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魔女狩りの少女  作者: 染賀侑李


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22/23

朧気

 ヒカルの家庭は生まれたときから捻れていた。ボロアパートの一室で父は母にDVをして、金を巻き上げ、その金でパチンコに行く、そして負ける、勝っても浮気相手の元へ向かう…そして巻き上げる金がないと私にも当たり散らし、酒を飲み、酔った勢いで一緒に寝ることもあった…いや、無理やりか。

 そんな父だったが母も母でおかしかった。母は私が13の時に新興宗教にハマりお布施と言って家のものを売り払い、私の私物も売り払い、パートで稼いだ給料もほぼお布施に費やした。そして口癖は「あんたなんか産まなきゃよかった」と「あなたも救われたいでしょ?」だった。なんならその言葉以外で母の声を聞いた記憶がないくらいだった。

 ヒカルは学校に行けるはずもなく、いつも父のサンドバッグやそういったものの処理をさせられていたり、世間の闇の人たちと絡み喧嘩に明け暮れていた。

 だがそんなヒカルにも幼馴染の男がいた。その男はいつも明るく、運動神経がとても良く、勉強はちょっと出来ない、そして何より底抜けに優しかった。当時15歳のヒカルは思う、『この人となら連れ添ってもいい。』

そのような事を思い、『こんな私にも輝いた未来があるかもしれない、いやある!』彼女は確信した。

 しかしその確信は崩れることになる、16歳の誕生日にヒカルは魔法少女にされた。そこからは血の雨に降られる日々で、家に帰らずホームレス生活をしていた。

 殺し、殺し、殺す…ただそれだけを繰り返す日々、そんなある日、ヒカルは彩葉に出会った。

 いつも通り殺そうとする、しかしその時なぜか彩葉が穏やかで優しそうな表情をしていることに気づいた。ヒカルは攻撃しようとするのを止め対話を試みる。

「私なら、あなたを呪縛から解放してあげられるよ?」

彩葉のその言葉にヒカルは体を委ねた。正直疑いがないわけではなかったが、『もし本当だったときもしかしたら、私を覚えていたら、まだ彼といられる…』そんな事を考えるとヒカルは自然と彩葉の言葉を受け入れた。

 次の日ヒカルが目を覚ますと刻印は残っていたが呪縛特有の倦怠感や閉塞感はなく、スッキリとした気分だった。

 それからヒカルは礼としてそれまで戦闘は素人だった彩葉に戦闘技術のイロハを叩き込んだ。柔道、空手、ムエタイ、システマ、ブラジリアン柔術その他諸々…鬱憤晴らしが喧嘩しかなかったヒカルはそこそこ武術ができた。教え方が良かったのかものの数週間で彩葉をかなりの腕に仕上げ純粋な戦闘技術も上位のものとした。

 そしてヒカルが久々に実家に帰ると鍵を開ける前から何か嫌な予感がした。鍵を開けるとそこには腹を切られたのであろう、内臓をぶちまけ腐った父と、父の返り血であろうか、手が赤黒く染まったまま首を括って今にも腐り落ちそうになっている母がいた。

異臭からだろうか、それともその空間の異質さからだろうか、ヒカルは呼吸ができずにその場に立ち尽くした。すると母の首が腐り落ち、体は地面に落ちると同時に崩れ、顔はヒカルの足元に転がった。

 ヒカルはその空間を飛び出した。吐き気を催したから?実の父と母の凄惨な亡骸をこの目で見てしまったから?私がいない間になったことだから関係ないと思ったから?どれも正解でどれも不正解、もう訳が分からなくなっていた。

 どこへ行くのかも決めずに走って走って走って走り回って、ヒカルは河川敷の階段でうずくまってうなだれていた。

 その時、背後からヒカルを呼ぶ声がした。振り返るとそこにいたのはランニングをしていた幼馴染の彼だった。ヒカルは姿を見るなり彼に抱きついた。

「ヒカル久しぶり…ってどうした?!」

自然と涙が溢れ、顔をぐちゃぐちゃにしながら事の顛末を話した。魔法少女の事、両親のこと、その全てを話した。彼はひたすら静かに、ヒカルの頭を撫でながら話を聞いてくれた。それがその時のヒカルにはこれ以上ない助けになっていた。

 満足いくまで泣き腫らしたヒカルが彼に家に行っていいかと聞く、その突拍子のない言葉に彼は目を丸くしてから快く承諾する。

 彼の家に帰ると彼の両親が温かく迎えてくれた。

「あらヒカルちゃん!久しぶりねぇ!こんなにおっきくなって…ってどうしたのよその顔!目が真っ赤じゃない!まさか祐希!あなた…!」

「女の子泣かすだなんて…!俺はそんな男に育てた覚えはないぞ!」

「やってねぇよ!」

私の口からも否定する。

 ダイニングテーブルに半ば強制的に座らされてご飯を貰う。その日のご飯はビーフシチュー、今まで食べたどんなものよりも美味しかった。

読んでいただきありがとうございます!過去編って書くの楽しいですよね

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