第一話
この世界が“戻せる”と知ったのは、皮肉にも、最も“後悔していた夜”のことだった。
北条圭介は、自室の机に突っ伏していた。
スマホの通知音も、家の外のざわめきも、すべてが遠い。
誰かを傷つけたことに、ほんの少しの罪悪感と、
それ以上に濁った満足感が胸に沈殿していた。
「正義なんて、所詮は強者のための言葉だ」
そう呟いた彼の目の前に、突然それは現れた。
《24H REPLAY》
見慣れないアイコン。無機質なUI。
不気味なまでに静かな“招待コード”。
使用条件:選ばれし者
記憶を保持したまま、24時間前へリプレイ可能
使用制限:一度のみ
北条は笑った。
「面白いじゃないか。過去を変えられるなら、もっと“うまく”やれる」
彼の最初のリプレイは――
ある少女を、陥れるためのものだった。
結果は成功。
クラスの空気は変わり、彼の“支配下”に置かれた空間が完成する。
けれど、そこからが地獄の始まりだった。
“夢中で弄ったピースが、やがて自分を切り刻む。”
アプリは、ただの道具ではなかった。
それは“観測者”を選び、記憶を記録し、“次の段階”へ進ませるための“試験機構”だった。
彼の前に次々と現れる、他の使用者たち。
そして――“あの日死んだはずの少女”が、再び目の前に現れた。
彼女の名は、椿玲奈。
彼はまだ知らなかった。
《24H REPLAY》の“最初の被験者”が、彼の手によって選ばれていたことを。
そして彼自身が、やがて“記憶の牢獄”に閉じ込められていく運命であることも――。