プロローグ
――かつて、魔界は静かに安定していた。
だが、ある日を境に、その均衡は崩れ始める。
現れたのは、“歪み”と呼ばれる異形の穴。
魔力は失われ、悪魔たちは次々(つぎつぎ)と姿を消していった。
選ばれたのは、一人の見習い悪魔――
名は、ぴーま。
これは、未熟な少女が世界の命運を背負い、
知られざる冒険へと歩み出す、はじまりの物語である。
漆黒に染まる空間に、重々(おもおも)しい足音が響いた。
玉座の間──そこは魔界の支配者、魔王コルソンが静かに座す場所。荘厳なオルガンの旋律が流れ、赤黒の装飾に囲まれた広間が、その威厳を物語っていた。
魔王コルソンは鋭い眼差しで前方を見据え、重く低い声で口を開く。
「先輩悪魔たちの失踪──その調査の結果、『歪み』が原因であると判明した。……だが、このままでは魔界の均衡が崩れる。何か、手を打たねばならぬ。」
玉座の前で控えていたのは、悪魔学校の校長。深くローブを纏い、古文書の束を手にしていた。
「はい、魔王様。歪みを止めるには……人間を“生贄”として捧げる必要があるという結論に至りました。
ただ、実行の際は、我が学園から要員を出すという名目のもと──『卒業検定』の形式を取るのが望ましいかと。」
その言葉に、コルソンは眉を潜める。眼差しに、躊躇いの色がにじんだ。
「……生徒たちを犠牲にするのか。……だが、それが最善の策であるならば、やむを得ぬか。」
校長は申訳なさそうに視線を落とし、声を潜めて告げる。
「しかし現在、我が学園も人手不足で、生贄を確保するために人間界へ赴ける悪魔が……おりません。このままでは、実行は困難です。」
コルソンは静かに目を閉じ、思案に沈む。
「……ふむ。ならば、幹部たちに相談しよう。誰か適任者はいないか……」
──数日後、玉座の間には、魔界の幹部悪魔たちが集結していた。
広間に並ぶのは、鋭い眼光を持つ男・バロック、そして仮面を被った妖艶な女・カーニャ。
彼等の前に立つコルソンの気配は、以前にも増して重く、威厳に満ちていた。
「……バロック、どうだ?」
問われたバロックは、苦悶の表情を浮かべながら答える。
「申訳ありません、魔王様。歪みの影響により、現場に赴ける悪魔はごくわずか。ほとんどの戦力は、もはや機能しておりません。」
続いて口を開いたのは、冷ややかな笑みをたたえたカーニャだった。
「……我々(われわれ)も調査を進めましたが、歪みにより魔力の減衰が進行しています。
このままでは、人間界に干渉することすら困難かと……」
コルソンは静かに頷いた。だが、その視線はどこか遠く、何かを探るようだった。
「……他に、候補はいないのか?」
沈黙が流れた。やがて、カーニャが口元に薄い笑みを浮かべる。
「……まさか、あの“見習い”を?」
その言葉に、バロックは一瞬だけ視線を逸らし、唇を噛んだ。
「……ぴーまです。あの子なら、歪みの影響を受けにくい可能性があります。」
その名を聞いた瞬間、コルソンの眼差しがわずかに揺れた。
彼は静かに立ち上がり、漆黒のマントを翻す。影が床を這い、部屋全体を覆い尽くしていく。
「……未熟で、実力も不安定……。だが、あの子には“何か”がある。
たとえ危険でも──今は、それに賭けるしかないだろう。」
ぴーまですっ!ここまで読んでくれてありがとーっ✨
なんかすっごく大変なことに巻き込まれてる気がするんだけど……まぁ、なんとかなるよね!たぶん!たぶん!!
え、魔王様、マジであたしに任せる気なんですか!?ひぇ~~っ!!
次は人間界……ちゃんと行けるかなぁ?
ドジって転ぶ未来しか見えないけど、よろしくお願いしますっ!