84 大魔法
残ったエピソードを数えたらギリギリ90話に収まるか、という感じでした。計画性が足りなさすぎですね。すみません。
エマの新学期が始まって1か月が経った春の3番目の月のはじめ。私はガブリエラさんにミカエラちゃんの近況を伝えるため、東ゴルド帝都オクタバにある彼女の離宮を訪れていた。
「二人の学校生活は順調に進んでいるのね。」
「すごく頑張ってますよ。最近は二人とも研究室にこもりっきりなんです。」
私は彼女に3年生の授業の様子を伝えた。王立学校は3年生から所属するクラスや研究室によって大きく授業内容が変わる仕組みになっている。
エマとミカエラちゃんの所属している術師クラスでは、1年生では詠唱魔術の基礎と無属性魔法、2年生では各属性魔法と錬金術、薬学を広く学ぶ。ここまでは全員が共通して学ぶ内容だ。
でも3年生からはそれぞれの研究分野を決めて、それを深く学んでいくことになる。授業も自分の好きなものを選んで受けることができるんだって。許可さえ取れれば自分の研究室外の授業も受けられるらしい。
もっとも3年生くらいでは他の研究室の授業を受けても内容が専門的かつ高度過ぎてほとんど理解できないそうだ。だから3,4年生までは自分の研究室でみっちり鍛えられるのが普通なんだとか。なんだかとっても大変そうだよね。
1年生の時にエマは無属性魔法、ミカエラちゃんはガブリエラさんと同じ錬金術を選択した。二人は特別研究生なので、それぞれの教室の主任教師とつきっきりで毎日研究や勉強に励んでいる。
そのせいか部屋に帰ってきた時には二人ともくたくたに疲れ切っている。けれど互いの研究の内容を話す様子はとても楽しそうだ。充実した学校生活を送るエマを見るのはとても嬉しい。
でも時々、そんなエマの姿を見ていると、私の胸はずきりと痛むことがある。なぜなのかと考えてみたけれど、いくら考えても私にはその理由が分からなかった。なんでだろうね?
私の話を聞き終えたガブリエラさんは、きれいな装飾のされた磁器のカップを手に取ってお茶を一口飲んだ。
「二人はそんな風に過ごしているのね。知らなかった。でも二人が楽しい学校生活を送っているようで安心したわ。」
「知らなかった? ガブリエラさんも王立学校に通っていたんですよね?」
私がそう尋ねると、彼女はそっと目を伏せて静かな微笑みを浮かべた。
「私は2年生の初めまでしか授業を受けていないもの。」
「あっ・・・!」
彼女の答えに私はハッと息を呑んだ。ガブリエラさんの生家であるバルシュ侯爵家は、今から12年前に犯罪に関わった咎で一族全員が処刑された。助かったのはまだ成人していなかった彼女とミカエラちゃんだけだ。
当時王立学校の2年生になったばかりだった彼女は家族と一緒に捕らえられ、ミカエラちゃんと共に王都を追放されてしまった。彼女の髪が輝く緑色から純白へと変わってしまったのはその時の虜囚生活が原因らしい。
この事件は後に、老頭と呼ばれる悪者の計略だったことが分かった。バルシュ家は再興され、ミカエラちゃんが新たな当主になることがすでに決まっている。けれど彼女の失った過去が戻ってくることはない。
「ご、ごめんなさい・・・。」
私は彼女へ謝った。迂闊なことを言ってしまったことへの罪悪感で消えてしまいたい気持ちになる。でも彼女は逆に私へ優しく笑いかけてくれた。
「ふふ、もう済んだことよ。気にしてないわ。」
そう言って彼女は首にかけた銀のネックレスの鎖にそっと指を触れさせた。
「それよりも二人のことがもっと知りたいわ。絵を持ってきてくれたのでしょう?」
「はい、もちろんです! これをどうぞ!!」
私は彼女のために準備してきた絵を、勢い込んで取り出し彼女に差し出した。
「こんなに髪が伸びたのね。それに少し背が高くなった気がするわ。」
ミカエラちゃんとエマの制服姿が描かれた絵を見て、彼女は目を細めた。
彼女の言う通り、最近の二人は日毎に背が伸びている気がする。二人は今年で12歳。マリーさんによると、今が一番の『成長期』なのだそうだ。
特にミカエラちゃんは背が高くなったことで全体的にすらりとした印象になってきた。ふとするとガブリエラさんがそこにいるのではないかと思うくらい、ちょっとした仕草や雰囲気がそっくりになってきている。
エマの身長も大分伸びたけれど、まだミカエラちゃんほどではない。今のエマは私の目線よりほんの少し低いくらいの背の高さだ。でも近いうちに私と同じくらいになりそうな気がする。
でも身長以上に大きくなっているのはエマの胸だ。もうすでに私の両手の平に余るくらいの大きさになっている。大きめの蕪くらいあるマリーさんにはまだ負けてるけどね。
強く触るとかなり痛いらしいので、最近はお風呂の時に気を付けてエマの体を洗うようにしている。日毎に変わっていくエマの姿を見ていると、小さい時から一緒に過ごしてきた時間が思い出されて、私はいつも目の奥が熱くなってしまうのだ。
二人の成長ぶりを聞いたガブリエラさんも私と同じように目の端に光るものを浮かべていた。彼女は持っていた手巾でそっと目を押さえた後、私にお礼を言った。
「ありがとうドーラ。また教えてちょうだいね。」
いつも以上に穏やかな笑みを浮かべる彼女を見て、私はとても嬉しい気持ちになった。
「今日のガブリエラさん、何だかすごく機嫌がよさそうに見えますね。何かいいことでもあったんですか?」
すると彼女は途端に顔を赤らめた。そして何かをごまかすように小さく咳ばらいをした。
「変なこと聞かないで頂戴。別に何もないわ・・・。」
でも彼女の言葉は後ろから突然発せられた声によって遮られてしまった。
「それはたぶん昨日までユリスがこの離宮に居たからだと思いますよ。」
「義母上様!!」
驚いて後ろを振り返ると、東ゴルド帝妃のクオレさんが立っていた。その後ろではガブリエラさんの専属侍女さんが気まずそうな顔をして立っていた。
「申し訳ありません、皇太子妃様。お取次ぎいたしますと申し上げたのですが、帝妃様がいつの間にか中にお入りになられていて・・・。」
「あなたのせいではありません。気にしなくていいわ。本気になった義母上様を止められる人間など、ほとんどいませんから。」
冗談とも本気ともつかない調子でガブリエラさんがそう言うのを聞いて、クオレさんは「あらまあ」と言った。手にした扇で上品に口元を隠しながらコロコロと楽しそうに笑う彼女に、私は挨拶をした。
「クオレ様。お久しぶりです。」
「本当に久しぶりですね。お元気そうで何よりです。」
ガブリエラさんが侍女さんにお茶の準備を頼む。クオレさんは後から入ってきた自分の侍女さんに「あのお茶を渡してちょうだい」と言葉をかけていた。
二人の侍女さんが新しいお茶とお菓子を準備してくれた。私は勧められるままにそのお茶を飲んだ。
さっきガブリエラさんが出してくれた赤いお茶とは違い、そのお茶は濃い琥珀色をしていた。
「んー、美味しいですけど変わった風味のお茶ですね?」
「黒葉茶というお茶です。大陸中央でよく飲まれているんですよ。ユリスのお土産です。」
黒葉茶は茶葉を数か月間も発酵させて作るのだそうだ。湿度の違いでこの辺りでは作ることができないため、東ゴルド帝国ではほとんど見かけることのない非常に珍しいお茶らしい。
「そんなに貴重な物なんですね。ユリスさんはお茶がお好きなんですか?」
私がそう尋ねると、クオレさんはまたコロコロと愉快そうに笑い声を立てた。
「いえいえ違いますよ。ガブリエラ様を喜ばせるためです。あの子はガブリエラ様に夢中ですからね。」
その言葉を聞いた瞬間、ガブリエラさんはお茶に咽てひどく咳き込み始めた。私と侍女さんに背中を撫でられ、ようやく落ち着いたガブリエラさんは立ち上がってクオレさんに抗議した。
「き、急に何をおっしゃるんですか!!」
「あら、いいではありませんか。本当のことですもの。この数日は特に親密に過ごしていたようですし。」
彼女がそう言って口元を隠しながら笑うと、ガブリエラさんは耳まで真っ赤になって黙り込み、そのまますとんとクッションの上に座ってお茶を飲み始めた。私は訳が分からず、クオレさんにユリスさんのことを聞いてみた。
「あのー、ユリス様は今どちらに?」
すると彼女は「軍事機密ですから内緒ですよ」と前置きしてから私に教えてくれた。
「学術都市ビブリラクスです。あそこは西ゴルド帝国でも有数の知識人が集まる場所。珍しい資料や素材がたくさん手に入ったみたいですよ。」
ビブリラクスという街には『太古の図書館』と呼ばれる巨大な遺跡があり、それを調べるために多くの学者さんや研究者さん、魔術師さんが集まっているそうだ。
遺跡からは様々な情報を記した奇妙な『石板』が多く出土するという。貴重な情報が記された石板は『小国が買える』ほどの金額で取引されることもあり、一獲千金を目指して遺跡を探索する冒険者さんや研究者さんも少なくないらしい。
西ゴルド帝都を目指して遠征中のユリスさんはそこでたくさんの珍しい資料を手に入れたのだそうだ。
「あの子ったら三ヶ月もかけてわざわざ帝都まで戻ってきたんですよ。よほどガブリエラ様に褒めてもらいたかったのでしょうね。」
去年の冬の終わりにあったアクテオ川渡河作戦、ユーニ砦攻略戦という二つの激戦を制し、ユリスさん率いる東ゴルド軍はビブリラクス入城を果たした。現在は兵站の整備や新たに得た拠点の防衛統治のために進軍できないでいるため、本国への報告を兼ねて帝都に戻ってきたのだとクオレさんは説明してくれた。
ただ彼女の説明には難しい言葉が多かったので私には半分くらいしか理解できなかった。どうやら私の顔を見て彼女はそれを察したらしい。
「一言で言えば、それだけユリスがガブリエラ様のことを想っているということですよ」と言って、彼女は上品に微笑んだ。そしてそっと目を伏せてから、小さな声でポツリと呟いた。
「母としてはほんの少し複雑な気持ちです。」
「義母上様・・・。」
彼女の寂しそうな横顔を見て、ガブリエラさんはハッと顔を上げた。クオレさんは「はあっ」と大きなため息を吐いてガブリエラさんの方に向き直った。
「早くかわいい孫の顔が見たいわ。ねぇ、来年の今頃には見られるかしら?」
「は、義母上様!?」
「ふふふ、冗談です。」
赤くなって驚きの声を上げたガブリエラさんにクオレさんは優しく笑いかけた。
ガブリエラさんは赤くなったのをごまかすように侍女さんへ新しいお茶をお願いした。それを一口飲んだ後、私に向き直って言った。
「コホン。ま、まあともかく。ユリス殿下のおかげでたくさんの貴重な素材を手に入れることができたわ。」
「どんな素材が手に入ったんですか?」
「いろいろあるけれど、あなたが喜びそうなのはこれかしら。」
彼女はそう言って立ち上がると、研究机から白くてすべすべしたものを持ってきて私に渡してくれた。
「白い石?にしては随分四角いですね。もしかしてレンガですか?」
「レンガの一種と言っていいかもしれないわ。これはね『コンクリート』と呼ばれるものよ。」
コンクリートはレンガよりもずっと硬くて丈夫なのだと彼女は説明してくれた。材料は焼いた鉱石の粉と火山灰、それに海水。これらの材料を混ぜるだけで魔力を使わなくてもあっという間に硬化するという不思議な素材らしい。
型を工夫することで自由に形を変えることができるため、西ゴルド帝国では建材として使われているんだって。大陸の中央沿岸地方および火山付近でそのほとんどが作られているそうだ。
「あの辺りには材料になる火山灰や鉱石がたくさんあるの。ただ作るにはものすごく費用が掛かるんだけどね。」
掘り出した鉱石を砕いて高い温度で加熱しなくてはならないため、通常のレンガなどに比べて作るのに大変な手間と施設が必要なのだそうだ。大量に作るためにはそれこそ「森一つを丸ごと燃料にしなくてはならないくらい」の薪が必要になるらしい。
「そんなに大変なんですか。でも王国には木がいっぱいあるから、作ろうと思えば作れそうです。王国には材料の鉱石がないんですか?」
「鉱石自体は王国でも簡単に手に入るわよ。ほら、以前あなたに採ってきてもらった石灰石。あれがコンクリートの材料よ。問題は火山灰の方ね。」
そう言われて私は、大地の恵みを増やす薬を作るために沿岸地方で見つけた石灰石のことを思い出した。そう言えばあの時も石灰石を細かく砕いて使ったんだっけ。
王国でも石灰石を使ってコンクリートの材料である『生石灰』を作ることは簡単に出来る。ただ彼女の言う通り、火山灰を見つけるのが難しい。王国内には火山がないからだ。
わざわざ船などで遠くから灰を運ぶ手間を考えたら、手近な材料を使って作った方が遥かに効率がいい。王国は木材や石材、レンガなど代わりのものがたくさんあるからコンクリートは使われなかったのだろう。
高価な上に手間がかかるんじゃ使いようがないものね。私がそう言うと彼女も小さく頷いた。
「西ゴルド帝国でも帝城などの一部の高層建築にしか使われていないらしいわ。」
「じゃあせっかく教えてもらっても使うことはなさそうですね。」
私がそう言うと、彼女は小さくクスリと笑って頭を横に振った。
「そんなことないわよ。だってあなたなら材料を加工する工程を全部魔法で出来るでしょう?」
「あっ、そうか!!」
そう言われればその通り。私なら高温を出すための炉や燃料なしでも、魔力だけですべての加工ができる。それに材料も竜の姿で集めに行けばあっという間に手に入るしね。
私が納得する様子を面白がるように見た後、ガブリエラさんは私にコンクリートの作り方を書いたメモを渡してくれた。
「作り方を教えてあげるから一度作ってごらんなさい。使い方までは考えてあげられないけど、それはクルベ先生と相談するといいわ。」
「ありがとうございます、ガブリエラさん!」
私は彼女にお礼を言った。そしてミカエラちゃん宛の手紙を預かってその場を後にしたのでした。
ハウル村に帰った私は早速、クルベ先生に今回教わったことを話しに行った。クルベ先生はそれにとても興味を持ってくれて、すぐに一緒に作ってみることになった。
一晩かけて材料を集めた私は、エマが授業に行っている間にハウル村へ《転移》で移動した。クルベ先生のところにいくと、そこには大工の棟梁ペンターさんと鍛治術師のフラミィさんが待っていた。先生から話を聞いた二人は、面白そうだからと見学に来てくれたらしい。
材料はすでに昨夜のうちに加工済みだ。私は三人の見ている前で《領域創造》の魔法を使い、混ぜ合わせた材料を魔力で出来た型の中に流し込んだ。
材料を混ぜ合わせるとコンクリートはすごい熱を発する。これは強い火属性を持つ生石灰と火山灰が水属性の海水と混ざり合うことでお互いに打ち消し合い、土属性に変性するために起きる現象だとガブリエラさんのメモに書いてあった。
硬化したのを確認した後、私は魔力の型を外した。あっという間に出来上がった小さな物置くらいの建物を見てペンターさんは驚きの声を上げた。
「おお、こりゃあすげぇ!! こんなに早くできちまうのか!!」
「自由に形が変えられてあっという間に固まるってのに、こんなに硬いのかい? しかも材料には魔力を流してないんだろう?」
フラミィさんは小屋のあちこちを手で触って確かめながら私に尋ねた。
「混ぜ合わせただけで材料そのものには魔力を流してませんよ。」
私がそう答えると彼女は扉のない入り口から小屋の中に入って、小さな窓穴を調べ始めた。
「木枠や金具を付ければ窓板や扉の取りつけも簡単にできそうだね。こりゃあ便利そうだ。」
「ふむふむ、話には聞いておったが素晴らしい素材じゃのう!」
クルベ先生はそう言って感心したように自分の長い髭を手でこすった後、小さく首を傾げた。
「しかしそれにしても・・・」
「それにしても何ですか?」
私がそう尋ねると三人は顔を見合わせ合って苦笑した。
「四角いなあ。」
「四角いねぇ。」
「四角いのう。」
三人の言う通り、私の作ったこの小屋はのっぺりした白い四角形をしている。ペンターさんは小屋を改めて眺めて「ナイフで切り分けたヤギのチーズみてえだな」と呟いた。
「だ、だって仕方ないじゃないですか! 私にそんな複雑な形が考えられると思います!?」
私はそう言って三人に抗議した。ぐぬぬ、何か見本があれば私だって上手に作れるのに!
恥ずかしがる私に、三人は次に建物を建てる時にはどんな工夫をすればいいかを教えると約束してくれた。そのあと、クルベ先生が私のためにそれを建築魔法の術式としてまとめてくれるらしいです。
いろんなことが一段落ついて、せっかく作ったこの小屋をどうしようかと皆で話し合っていた時、遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
そちらを見ると顔見知りの衛士さんが大急ぎでこちらに走ってくるのが見えた。彼は私に向かって手を振りながら近づいてくると、息も絶え絶えと言った様子で話し始めた。
「た、大変です!!・・・って何ですかこの四角いの?」
「それはもういいですから!! ところで何が大変なんですか?」
「あ、そうでした!! 子爵様が・・・!!」
「カールさんがどうかしたんですか!?」
「し、執務室でお倒れになったんです!!」
彼の話によるとカールさんは北門の執務室で仕事をしながら軽い昼食を摂った後、意識を失って倒れたということだった。私たちは彼と一緒にカールさんが運び込まれたという彼の屋敷へと駆けつけた。
「リアさん!! カールさんは!?」
出迎えてくれたリアさんにカールさんのことを尋ねると、リアさんは目に心配の色を滲ませながら私を彼の寝室へと案内してくれた。寝台の上で安らかな寝息を立てている彼を見て、私はホッと胸を撫で下ろした。
「今、お薬を飲んで眠っていらっしゃいます。さっき来てくださったテレサ様によるとただの過労だろうということでした。」
「過労?」
リアさんによると彼は最近徹夜続きでほとんど寝ていなかったらしい。食事も満足に取らず、執務室で仕事をしながら軽い食事をエールで流し込む生活を続けていたそうだ。
この数日間、私は魔法の強壮薬を届けるために彼と毎日会っていた。その時、随分疲れているようだったので心配していたのだ。
けれど彼が「民のためにやらなくてはならないことなのです。貴族としての義務ですから」というので、何も言えなかった。人間の世界のことをよく知らない私には、彼へ休むように言うことへのためらいがあったからだ。
私が彼と交わしたこの数日のやり取りのことを話すと、リアさんも大きく頷いた。
「私がお止めしても同じでした。カール様は『民のためだから』と繰り返しおっしゃるばかりで、まったく聞き入れてくださらなかったのです。」
彼女は目の端を僅かに潤ませながら私たちにこのところの村の様子を話してくれた。彼女によると冬が終わって雪が融け始めた頃から、ハウル村には連日大量の移住希望者が押し寄せてきていたのだそうだ。
ハウル村は元々開拓村だったので、移住に関しては他の村や街に比べるとかなり条件が緩い。それは私も知っていたし、たくさんの人がやってきていることもカールさんやフランツさんから聞かされていた。
「カール様は希望を持ってこの村を訪ねたものを無下に追い返せないとおっしゃって、彼らの移住を手助けしていらしたんです。」
そうはいっても治安面や安全上の配慮から、希望する者をすぐに受け入れるという訳にも行かない。大量にいる移住希望者の身元を調べるためにものすごい量の仕事を彼は抱え込むことになったのだという。
ここは魔獣の森に囲まれた村。いくら土地にゆとりがあるとはいえ、やはり住む場所には限りがある。村の中には移住の審査を待つ人たちが溢れることになってしまった。
宿に泊まるお金のない彼らは門前広場の片隅で野宿していた。しかし数が増えすぎてしまったため、最近は寝る場所や食べ物、水を巡ってトラブルが絶えない状態が続いていたのだそうだ。衛士さんたちはその解決にかかりきりになってしまい、結果として衛士隊を指揮するカールさんの負担も増えてしまったのだという。
最近、広場に見知らぬ人がたくさんいるなと思っていたけど、そんなことになっているなんて今まで全然知らなかった。私がそう言うとペンターさんも同じように頷いた。
「俺もこのところトラブルが多いってのは徒弟から聞いてたよ。けどそんなに深刻だったとは思わなかったぜ。」
フラミィさんとクルベ先生もその言葉に大きく頷いた。リアさんは悲しそうな目で私たちに言った。
「皆さんがご存じないのも無理ありません。カール様は村の生活に支障が出ないようにと、たったお一人で精一杯の配慮をなさっていましたから。」
彼は配下の人たちの負担が出来るだけ少なくなるように、増えた分の仕事を全部自分が抱え込んでいたらしい。それを聞いたクルベ先生は大きなため息を吐いた。
「なんと愚かしいことじゃ。じゃが実にカール殿らしいのう。」
先生は寝台に横たわるカールさんを労わるように見つめていた。カールさんは以前、学生時代は魔力が低すぎるせいで授業の課題や試験をうまくこなすことができず、クルベ先生にとてもお世話になったと話していた。先生はその頃のことを思い出しているのかもしれないなと、私は思った。
カールさんの寝室を出た後、クルベ先生が私を呼び止めた。私は先生と一緒に人気のない控えの間に入った。そこで先生は声を潜めて私に言った。
「カール殿はああいう御仁じゃ。わしらが言うても聞く耳は持たぬじゃろうて。じゃからドーラさん、あなたから陛下に相談してみてはもらえんかのう?」
もちろん私は大きく頷いた。
「分かりました。早速今夜、王様に会いに行ってきますね。」
「ああ、よろしく頼みましたぞい。」
私と先生は微笑みを交わして互いに片目をつぶり合った。そしてその日の深夜、私はいつものように《転移》で王様の寝室へと移動したのでした。
事前に通信の魔導具『おしゃべり腕輪』を使って行くことを知らせておいたので、王様は起きて私を待っていてくれた。
「ドーラさん、よく来てくれた。さあ、こちらへ。」
「ありがとうございます。あ、これ、ガブリエラ様からの贈り物です。」
私は《収納》からガブリエラさんから預かった何冊もの本を取り出し、王様に手渡した。
「おおお!! 『迷宮都市シャーレ紀行集』に『賢者ナーギュの秘蹟』!! こんな貴重な写本を!!」
王様は小躍りするほど喜んで、受け取った本を鍵のついた棚に丁寧にしまっていた。その間に私はいつものように寝室の隣にある応接室に案内されて、お茶を御馳走になった。
侍女のヨアンナさんに美味しいお茶のお礼を言った後、私は王様に話しかけた。
「ところで王様。今日はお願いがあってきたんです。」
「ドーラさんが? それは珍しいな。どんなことかね?」
私は王様にハウル村の現状を話した。私の話を聞いた後、王様は大きく頷いた。
「ハウル村に多くの人間が移り住みたがっているという件については私も聞いていた。だがそんなに切羽詰まったことになっているとは思わなかったな。」
王様も家臣の人を通じて情報を集めていたらしいけれど、そこまで酷い状態だというのは知らなかったようだ。それだけカールさんが一人で抱え込んでいたということのなのだろう。
王様は「ルッツ子爵は官僚貴族家の出身だ。領地経営の経験が足りない。私の配慮が足りなかったよ。彼にすまなかったと伝えてくれ」と言った。
王様の直接の家来として役職を全うする官僚貴族と、代々受け継いだ領地を発展させようとする領地貴族では、物事の考え方から人への指示の出し方まで何から何まで違うのだそうだ。
本来であればカールさんは街道とそれを守る門の管理だけをしていればいいのだけれど、ハウル村が急速に発展したせいで実質的に領主の仕事をすることになってしまった。だからうまくいかなかったのだろうと王様は私に説明してくれた。
「彼は非常に優秀な男だが、こればかりは経験して学び取らなくてはならないものだからな。副官のステファン・ルード殿が上手く補佐してくれると思っていたが、ルッツ子爵のことだ。大方、副官の仕事まで自分で抱え込んでしまったのだろう。」
まったく王様の言う通りだった。剣を持っていない時のカールさんは優しくてとても不器用な人だ。村で起こった問題すべてを自分の責任として受け止めてしまっていたに違いない。私は改めて王様にお願いをしてみた。
「カールさんは自分で何とかしようと頑張ったみたいなんですけど、人手が足りないようなんです。衛士さんや文官さんを増やしてもらうことは出来ませんか?」
王様は私の言葉に軽く頷いて同意した。
「もちろんそれは構わない。ただ根本的な解決にはつながらないだろう。それが分かっているからルッツ子爵はあえて増員を望まなかったのだと思う。」
一時的には落ち着きを取り戻せたとしても、またすぐに同じ問題が起きてしまうだろうと王様は私に言った。移住希望者が増え続ければ結局は同じことになってしまうからだ。
どうすればいいかと頭を捻る私に王様は言った。
「こんなことにならぬよう彼には領主ではなく管理官という役職で駐在してもらっていたのだが・・・。私が思った以上にカールの管理が行き届いていたということだろうな。」
「?? どういうことですか?」
私が尋ねると、王様はニヤリと笑った。。
「つまりはそれだけハウル村が住みやすいということだよ。」
「それは私も分かります!! すごく!!」
ハウル村はとても住みよい村だ。それは絶対に間違いない!
「だがこのままではどうにもならぬな。」
王様はそう言ってむっつりと考え込み始めた。そしてしばらくして顔を上げて立ち上がった。
「ドーラさん、ここは私が何とかしてみようと思う。」
「えっ、王様がですか!?」
カールさんの家臣の人たちを増やしてくださいとお願いに来たのに、まさか王様が直接何かしてくれるとは思わなかった。王様の後ろに控えていた侍女のヨアンナさんも、私と同じくらい驚いている。王様はそんな私たちの様子を面白がるように一言こう付け加えた。
「ただ、ルッツ子爵は新たな問題を抱えることになるかもしれないがね。」
それから約一か月後。夏の初めのハウル村はたくさんの見物客でごった返していた。彼らは今日、王様がこの村で行う大儀式魔法を見るために集まってきたのだ。儀式を執り行うための準備を指揮してきたのは、もちろんカールさんだ。
私はいつもの長衣姿でカールさんが集めたたくさんの魔術師さんたちに紛れ、王家の紋章を掲げた平底船が桟橋に入ってくるのをじっと見守っていた。
船が着くと、煌びやかな魔法銀の鎧を纏った近衛騎士さんたちに守られながら王様が姿を見せた。王様が手にした杖を軽く掲げると、王家を称える声を上げていた見物人さんたちはその場にひれ伏した。私も彼らと同じようにその場に両膝を突いて軽く頭を下げた。
騒がしかった見物人たちがしんと静まり返り、村は静寂に包まれた。聞こえてくるのは遠くの森で鳴く夏の虫の声と南風が木々を揺らす音、それにドルーア川のせせらぎくらいだ。
桟橋に待っていた人たちの中からカールさんが立ちあがり、前に進み出て王様を出迎えた。彼の両脇に控えるのは副官のステファンさんと護衛のヴィクトルさん。
カールさんは普段はあまり着ることのない金色の飾りがいっぱいついた礼服を身に包んでいる。彼は王様の前で片膝をついて臣下の礼をとった。
「ようこそお越しくださいました、陛下。すでに準備は整えてございます。」
それに対して王様は鷹揚に頷いた。
「ご苦労だった、ルッツ卿。そこにいるのが村長のフランツだな?」
「は、ははぁ!!」
王様に名前を呼ばれたフランツさんは大きな体をこれ以上ないくらい縮めて地面に伏せた。王様はフランツさんに顔を上げさせると穏やかな表情で言葉をかけた。
「今回はいろいろと骨を折ってくれたと聞いている。今後も皆のことをよろしく頼む。」
「へいっ!!」
緊張のせいか、フランツさんは声を裏返らせて短く返事をし、また顔を地面に付けた。
「では早速始めるとしよう。」
王様のその言葉に従って、控えていた大勢の魔術師さんたちが一斉に立ち上がり、北門前広場いっぱいに描かれた巨大な円形魔法陣の周囲に散っていった。私も彼らと同じように配置に就く。私の場所は王様の立っている場所のちょうど真向かいだ。
普通の人間なら誰が立っているかを何とか判別できるくらいの距離。私には王様の表情まではっきり見えているけれど、王様からだと私の様子はよく分からないかもしれない。
「陛下、こちらでございます。」
カールさんが騎士さんたちと一緒に、重そうな台に乗せられた金色の魔石を運んできて王様の前に置いた。あれはこの魔法陣の起動石だ。あれと同じような魔石があと6個、村の外周を取り囲むように森の中に配置され、それぞれの石を魔術師さんたちが守っている。
この一か月間というもの、カールさんたちはこの石を配置するために魔獣の森を切り開き、魔法陣を構築するための準備をしてきた。そのために必要な仕事をやってくれたのが移住希望の冒険者さんや農夫さんたちだ。
カールさんは身元を調べた上で彼らを雇用した。彼らのために衛士隊の訓練場だった場所を解放して、仮の宿舎も作った。作ったのは私。材料はもちろん、あのコンクリートだ。
クルベ先生が色々と術式を工夫して建築魔法化してくれたおかげで、なんとか家らしい形を作ることができるようになったのです!
まあそうは言っても相変わらず四角いんだけどね。それにペンターさんとフラミィさんが徒弟さんと一緒に扉や家具などを準備してくれたっていう訳。
このおかげで多くの移住希望者の人たちが当座の住む場所と仕事を手に入れることができ、カールさんの抱えていた問題の大半が片付いた。
代わりにカールさんは王様から貰っていた『予算』のほとんどを使い切ってしまったらしい。でも住民が増えたことで減った分のお金は『税金』としていずれ回収できるのだと彼は私に教えてくれた。
ちなみに王様が立てた今回の計画を実行する中で、カールさんは王様から直接、領主としての心得を教えてもらったらしい。
つまり王様はこの『開発事業』を通していくつもの問題をいっぺんに片付けてしまったのです。私は王様の知恵にすっかり感心してしまったのでした。
魔術師さんたちの準備が終わったのを確認した後、王様はこっそりと私の方に視線を向けた。私が周りの人に気付かれないように頷いてみせると、王様は起動石に軽く両手を触れさせた。
長い長い詠唱が始まった。王様の詠唱を追いかけるように魔法陣を取り囲んだ魔術師さんたちも呪文を詠唱していく。その声が高まるにつれ、魔法陣が金色の輝きを帯び始めた。
見物人さんたちが驚きの声を上げる中、金色の光はあらかじめ敷設しておいた魔術の経路を通って森の中へと広がっていった。きっと上空から見たら、この広場を中心として同心円状に伸びていく経路の様子がはっきりと見えたことだろう。
魔力の光はどんどん外側へと広がっていき、やがてハウル村がいくつも入るほどの巨大な六角形を描き出した。
同時に、遠くの森の中から六色の光の柱が天空に向かって真っすぐに立ち上がった。赤、紫、金、青、白、緑の光は夏の太陽に負けないほどの強い輝きを放っている。
見物人さんたちの声がぱったりと止んだ。どうやら余りのことに恐れ慄いて言葉を失くしてしまったみたいだ。
集められた魔術師さんたちが魔力枯渇で次々と気を失っていく中、王様は体を震わせ全身の力を振り絞って詠唱を続けた。そしてようやく最後の起動呪文へと辿り着いた。
「・・・今、我らの魔力と大地母神の御力をもって、ここに揺ぎ無き魔力の砦を形作れ! 《城郭形成:六星の守護塔》!!」
その声と共に巨大建築儀式魔法が完成した。集められた膨大な魔力が大地の形を変えていく。魔法陣に組み込まれた設計図に従って姿を現したのは、六色の魔石が封じられた巨大な6つの塔とそれを繋ぐ分厚い城壁だった。
王都の周囲を囲む城壁とよく似ている。けれどサイズ的には一回り小さい感じかな。見上げるほど高い塔と城壁が出現したのを見て、見物していた人たちは大歓声を上げ始めた。
「見ろ! あっという間に城壁が建ったぞ!!」
「とんでもねえな! あれが王族の力って奴か!」
たくさんの人が大騒ぎする中、私は《念話》の魔法を使って台に両手をついている王様にこっそりと話しかけた。
「(大丈夫ですか、王様?)」
「(流石に疲れたよ。あとはドーラさんに任せるとしよう。)」
「(はい! 任せておいてください!)」
私が元気よく(頭の中で)答えると、王様は私の方を見てにこりと笑った。そして再び姿勢を正してまっすぐに立つと呪文を詠唱し始めた。それを見た家臣の人たちや見物の人たちからは「まだ何かなさるつもりなのか!?」というざわめきが聞こえ始めた。
私は周りで気絶している魔術師さんたちに紛れるように、その場にしゃがみ込んだまま魔力を使った。
まずは《不可視化》を使って姿を消し《転移》で村の上空へと移動する。《浮遊》の魔法で空中に浮かんだまま足の下を見ると、元々の村の何倍もの大きさを持つ城壁が見えた。
こうやって空から見ると城壁が完璧な正六角形をしていることがよく分かる。正六角形の城壁はドルーア川によって東西に分けられていた。
ただしちょうど真ん中で分けられているわけではなく、東側に比べて西側の方がかなり大きくなっている。割合で言ったら1対5くらいかな?
これはドルーア川の東側に強力な魔獣が多く住んでいるせいだ。この儀式魔法を発動させるためには、鍵となる魔石を森の中に配置しなくてはならない。けれど魔獣たちを掻い潜って魔石を設置するのは至難の業。それでこんなに差があるという訳なのです。
だから元々の西ハウル村が物凄く広くなったのに対して、東ハウル村は1.5倍くらいの大きくなっただけだ。そもそも東ハウル村は元々冒険者さんたちのための施設が集まっているから、農地や街道のある西側ほど広くする必要はないしね。
私は街道沿いに《領域創造》を使って魔力の壁を張り巡らせた。そして城壁内にある森の木々を、街道に沿っている部分だけ根こそぎ引っこ抜いて整地した。
もちろんやろうと思えば城壁内の森を全部整地してしまうこともできる。けれどそうしないのは、カールさんたちと話し合って決めたからだ。そのときに彼は「人の手が入る余地を残しておいた方がよいのです」と言っていた。
確かに森を全部失くしちゃったら、木こりをしているフランツさんたちも困ってしまうものね。
整地した場所には新たな水路を巡らせ道を作っていく。道が出来たらその周りに建物の基礎を作る。どの建物をどこに配置するかは、あらかじめ村の主だった人たちと相談済みだ。クルベ先生が作ってくれた計画書を確認しながら私はどんどん作業を進めていった。
この作業のほとんどは私の魔力でやっているけれど、もちろん私だけの力でやっているわけではない。王様が下の魔法陣で私の力を中継することで、より効率的に作業を進めているのだ。
こうやって一緒に作業をしてみると、王様の魔力と私の魔力はとても相性がいいことが分かった。もしかしたらこれまでずっと一緒に神事をやってきたことが影響しているのかもしれないね。
緑の森が瞬く間に整地された農地や石畳の敷かれた基礎に変わっていくのは、見ていてとても面白い光景だ。建築魔法を勉強して本当によかったと思う。
ある程度新しい村の形ができたので、私はまた地上に《転移》した。細かいところはクルベ先生に聞きながらまた修正すればいいからね。
私が《不可視化》を解除して王様に合図を送ると、王様は詠唱を中断した。金色に輝いていた魔法陣の光が風に溶けるように消え去ると、王様はその場にがっくりと膝をついた。
慌てて駆け寄る侍従の人たちに体を支えられながら、王様は広場を取り囲んでいた見物の人たちに手を上げた。それを見た人たちは夢から醒めたように、我に返って歓呼の声を上げ始めた。
小さなざわめきはどんどん広がっていき、やがて新しい村を揺るがすほどの大歓声へと変わった。
「・・・すげえ、すげえよ!! あっという間に街が出来ちまった!!」
「あたし、夢を見てるのかい・・・?」
「ロタール4世陛下、万歳!! 王国に栄光あれ!!」
その大歓声で気絶していた魔術師さんたちも目を覚まし始めた。彼らは大きく様変わりした周囲の様子を見て、口をあんぐりと開けて驚いていた。
カールさんの指示に従って、魔術師さんたちが王都へ戻る王様を見送るために桟橋へ整列し始めた。私も彼らと一緒に並ぶ。
私たちの前を横切って船に向かう時、すれ違いざま王様は軽く私に片目を瞑ってみせた。私も半仮面の下で片目を瞑りそれに応えた。
後で知ったことだけれど、この《六星の守護塔》という魔法は王様の先祖たちが現在の王都を作る時に使ったと言われる伝説の大魔法だったらしい。
永らくその詳細は失われていた。けれど王様は、あの名無しの魔術師さんが残した資料の中からこの魔法の術式に関する記述を見つけ、復元に成功したんだって。
「偉大な先祖たちの残した魔法だからな。是非私も使ってみたいと思ったのだよ。」
私がこの話を聞いたとき、王様はそう言って少し照れたように笑った。王様もガブリエラさんと同じで魔法の研究が大好きな人だ。でも普段は王様としての仕事があるから、自由に研究するということは出来ない。王様にとって今回の大魔法は、自分の研究の成果を発揮するまたとない機会だったみたいです。
こうしてみんなの協力と頑張りにより、ハウル村は『自由自治領ハウル』へと生まれ変わったのでした。
読んでくださった方、ありがとうございました。