表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B面で恋をして  作者: コウキシャウト
8/20

第8話「いざ、神保町へ」

土曜日。清々しい陽光が照らす、真っ白い神田の歩道を僕は歩いていた。時刻は正午過ぎで、映画「反逆教室」の上映は夕方からだ。それまでに滝沢百合に関する記事が載ってる古本雑誌を手に入れるのが理想。それにしても、ここへは上京してからちゃんと訪れたことが無かったけど、本当に色々な本屋が並んでいるものだ。


やや堅めの日本文学や外国文学専門の書店も有る中にスポーツ用品店や洋食屋が混じる街並みは独特の趣があった。そして店から溢れんばかりに外のワゴンに無造作に置かれた本の山。こういった中からピンポイント的にマイナーなアイドルの情報を探すのは気が遠くなりそうだ・・そう思った矢先、店の窓ガラスに吉永小百合や桜田淳子、斉藤由貴といった人達の日焼けしたポスターが貼られている一軒の書店が目に飛び込んできた。ここなら・・!


セール中の90年代以降のビジュアル系や70年代80年代辺りの海外のミュージシャン達が表紙を飾る雑誌やコンサートパンフレットが置かれた店外のワゴンを通り抜け、やや薄汚れた赤い玄関マットを踏み自動ドアが開くと、そこはちょっとしたユートピアだった。店内の壁一面にも新旧アイドル達のポスターが貼られ、何故か森高千里や内田有紀の等身大パネルまで置いてある始末。置いて有る本やコーナーの名前をぱっと眺めると、ここはどうやら昔のアイドル雑誌を中心に、週刊誌や写真集、ビデオにテレホンカードまで置いてあるようだ。匂いはなんか懐かしいものが。


好奇心を刺激する、カラフルな情報が視覚的に襲ってくる。「女学生の友」、これっておばあちゃんの家に置いてなかったっけ?「装苑」はこんな昔から有ったんだ。「平凡パンチ」って名前は聞いたことあるぞ。「ヘアカタログ」は時代を感じるなあ。その中で、特に気になって手に取ったのが昭和30年代頃のものだと思われる「スタア・アドレスブック」なる長方形型の冊子。早速読んでみると歌手や俳優に始まり、スポーツ選手や映画監督、漫画家といった何百人にもわたる著名人の住所がリスト化されており、ストーカーといった存在を考えれば「いくらなんでも危険過ぎるだろ!」と一人でツッコミを入れしまう。このユルさが昭和なのかな。おっと、滝沢百合の記事が入った本を探すんだった。


アイドル雑誌のコーナーで、とりあえず滝沢百合のデビューシングルが発売された1986年11月とその前後に発行されたと思われる「明星」「平凡」「GORO」「DUNK」「BOMB」「Momoco」といった雑誌を片っ端から立ち読みしてみる。目的はあくまで滝沢百合の記事だ!という意識は強く、表紙に載っている歌手の名前や目次を参照すればもっと効率が良いはずなのに、つい当時流行っていたおニャン子の面々にマッチやトシちゃん、少年隊に南野陽子、西村知美といった人達の表紙やプライベート風の写真やインタビューに惹かれ、それらに時間を費やしてしまう。それにしても、彼女の記事は一体どこに有るんだろう?


一応、今月発売の曲リスト的な記事に名前や曲名は載っているが、肝心の彼女の記事や写真にはなかなかありつけない。歌手の写真+曲の歌詞と楽譜がついた「明星」や「平凡」の付録の歌本にもやはり見つからない。一通りメジャーな本はとりあえず読んだ。となると、ややマイナーな雑誌を読んでみるしかない。そんな思考をしつつ、指が触れたのは「HIROMI」なる雑誌の87年1月号。「GORO」を真似たような、当時の漫画やアニメに出てくる本棚にさり気無く置いて有りそうなパロディ風雑誌名だがこれはどうだ。


当時の著名な歌手やスポーツ選手の名前が表示に並ぶ中に彼女の名前は・・・あった!文字はやや小さめなものの、「歌謡界に羽ばたく 新人類アイドル 滝沢百合」と書いてある。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ