少女は恥ずかしさで顔を赤らめる。
「さて、元気も戻ってきたことだし、なんであんなところで襲われてたんだ?普通、エルフの娘がいるような場所じゃないんだけど」
「そ、それは……」
「言いたくないなら強要はしないさ」
「い、いえ…お話しします」
少女はぽつりぽつりと理由を話し始めた。
「私、奴隷商で売られていたんです」
少女は震えながら話を続ける。
「それでこの国ではもうあまり売れないからって隣国へ移動している途中、あの魔獣に襲われて…ほかの奴隷の子もいたんですけど、私以外みんな殺されちゃって…必死に逃げていたら追いつかれて…」
「あぁ、だからか」
「こんな奴隷を家に入れるなんて嫌ですよね。私、すぐ出ていきますから…スープ、ごちそうさまでした」
少女は急いだ様子で部屋を出ていこうとする。
「行く当てはあるか?」
少年はそんな少女を引き留める。
「え?」
「行く当てはあるのかって、奴隷だから戸籍もないだろ」
「な、何とかします……」
少女は図星を突かれ、顔をしかめながら言う。
「何とかなるものじゃないだろ」
少年はあきれて言う。
「はぁ、じゃあ行く当てがないなら、見つかるまでここに住むっていうのはどうだ?」
「そ、それってどういう……」
少女は驚いた顔をする。
「そのまんまの意味だよ。仕事が見つかるまでここに住んでていいし、俺からは何も要求しない」
「い、いいんですか?私、奴隷ですよ……?」
少女は不安そうに確認する。
「奴隷、奴隷って…ちょっとこっちこい」
「で、でも…」
「いいから」
少年は少女を自分の隣に座らせる
「奴隷紋、どこ?」
「ここですけど...」
少女は不思議そうに着ている服を少しずらし右肩の印を露出させる。
少年は少女の右肩にある呪印を確認し、手をかざす。
すると印はほどけるように消えていく。
「奴隷紋が…消えていく…?」
少女は目を丸くする。
「これでもう奴隷じゃないな」
少女の瞳から涙が溢れる。
「もう...耐えなくていいんです…か...?」
「ここに君を傷つけるようなやつはいないさ」
「本当に...ありがとう...ございます...」
「じゃあ名前も知らないまま生活するのもあれだし、自己紹介でもするか。俺はアラン・バラクーダ。これからよろしく」
アランは手を差し出す。
「リ、リヴィアです」
リヴィアは涙を拭くのをやめ、差し出された手を強く握り返す。
「あ、あと敬語はやめろよ。これから一緒に住むのに堅苦しいから」
「分かりまし……わかった」
「急に言われても無理だよな。これから直していけばいいよ」
こうして奇妙な関係の二人の新しい生活が始まるのであった。
第二話、読んでいただきありがとうございました。これから面白くなっていきますので次回以降を楽しみにしていただけると嬉しいです。




