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第1話 戦士になれるかな

 この世界には、神々に選ばれし者たちだけが授かれる〝天職〟というものがある。


 天職を得ると、人類を脅かす様々な脅威と戦うための特別な力を持つようになる。

 彼らは〝戦士〟と呼ばれ、人々の希望として持て囃されていた。


「おおきくなったら、ぼくも、戦士になれるかな?」


 辺境の小村に生まれた少年ルイスは、多くの子供たちと同様、そんな夢を抱いていた。

 そして十二歳のとき、ほとんどの子供たちが天職を与えられない中にあって、幸運にも戦士の予兆とされる特別な紋章が、彼の腕へと浮かび上がってくる。


「こんなド田舎の村に、神々に選ばれる者が誕生するなんて!」

「今夜は宴だああああっ!!」


 村は大いに沸いた。

 誰もがルイスを祝い、その輝かしい未来を期待した。


 それから三年後、彼は村人たちに盛大に送り出され、村を出発した。

 実際に天職を授かるためには、都会にある教会で祝福を受けなければならないのだ。


 各地から集まってきた戦士候補たち。

 彼らが順番に祝福を受けていく中、ついにルイスの番がやってきた。


「君の天職は……【農民】だ」


 天職には様々な種類がある。

 だがそれを授かった者たちが戦士と呼ばれている通り、必ず戦いに役立つ類のものだ。


 例えば圧倒的な剣技で敵を打ち倒す【剣豪】だったり。

 例えば赤系統の魔法を極める【赤魔導師】だったり。

 例えば治癒と近接戦闘の両方をこなせる【パラディン】だったり。

 例えば暗殺などを得意とする【アサシン】だったり。


 戦いへの貢献の仕方はそれぞれだが、非戦闘系の天職などあり得ない。

 ……はずだった。


【農民】は史上初となる、唯一の例外。

 戦士になりたいというルイスの夢は、あっさりと潰えた。


 村に戻った彼は、その悲しみの記憶を忘れようとするかのように、ひたすら農作業に没頭。

 それから十二年の歳月が過ぎ――







「この辺りの大根はそろそろ収穫できそうだ」


 二十七歳となったルイスは、目の前の大根を()()()()()()呟いた。

 日々の農作業のお陰か、精悍な身体つきをした立派な青年へと成長を遂げている。


「よっと」


 ルイスは近くの大根を片手で掴むと、そのまま引っ張り上げた。

 土の奥深くまで埋まっていた大根の全貌が露わになる。


 それは全長およそ二メートル、直径は太いところで七十センチ強という、化け物のような大根だった。


「うんうん、なかなか良い感じに育ってるな」


 巨大なのはその一本だけではない。

 その一帯にできた大根はどれもこれも、人間の大人を凌駕する大きさなのだ。


 大きいだけあって、重量も相当なものがあるだろう。

 にもかかわらず、ルイスは片手でひょいひょいと抜いていく。


 百本以上あった巨大な大根を、あっという間に収穫し終えてしまったのだった。


 無論、ルイスが作っているのは大根だけではない。

 ジャガイモや玉ねぎ、トマト、カボチャ、ネギ、ピーマン、ナス、キャベツ、白菜など、色々な野菜を生産している。


 そのどれもが巨大で、当然ながらルイス一人ではもちろん、彼の住むこの村だけでは到底、消費し切れない。

 ゆえに周辺の村々、いや、遠くの村や街にまで運ばれて、大勢の人々の胃袋を満たしていた。


 しかも、ルイスはたった一人ですべての農作業を行っているのだ。


 ――時には作物を狙う魔物を駆除することもあった。


「っ……魔物か」


 魔物の侵入を察知したルイスは、地面を蹴って凄まじい速度で跳躍した。

 農地全体を見渡せる高さまで飛び上がった彼は、すぐに魔物の姿を捉える。


「あいつだな」


 直後、猛烈な風が吹いた。

 それに後押しされるように、ルイスは空を飛翔して一気にその魔物のもとへ。


 そこにいたのは全長五メートルを超える猪の魔物だ。


「おら」


 ドオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


 ルイスの拳が、轟音と共に巨大猪の脳天に叩き込まれる。


「~~~~~~~~~~~~ッ!?」


 食べ物に夢中でルイスの接近にすら気づいていなかった巨大猪は、一撃で地面に沈んだ。

 ちなみにこの巨大猪、グレートボアと呼ばれ、出現すれば村中が大パニックに陥るような危険な魔物なのだが……。


「よしよし、今夜は猪鍋だ」


 そんなことなど露知らず、ただ美味しい肉が手に入ったことを喜ぶルイスだった。






 ところで天職には、すべからず〝レベル〟というものがある。

 その種類に応じた訓練や実戦を行うことでレベルが上昇し、より強力な戦士へと成長していくことができるのだが。


 十二年間、朝から晩まで農作業を続けてきたルイスはというと。


 ――【農民】レベル99。


 レベルがカンストしてしまっていた。


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