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第9話 誰が脳筋だ

「ダメです、サブギルドマスター。認められません」


 若い女性がきっぱりと言う。


「え、何でだよ? こんなケース、滅多にねぇんだから面白いじゃねぇか」

「面白いかどうかで決めないでください」


 その女性は、困惑しているルイスを見て告げた。


「申し遅れました。私はミレア。不本意ながら、サブギルドマスターの専属秘書をしております」

「不本意ながら……? ええと、どうも、俺はルイスです。それで、認められないっていうのはどういうことですか?」


 思わず少し詰問口調になりながら、理由を問うルイス。

 バルクも援護するように声を上げた。


「そうだそうだ! だいたいオレはサブギルドマスターだぞ! なんで秘書に意見されなきゃなんねぇんだ!」

「なるほど。つまりサブギルドマスターは権力を笠に着て、部下の助言になど耳も貸さない傲慢極まりない方です、とギルドマスターにお伝えしておきますね」

「あ、ちょっと待ってごめんやっぱ今の無しだからギルマスにだけは言わないで」


 秘書のミレアに、バルクはあっさり白旗を上げた。

 ミハイルは彼のことを信用していたようだったが、どうやら思っていたよりも頼りになりそうにないなと、ルイスはがっかりする。


「正確にいえば、現時点では認められない、ということです。ただし、相応の実力があることを証明することができれば、我がギルドに迎え入れることもやぶさかではありません」

「冒険者ギルドは成果主義で、冒険者になるだけなら戦士ではなくても可能だって聞いていたのに……」

「確かに以前はそうだったかもしれません。ですが最近では多くの冒険者ギルドで、試験を行うことになったのです」


 どうやらミハイルの情報が少し古かったようだ。

 せっかく領都まで出てきたというのに、このままではまた田舎に戻らなければならなくなるかもしれない……焦るルイスに、ミレアは言う。


「とはいえ、そう難しい試験ではありませんので、本当にワイバーンを瞬殺できる力があるのなら余裕かと思いますよ」

「だったらパスでもいいんじゃねぇかと、オレは思うんだがなぁ」

「考えてみてください、サブギルドマスター。確かにあなたの権限があれば、彼を強引に冒険者の一員にすることもできるでしょう。ただ、他の職員たちにはこう思われるでしょうね。『またか、あのハゲ……』と」

「誰がハゲだ、誰が!?」

「いえ、私の意見ではなく、他の職員たちがそう思うだろうという予測です」


 まぁ実際、ハゲてますけど……と彼女が小さく呟いたのを、ルイスだけは聞き逃さなかった。


「ただでさえ、サブギルドマスターは普段から『いくら強くて戦士としての実績があるとしても、さすがにあの地位は相応しくないのでは。脳筋だし』と言われているんですから」

「誰が脳筋だ、誰が!?」

「これも私の意見ではなく、他の職員たちの意見ですから、お間違いなきよう」






 冒険者ギルドは現在、天職を授かったばかりの戦士たちを対象に、見習い期間というものを設けている。

 この期間で冒険者に必要な知識を学び、最低限の戦闘能力を身に着けることで、初めて正規の冒険者になることができるのだ。


 その日、数か月に及ぶその見習い期間を経て、今まさに正規冒険者になるための試験を受けようとしている者たちが、冒険者ギルド内のとある部屋に集められていた。


「あたくしはエリザ。Cランクの冒険者で、天職は【青魔導師】。今回、あなたたちの試験を担当させていただきますわ」


 試験の監督を務める若い女性冒険者が、彼らを見回しながら告げる。

 ちなみに【青魔導師】は、水や氷などに関する魔法――青魔法を得意とする天職だ。


「あの、ちょっと訊いてもいいっすか?」

「リオさん、何ですの?」


 一人の少年が手を挙げて質問する。


「見たことない人が交じってるっすけど……? しかも明らかに同年代じゃない感じが……」


 少年の視線がルイスへと向く。


 そう。

 ルイスは今回、彼ら見習いに交じって試験を受けることになったのだった。


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