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静岡、三島での犯行(後編)

林田さんの車の助手席に乗りこみ、発進したところで雑談は始まる。

人気のないところに誘導するには美彩との関係を兄妹関係はウソで恋人関係であると言えば特に警戒心は持たれなかった。

目的地に着いたところで、林田さんは冗談っぽく言った。


「車内でHされたら困るけど、キスくらいならどうぞ自由に」

そう言う彼女が本を読み出したところ、柳刃包丁を新聞紙から剥がし取り出した。

俺は彼女の肩をポンと叩いた。

「NPOの理事かなんだか役職はわからないが、たんまり金もらってるんだろ。命乞いならいくらでも聞いてやるから話してみろ」


「あなたに私の命が奪えるの? 確かにそれなりな給料はもらってる。だけれどいくらかは寄付しているわ。そうね、この読みかけの本を読み終えたら殺されてもいいわ」

にわかには林田の言動が信じ難かった。

時間稼ぎをして、警察を呼ぶかパトロールが来るまで待とうというのか。


「本当にその本を読み終えたら殺されるんだな?」

「ええ、私を殺せるものなら殺してごらんなさい」


なぜこの林田真希はこれから殺されるというのに平然としているのだろう。


「なぜ私を殺すことに決めたの? 快楽殺人? 無差別殺人?」

「連れの美彩がシリアルキラーに惹かれる女の子なんです。だから俺は彼女に気に入られたいがためにやってるんです」

「なるほど。歪んだ愛だけれどそれも1つの愛のカタチなのかなあ」


約1時間後。

林田は本を読み終えたらしく、俺に声をかけた。

「さあ、あなた私を殺すんじゃなかった?」

「ああ。ぶっ殺してやる」

柳刃包丁を手に構え、震える手を感じながら俺は林田の首めがけて包丁を振り下ろした。


「神よ、この者の罪を赦したまえ。ぐげぇぇ!」

そう言いながら林田は俺に刺された。

説諭をされそうで怖くて何度も彼女の胴体も刺した。

心臓が左胸か右胸のどちらにあるかなんて学のない自分にはわからないから、とりあえず両胸をメッタ刺しにしておいた。


30代くらいでまだ未来はあった林田さんを手にかけるのは正直良心が傷んだ。

でもここで殺人を重ね続けないと美彩ちゃんに嫌われるかもしれない。

それだけは死んでも嫌だ。

血まみれの運転席を眺めながら、善人を殺すのはしのびないなと思った。




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