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到着、グリンヴェール

 あれから2日ほど経った。もはや野宿も慣れたもので、物資を用意しすぎたかと思うほど。しばらく植物は見なくていいな、と考えてしまうほど森の中にいたが、遠くに人工物らしきものが見え、喜びのあまり叫んでしまった。


「あれってまさか!」

「やっと見えてきたわね。外壁があるからわかりやすいというか」


 グリンヴェールの町。有名な遺跡群があることぐらいしか情報がないが、シエルの町よりも少し大きく見える。遠くに建つあの壁は、きっと魔物から町を守るためにあるのだろう。

 石で出来ているのか、どうにも異国情緒が溢れているというか。そもそも、壁がある時点で変わっているんだけど。


「このままだと、遅くても夕方には着きそうですね。ふう、まさかこんなに村から離れるなんて」

「……スキル鑑定を受けるだけだったのに、連絡もせずに大丈夫なんですか?」

「それはご心配なく。私、立派な冒険者になるまでは帰らないって言ってあるので」


 18歳を機に独り立ちか。現に、初めての護衛依頼を達成できそうなんだから、順調に事は進んでいる。この町で経験を積むことになるのかもしれない。


 小さなカラスの鳴き声が聞こえ、空を見上げる。ここまでで魔物に襲われたのは、あの夜の一度と、次の日の昼間に一度だけ。しかし、上空を飛ぶ巨大カラスは何度も見かけた。あれが全部襲ってきたら、もっと大変な旅だったかも。

 空高く飛んでいるから正確な大きさはわかっていないけど、僕の上半身ほどの大きさでも十分怖い。


 ここからは町に近くなるため、逆に魔物が少なくなっていくらしい。未熟な冒険者たちが階段を上るため、弱い魔物は数を減らしているそうだ。うーん、確かに武器を持った人を見かける回数も増えてきた気がする。


 やっと歩きなれてきたというか、体力もついてきた。最初の2日はひどい筋肉痛だったが、今はしばらく歩くぐらいではなんともない。平坦な道が続いたというのもあるが、一番は「痛かろうが歩きなさい」というスパルタな指示のおかげかも。


 徐々に大きくなっていく町の外壁。いつ森を抜けるのかと待っていたが、結局抜けることはなさそう。外壁は森を遮るように建てられているからだ。

 いくつかの分かれ道が、僕たちの歩いている道へ合流する。重そうな荷物を背負った人が増え、半分ほどが同じ方向へと進んでいた。


「ふう、ようやくね。ここが南門よ」

「おお! 大きい!」


 シエルの町と違い、外壁の中に大きな門があった。かなりの高さがあるが、開閉するのもあって無茶な大きさではない。それでも、町を守る壁という建設物は新鮮に感じる。


 しっかり門は開かれていて、そこに近づくにつれ、人の声で騒がしくなってきた。大半の人が門を出てすぐ西に向かうのが気になり、この町に来た経験のあるシルフィーナさんに聞いてみる。


「南門から遺跡に向かってるだけよ。有名なだけあって、西門は王都からの観光客や冒険者が多いの。もう南から出た方が早いのかもしれないわね」

「お祭りみたいになってるじゃないですか。気になってきますね」

「遠くから見る分にはいいけど、近くは魔物まみれよ」

「……やっぱりやめときます」


 あくまでこの町は中間地点、目標はもっと北にある大聖堂だ。ちょっとぐらいは観光してもいいかもしれないが、金銭面で不安が残る。つい、財布(と呼んでいる小袋)の重量を確認してしまった。


 壁を見上げすぎて首が疲れてきたが、門をくぐると首をまっすぐに向けても町並みが見える。建物の雰囲気はシエルとそう変化はないものの、出入口からすぐ寄れるためか、飲食店や雑貨屋などのお店は色々とあった。

 どこか寄りますか、なんて声をかけようかと思ったが、早歩きで進むシルフィーナさんには言い出しにくい。未知の町に目を輝かせるセラさんをみて、自分と同じ感情を抱いていることに安心する。


「とにかく依頼! 覚えときなさい。依頼さえ終わらせたらこっちのもんよ」

「ないんですか! サービスは!」

「欲しけりゃまた依頼しなさい。……まあ、案内ぐらいはしてあげるわ」


 彼女の意図が読めた。とりあえず依頼を成功させるため、冒険者協会へと急いでいるのだろう。トラブルが起きる前に完了させるってことかな。そうそう起きないとは思うけど。

 

 南西と北東に協会の支部があるらしく、町の大きさと需要の多さが(うかが)える。そこまで観光はお預けか。はぐれないように注意しつつ、ずんずんと歩くシルフィーナさんについていく。


 なんというか、町の匂いがちょっと独特になった気がした。シエルの町よりも、生活感があるというか、クセがある。もしかして、冒険者の多さが関係してるのかも。

 そして、道を歩いていると妙に目立つことが気になった。二度見されるぐらいなら前にもあったけど、僕を見て何かこそこそと会話しているのが見える。雑音が多くどうにも聞き取りにくいが、耳を澄ましてどうにか聞けないか試す。


「あれ、なんだったっけ。案外早く見つかったんだな」

「金貨はあの嬢ちゃんたちに行くわけか。くぅ~っ、俺も楽したかったぜ」


 悪い視線ではない、と直感で悟った。どちらかというと、珍しい動物を見るような目に近い。どちらにせよ、いい気分ではないな。

 見られたくないし早く着かないかな、と思うが、そう思えば思うほど時の流れは遅い。結局、縮こまる僕を挟むようにしてもらい、しばらく歩いた。2人も僕に向かう視線に気が付いたが、心当たりはないらしい。


「女2人に挟まれて歩くなんて、いい身分ね」

「今はそれどころじゃないっていうか。えっ、だから見られてるんですか」

「冗談よ。ほら、あの建物がそう。酒場はないけど、結構広いのよね」


 その知らせに、ほっと一安心。しかし、建物に近づいていくにつれ、より視線も集まってくるような。冒険者が僕を見てくる、気がする。薄々感じてきたが、僕に関連した依頼があるのかもしれない。……いつの間にか賞金首になっているとか、ないよね?


 一抹の不安を振り払うように、軽く頬を叩く。建物には裏口もあり、そこでも依頼などの受付をしているようだ。人が集まっているなら、きっと何かわかる。そう考え、協会の裏口を通った。


 部屋の奥に階段が見えるが、まさしく依頼に関するやり取りを行うだけの場所。天井は高いが、受付と待機列の分のスペースしかなく、窮屈さはある。

 数人の冒険者が手続きをしていたので、列に並んで待った。真面目そうな男性が受付に立っている。心なしか、仕事ができる雰囲気を感じるというか。これからもっと人が多くなるのかも。ラッシュに間に合ってよかった。


「護衛依頼、無事に完遂したわ。確認をお願い。ほら、セラもこっちに来て」


 テキパキと作業を進める。字が読めないので内容はわからないが、はっきり感じたのは、受付のお兄さんが後ろの僕を見たということだ。何か知っている。2人が外に出ていく前に聞かないと。


「お連れの方は、チヨリさんでしょうか? そちらの依頼についても手続きいたしますが」

「その話! 詳しく聞かせてくれませんかっ」


 まさか向こうから自分の名前が出るとは思わず、セラさんたちに割り込むようにして身を乗り出す。何も知らないことを察してか、簡単に説明してくれた。


「チヨリという方を探してほしいという依頼を先日協会で受け付けまして。なんとも、盗品を取り戻してくれたことにお礼をしたいそうなんです」

「ええ!?」

「人探しに対して報酬は金貨1枚。仕事のついでにと冒険者の皆さまが捜索されているところだったのですが……」


「シルフィーナさん。人探しで金貨1枚ってどうなんですか」

「破格といえば破格ね。詐欺を疑わないギリギリのところをついているというか。まあ、貰えるなら貰っておくわ」


 本人確認なんかはどうするんだろう、と思ったが、黒髪でチヨリという名前、それに恰好から本人だろうという認定がなされた。いいのか、それで。確かめる手段がそれぐらいしかないのかもしれないけど。


「チヨリさんにはこちらの地図に示した場所へ来ていただきたい、という依頼内容でして。こちらをどうぞ」


 彼はシルフィーナさんに金貨、僕に地図を渡す。僕のことを知っているのは誰だろう? 疑問に思いながら、ちらりと地図を見た。

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