魔法対決
俺からの突然の申し出に驚くアミナ。
得意の騒がしい顔は、目が点で、口をあんぐりとさせている。
「はあぁ〜っ? なんでアタシがあんたと勝負しなきゃなんないのよぉっ!?」
「その大魔導士とやらの血を継いだ者の魔法が、どれほどのものなのか気になったものでな。なに、ちょっとした好奇心だ」
まぁ、アミナから感じ取れる魔力からして、俺が勝つのは至極当然なのだが。
「それに、大臣をブッ飛ばすために日々修行していたのだろう? その修行の成果とやらを見せてもらおうと思ってな」
アミナは俺の発言が気に食わないようで、ムスッとした表情を浮かべている。
「ていうか、あんたってなんでそんなに偉そうに話すのよ?」
「なにを言っている? 俺は偉くなるつもりなど微塵もないぞ?」
「はあぁ〜っ!? アタシのこと、バカにしてんのっ!? なんでそんな上から目線で話すのよって聞いてるんですけどっっ!!」
「バカになどしていない。俺は偉そうに話すということと、その上から目線で話すということがどういうことなのか、ほんとうにわかっていないのだ」
俺は嘘など言ってはいない。ただ素直に事実を述べただけだ。
ムスッとしたのも束の間、呆れたような表情で「はぁ〜……」とため息をつくアミナ。
「なんなのよ……。あんたと話してると、ほんっっっと調子狂うんですけどっ!!」
「調子が狂うだと? 俺は単純にお前と魔法で少し遊んでみたかっただけなのだが?」
「はいはい、わかりましたよ。でも、今の言い方はちょっと気に入らないわね」
諦めたように返事をするアミナだったが、同時に彼女の魔力が膨れたのがわかった。
そして彼女は続ける。
「アタシと魔法で遊びたいって言ったわよね!? その言い方って、まるで俺のほうが強いって言ってるようにも聞こえるんですけど??」
「なんだ、わかってるのなら良いではないか。不満なのか?」
少しずつアミナの魔力が膨れていっている。
「当然じゃない!! やってもいないのに最初っから下に見られるなんて、そんなの誰だっていい気はしないでしょ!!」
さて、少し煽ってはみたが、アミナから中級以上の魔法を拝むことはできるのだろうか?
「ねぇ、メナスっ、なんなのよコイツ。こんな偉そうな態度してるけど、そんなに強いわけぇ?」
どうやら彼女は納得がいっていないようだ。
気にしていないとは言ったものの、魔導の血を引く者として、魔法で負けるわけがないという高いプライドがあるのだろう。
そんな彼女の問いに、メナスは真剣な眼差しで答える。
「私は、レイン様が幼き頃からずっと側で成長を見守ってきましたが、日々の修行の中で魔法を行使している姿を見せることはありませんでした」
思ってもいない返しがきたようで、アミナは無表情になっている。
「ですが、つい先ほどこのクリーディアに来る際、レイン様が初めて私の前で魔法を行使したのです。その魔法が〈空飛行〉でした」
これまた関係のない返しだと言わんばかりに、アミナは無表情のままだ。
しかし、そんな空気を読みとることもなく、メナスは手に握っている槍を軽く掲げ、さらに続けた。
「そして都を歩くにあたり、この槍が目立つからということで、レイン様は魔法が使えない私に対し〈空間収納〉を展開してくださいました」
「あのねぇ〜……。あんたの想い出話なんて聞いてないのよっ!! レインは強いの? 弱いのっ? どっちなのよっ!?」
そう言いながらアミナは〈空飛行〉で体をフワッと浮かせる。
呆れたような顔つきで、こんなの誰でもできると言わんばかりだ。
まぁ、実際に〈空飛行〉は移動系魔法の中では最も簡単な魔法だからな。
こうして目の前にも使える者がいる。俺が使った時メナスは驚いていたが、今ならあの驚きようにも納得できる。
残念だが、メナスは魔法のことに対し、父親から聞かされていた話はすべて嘘だったということだ。
魔法のこと以外にも、なにか間違った情報を吹き込まれている可能性も考えられる。
「もっ、申し訳ありませんっ! あまりにもあの瞬間が嬉しかったもので、つい……」
先の問いに答えるべく、メナスは凛々しい顔になりアミナに力強く言った。
「はっきりと申し上げます。残念ながら、あなたはレイン様には勝てません」
とても良い表情をしているな。
自身に魔力が溢れたことで、俺のチカラをさらに感じ取れるようになったのだろう。
「なっ……。なんなのっ!? 二人して、アタシのことバカにしてんのっ!?」
「いえ、私は事実を述べたまでです」
メナスはアミナのことを決して煽っているわけではない。
俺のことを信じ、俺のほうが強いと確信しているからこそ言っているのだ。
メナスが放った言葉の直後ーー
ゴゴゴ……と、地面が震え、アミナの魔力がさらに膨れ上がった。
「ふーん。そう。いいわっ。だったらあんたが〈勇者〉なのか〈優者〉なのか、見させてもらおうじゃない」
ほう? これはなかなかに興味深いことを言ったな。
アミナ・エクスウェル。少しは歴史を知っているとでも言うのか?
それとも……。
「どうやら、少しは遊んでくれる気になってくれたようだな、アミナ」
「ふんっ。メナスからあんなにハッキリと言われるなんて思わなかったけど、だからって勝負を断る理由になんてならないでしょ?」
そう言ってアミナは拳をグッと握る。
血の気の多い女だ。ますます気に入った。
一人で世界を歩くより、こういう仲間がいても面白いかもしれないな。
「そうか。では、俺は右手だけで相手をしよう。俺の右手以外を少しでも動かすことができたのなら、アミナ、お前の勝ちで良い」
俺の言葉が挑発だと思ったのか、さらにアミナの魔力が膨れ上がる。
彼女の性格からして、次になにを言うかなど想像に難くない。
「ちょっとっ! アタシのこと、バカにするのもいい加減にしなさいよねっ!!」
やはり、思った通りの返しであった。
その返しをしながら、すでに彼女は魔法陣を展開していた。
「風よ吹き荒べっ!! 〈陣風〉っっ!!」
強風を巻き起こし、まずは視界を遮るといったところだろう。少しずつその風は俺に近付いてくる。
その程度の風で俺の視界を遮ることができると思っているのか? だとしたら、考えが浅すぎるぞ。
「良く見ておけ、メナス。魔法の戦いというものを。この先、必ずお前の役に立つ」
承知しましたと、メナスは頷く。
俺は右手の小指で魔法陣を展開する。
彼女の放った〈陣風〉が俺に当たろうかというギリギリの瞬間に、俺は小指で魔法を放った。
「〈陣風〉」
俺の放ったやさしい風が、彼女の風をあっさりと打ち消した。
しかし、打ち消しただけではなく、俺のやさしい風はまだ消えていない。
そして俺はアミナの反撃を予測し、右手の親指で魔法陣を展開する。
俺の〈陣風〉はアミナのほうへ進んでいく。
さぁ、どうする?
「信じらんない……。そんな風のどこにそんなチカラがあるっていうのよ。どうやら、遊びって言っただけのことはあるようね。じゃあ、これならどうかしら?」
アミナは両手で少し複雑そうな魔法陣を展開した。
ほう。どうやら中級魔法は使えるようだな。
「これであんたが吹っ飛んでも助けてあげないんだからねっ! 〈強竜風〉っっ!!」
アミナの放った魔法で、演習場に竜巻が発生した。
その数、五本。
俺の放った〈陣風〉は、瞬時にその竜巻に喰われ、消滅した。
しかし、俺は彼女が〈強竜風〉を放ってくることなどわかっていた。
右手親指で展開していた魔法を放った瞬間、バシューンっと音を立て、彼女が放った五本の竜巻を一瞬にして打ち消したのだ。
「へぇ〜。あんたも中級魔法を使えるのね。やるじゃない」
アミナはそう言いながら、服に付いた土埃をパンパンっと払い落としている。
まだまだ余裕といった様子だ。
「中級魔法だと? なにを言っている?」
「はぁ〜っ? なにって、アタシの〈強竜風〉を相殺するのに、あんたも今〈強竜風〉を使ったじゃないっ」
「なにを言っている? アミナ、お前の目は節穴か? 残念だが、俺が使ったのはただの〈陣風〉だ」
俺の言葉を聞き、彼女は得意の顔になった。
得意の顔とはつまり、目が点になり、口をあんぐりさせているということだ。
ふっ。
どうやら余裕も焦りすらも通り越して、すっかり驚かせてしまったようだな。
観葉植物を愛でることに夢中です!!笑
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