光の正体は
なんだ? 一体、なにが起こったのだ?
図書館に居たはずだが、意識が先ほどの光の中にある。
この感覚は……。まさか……魔法なのか?
やがて、その意識の中の光が収まった。
意識を集中させるとそこには、銀色の外套を纏ったひとりの男が立っていた。
その男は、俺と同じ碧眼を持っている。
優しそうな表情はしているものの、その表情の裏には、とてつもないチカラを秘めているのが、ひしひしと伝わってくる。
そしてその男は、力強い視線を俺のほうへ向けている。
「これは、操作系魔法の一種で〈封印解除〉という魔法だ」
男は俺に近付きながら、そう言った。
どうやらこれは魔法らしく、この男は実体ではないようだ。
「操作系魔法だと? 聞いたこともないな。なんだ? それは」
目の前にいる銀色の外套を纏ったその男が誰なのかよりも、見たことも聞いたこともない魔法が存在していることに興味が湧いてしまい、自然と口角が上がっている俺がいた。
「今の世界でこの魔法を扱える者はほぼいない。現在では使用が禁止されている古の魔法なのだ」
古の魔法か。ふっ、面白いな。
だが、気になることがある。
「どうして使用が禁止されている?」
「操作系魔法は、この世の理をも変えてしまう恐れがある魔法だ。時間を止めたり、遡れたりも可能にしてしまうがゆえに、世界を操作してはならないとのことから使用が禁止されたのだ」
思った通りだ。
禁止になったのも〈大きなチカラ〉が働いてるからだろう。
「なるほど。操作してはならないというより、操作されては世界に潜んでいる〈大きなチカラ〉が困るといったところだろう? だから禁止した。違うか?」
男は一瞬、俺の発言に驚いたように目を丸くしたが、次の瞬間には大きく笑い出した。
「はっはっは! やるじゃないか。この世界を知る術がほとんど無いというのにも関わらず、よくぞその発想に辿り着いたものだな!!」
そう、そこだ。俺が知りたいのは。
あらゆる本が集まるという図書館なのに、世界のことを知る書物があまりにも少なすぎる。
「面白い。カーザ村の図書館に〈封印解除〉を施しておいたのは、どうやら正解だったようだな」
満足そうな顔で男は俺を見ている。
この男がどこまで知っているのか、聞いてみる価値はありそうだな。
「この世界が誕生してから幾億という年月が経っているはずなのに、なぜ過去の記録がまったく残されていない? そして、そこに対し疑問を抱く人がいないというのも妙に引っかかる」
あの老婆しか知らんが、長年この世界を生きてきている者が疑問を抱いていないのだから、他の者がこのことに対し疑問を抱くとは到底思えない。
「ふむ。お前は、明らかにこの世界が不自然すぎるとでも言いたいのか?」
「あぁ。なぜ、誰もなにも感じないのだ? おかしなところばかりではないか」
そう。まるで、なにかに操られているかのように。
この気持ち悪い感覚は俺だけなのか?
そもそもこの世界は、誕生してから幾億もの年月が経っていないのか……?
しかし男は俺のこの複雑な思いを一蹴するかのように、あっさりと一言で返してきた。
「それが、この世界だからだ」
どうやら、この男に聞いたのが間違いだったようだ。
そう思っていたのも束の間、男はまた予想外の返しをしてきた。
「自分がおかしいんじゃないか? この感覚はなんだ? 気持ち悪い。お前はそう思っているだろう」
ほう。俺の言いたいことは伝わっていたようだな。
俺は無言で頷き、男が続ける。
「お前がそう思うのは至極当然なのだ。そう世界が創られているんだからな」
ん? 伝わっていなかったのか? それとも、俺が理解不足なのか?
この男は〈封印解除〉を使って、俺になにを伝えようとしてるのだ?
「困らせてしまってようだな。すまなかった。さて、レインよ、そろそろ本題に入らせてもらうぞ」
困るというよりも、俺が無知すぎて理解が追いついていないといったほうが正しいだろう。
それにしても……俺の名前を知っている? 一体、この男は何者なんだ?
とりあえず、その本題とやらを聞けば、なにか得るものがあるかもしれないな。
「純粋なアールスヘイムの血を引く者は、お前と同じように世界に対して疑問を抱いてきた。そして、その世界に挑み続けているのがアールスヘイムなのだ」
ほお、アールスヘイム、か。
俺の名前は〈レイン・アールスヘイム〉だ。つまりは俺の血族の話ということか。
「世界がおかしいと気付くのは、アールスヘイムの血族だけだと言うのか?」
男は俺の問いに対し、首を横に振る。
「いや、アールスヘイムだけではない。もうひとつの血も長い年月、同じ道を辿っている。どういうわけか、このふたつの血はこの世の理から外れているらしいのだ」
らしいだと? 明確な答えは出ていないということか?
あるいは、この男には言い切れない理由があるのかもしれないな。
しかし、操作系魔法のような古の魔法だけではなく、俺ともうひとつの血族、血までがこの世の理から外れているとはな。
となると、こういう考えにもならないか?
「まるで、俺とそのもうひとつの血族が世界の異物のようにも聞こえるが?」
俺のこの言葉に、男は眉をピクッと動かした。
これは肯定と解釈しても良さそうだな。
俺がこの世界の理から外れた異物? 面白いではないか。
くつくつと笑いながら、俺は続けた。
「それで? 挑み続けていると言ったが、アールスヘイムは一体、なにに挑んでいるのだ?」
「相手は〈秩序〉という、人のようで人ではない存在だ。我々はそやつを〈秩序〉と呼んでいる」
ほう。そんな存在は歴史書に記されてなかったな。
やはり隠していたということか。それに……。
「そやつが存在する限り、意のままに世界は創られ、寸分の狂いもなくただ動き続けるのだ」
なるほどな。操作系魔法を嫌うのもそのためか。
その〈秩序〉とやらがこの世界を支配している限り、なにも起こさせないというわけだ。
だから人々は世界に対し、なにも疑問を抱くことはないし、おかしいと感じることすらない、か。
ふん。つまらん世界だ。
俺がすべてを変えてやる。
操られたように日々を過ごし、そのことにすら気付かずに生きるなんて、とても自由とは言えないな。
とても気分が悪い。
しかし、この気分の悪さもアールスヘイムの血だから感じることであって、まったく理解されないのだろうな。
「ふっ。この世界を私物化するなんて、よっぽどその〈秩序〉とやらは強欲なようだな。もっとも、人ではないのなら、私物化という表現は間違っているかもしれないが」
「そうだな。その表現は適切ではないかもしれないが、そやつはこの世界を完全に私物化している」
「挨拶くらいはしておきたいものだな、その〈秩序〉とやらに」
不敵な笑みを浮かべ、俺は言った。
しかしこの発言に対し、男は碧眼に魔力を込め、過剰に反応する。
「お前にはまだ早い! 村から一歩も出たこともないお前は、この世界では赤子同然だ!!」
なんだと? 俺を赤子扱いするとは、なかなかに気分が悪いな。俺のなにを知っているというのだ。
それに、俺がまだ村を出たことがないことを、なぜこの男が知っている?
しかし、おかしい話だな。長い年月そいつに挑み続けているというのも疑問だ。
そんなに強大なのか? その〈秩序〉とやらは。
先ほどのこの男の表現からして、もしやとは思うが……。
「どうして、未だにその〈秩序〉とやらを滅ぼせていないのだ? 滅ぼせないのも、そいつが意のままに操作しているからだと言うのか?」
一瞬、男は黙った。
碧眼に込められた魔力が消え、悔しそうな表情を浮かべ、こう答えた。
「そうではない。アールスヘイムのチカラでは、そやつを滅ぼせないのだ……」
銀色の外套を纏った男の正体とは……!?
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