第12話「新たに知る事実」 タイプB
待望、と言っていいのか疑問だがやっと来た返信。心臓の鼓動が早くなりつつある自分に気付きながら、早速確認してみる。
＜そうなんですか！私の動画を投稿している人が居ないかな、と検索していたらmasato0812さんが投稿している動画を見つけて改めて凄く嬉しかったんですよ＞
改めて僕も凄く嬉しくなる。やはり本人から直接感謝される程素晴らしいものはない。マイナーではあるけれど、こうしてインターネットの動画サイトを通じて知り合えるのは現代的な奇跡だろう。まだはっきり本人という確証はないが、僕はこの滝沢百合本人と名乗る人物に、あれこれ質問したり、より細かい話を聞いてみる決心をした。
それから二人は適度な間隔でメッセージのやり取りを始めた。僕はまず何故自分が滝沢百合という存在を知るようになったのか、彼女の詳細を知る為に今までどんな事をしてきたのか、そして彼女の存在や曲、歌をどれだけ魅力的に感じているかを、出来るだけ丁寧に百合さんに伝えた。すると、その熱意が伝わったのか百合さんも少しずつではあるものの、彼女の生い立ちやアイドル時代の事について教えてくれた。まとめるとこんな感じになる。
滝沢百合は芸名ではなく本名で、幼い頃から歌う事が好きでピアノも習っており、歌手になりたいという夢をずっと持っていたそう。教育熱心な親の元に育ち、高校も進学校だったが、歌手になる夢を諦めきれず高校2年生の時にオーディションを受け合格、デビューとなったわけだ。しかし芸能活動よりも大学進学を前提とした勉強を重視して欲しい親との確執が有ったことで、その両立に悩み2枚目のシングルを発売する前に体調を崩してしまい、そのまま引退。その後は大学に進学し普通に就職してOL、結婚に至り娘を産んだらしい。
その後夫と離婚、女手一つで娘を育てており、現在に至るとの事。とは言っても、一日中仕事で家を空けている事が多く、娘は祖父母が面倒を見る時も多いとか。また、娘は母・滝沢百合がアイドルだったという事は知らず、幼い頃子守唄こそ歌ったが、今はカラオケ含め人前で歌う事は殆ど無いと言う。
また、最初のシングルは「クワイエット・ララバイ」がA面候補で百合さんも気に入っていたそうだが、当時隆盛を極めつつあったユーロビートのカバーの方がインパクト有ると考えたレコード会社によってA面がカバー曲「踊り続けて(Keep On Dancin')」となり、「クワイエット・ララバイ」はB面になったようだ。また、誰も家に居ない時、家事の合間にたまにこの曲のワンフレーズを歌うらしく、つい懐かしくなってネットで調べたら僕の動画を見つけた・・という訳。
