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missドラゴンの備忘録  作者: 青背表紙
19/93

19 魔獣探し? 後編

いつもの懲りないドーラさんのお話です。

 少し歩くとすぐに丸太製の扉のある丈夫な門が見えてきた。私がそこへ目指して犬と並んで歩いていたら、門の向こうからたくさんの人がこちらへ走ってくる気配がした。


「本当にこんな昼間から幽霊魔導士が出たのか?」


「本当だよ! 長衣ローブ姿の不気味な奴がブラウの腹を裂いて、魂を抜こうとしてたんだ!!」


 そんな声と共に門から数人の男性たちが飛び出してきた。壺を手にした白髪頭の男性を取り囲むように、鍬や脱穀棒を構えた男の人たちが周りを固めている。






 彼らは私の姿を見るなり「ひっ!!」と声を上げた。同時に私の隣にいた犬が嬉しそうに鳴きながら、彼らの中にいたさっきの男の子めがけて飛び掛かっていった。


「ブラウ!! 無事だったのか!? 不死者になってないか!?」


 男の子は犬を抱きしめておいおい泣き出した。ブラウは彼の涙をべろべろと舐めている。


 男の人たちは目を皿のように見開いて、私と犬を交互に何度も見た。どうしたらいいか分からないようで、凍り付いたようにその場に立ち竦んでいる。






 ・・・これはひょっとして、やらかしてしまったかしら?


 今すぐこの場から逃げ出したい気持ちが沸き上がる。でもここまで来て、今更帰るわけにもいかない。今、帰ったらただ彼らをびっくりさせただけになってしまう。


 泣きたい気持ちをぐっと堪え、私は覚悟を決めて彼らに話しかけた。


「あの、ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど・・・。」


 その瞬間、男の人たちは持っているものをさっと振り上げて、飛び上がるようにして私から遠ざかった。











「あっはっは、あんた旅のまじない師だったのか。よくもまあ、こんな辺鄙なところまでやってきたもんだ。」


「驚かせて本当にすみません。」


 私が謝ると、塩の入った壺を持っていた白髪の男性は苦笑いを浮かべながら言った。。


「いやいや、こっちこそよく確かめもせず、すまなかったよ。街道の方じゃなく森の奥から出てきたっていうんで、てっきり不死者かと勘違いしちまったみたいでね。」


「まじない師さん、ごめんなさい。」


 犬を連れた男の子が恥ずかしそうな顔で私にぺこりと頭を下げた。彼の足元では犬のブラウちゃんが嬉しそうにしっぽを振っている。私が仮面越しに笑いかけると、彼は控えめに笑い返してくれた。







 私がまじない師のドーラですと自己紹介すると、白髪の男性も同じように名乗ってくれた。彼はこのクベーレ村の村長さんだった。


「あんたが話しかけてくれたから、すぐに不死者じゃないって分かったよ。だけどどうして森の中なんかに居たんだい?」


 村長さんは仮面越しに私の目をじっと見つめながらそう聞いた。その瞬間、周りの男の人たちがちょっとだけ緊張したように見えた。なんでだろうと思ったけれど、別に嘘を吐くつもりはないので私は正直に答えた。


「実は私、魔獣を探しに来たんです。」


「魔獣を探しに? ドーラさん、あんたまじない師じゃなくて魔導士なのかい?」


 私は手を大きく振ってそれを否定する。






「いいえ、違います。冒険者さんたちに頼まれて情報を集めてるんです。」


 私が魔獣を探して森の中を彷徨っているうちにこの村に辿り着いたのだと話すと、彼は訳知り顔で頷いた。


「ああ、なるほど冒険者たちの従者ってわけだね。それで仲間とはぐれて道に迷っちまったってことだな。道理で何にも荷物を持っていないわけだ。随分心細かったろう?」


「はい。一人でいるのはやっぱり大変だと思いました。」


 私が男の子を怖がらせてしまったことを反省しながらそう言うと、村長さんは「そうだろう、そうだろう。魔獣に襲われなくて本当によかったな。あんた、本当に運がいいよ」と頷いた。






 その後、村長さんは私を村の中へ案内してくれた。門をくぐって柵の中に入ると、小さな畑がまばらに広がる農地があり、そのそばにポツンポツンと丸太小屋が立っているのが見えた。


 私はその光景を見て私が最初に来た時のハウル村の光景を思い出し、とても懐かしい気持ちになった。


 畑にはハウル村と同じ麦やジャガイモ、豆の他、見たこともない白い花を咲かせる作物がたくさん植えられていた。白い花からは独特の臭いがする。


 私が「あれは何ですか?」って尋ねたら、村長さんが「あれは蕎麦の花だよ。この辺りは麦が育ちにくいからね」と教えてくれた。そして「王都育ちじゃ蕎麦なんか食ったことないだろうなあ」と笑った。






 村の広場には、10人くらいの男の人たちが待ち構えていた。さっきの人たちと合わせても16人しかいない。彼らは皆、手に鍬や草刈り用の大鎌を握って、私のことをじっと見つめている。


 子供や女性は一人もいない。今まで通ってきた家の陰からたくさんの人の気配や視線を感じたから、きっと隠れているのかもしれないね。


「まじない師のドーラさんだ。仲間とはぐれちまったらしい。」


 村長さんが私を男の人たちに紹介してくれた。するとその中にいた鎌を持った男性が、私に話しかけてきた。






「なあ、あんた。どうして顔を隠しているんだ?」


「えっと、あの、顔に大きな傷があるんです。だから、その・・・。」


 私は思わず半仮面を押さえフードを引き下げながら、しどろもどろになってそう答えた。


 この言い訳は仮面を着けている理由を聞かれたときのために、マリーさんが考えてくれたものだ。私が無暗に顔を見せると、いろいろ問題があるらしい。


 でも私は嘘が苦手なので、上手に言い訳できるようにと何度も練習させられた。それでも結局うまくできるようにはならなかったけれど、エマは「あたふたしてる方が逆に本当ぽくていいかもしれないよ」と言ってくれた。







 私の答えを聞いたその男の人はバツが悪そうな顔をした。


「そりゃあ、悪いこと聞いちまったな。すまねえ。」


「い、いえ、あの、大丈夫です。」


 気まずい沈黙がその場に降りる。私はいたたまれなくなり、何かないかと辺りを見回した。ふと彼の持っている鎌が目に入る。鎌の刃はよく手入れされていたけれど、あちこち欠けてしまっていた。


 それを見た瞬間、私は咄嗟に「あ、あの、その鎌、私が修理しましょうか!?」と叫んでしまった。






 男の人たちは私が急に大声を出したせいで、ますます固まってしまった。まずい。怒らせちゃったかな? 


 ど、どうしよう!? どうしたらいいの!? 助けてエマ!!


 私がオロオロしながら涙目になっていたら、目の前の男の人が私にスッと鎌の柄を差し出してくれた。


「ちょうど研ぎ直さなきゃならねえって思ってたんだ。助かるよ。」


 彼は仮面越しに私の目を見てほんの少し口元を緩めた。よかった、怒ってないみたい。私はホッと胸を撫でおろし、彼から鎌を受け取り、木の杖で鎌の刃をこつんと叩きながら起動呪文コマンドワードを唱えた。






「《金属形成》《素材強化》あとは《研磨》!」


 《収納》の中にある金属のガラクタ(製塩の魔道具を作った時の余り)をこっそり使って足りない部分を補いながら魔法を使う。彼の鎌の刃は虹色の輝きを放ちながら、見る見るうちに修復されていった。


 それを見た男の人たちはどよめきながら、一歩後ろに下がった。しまった。焦って思わず魔力を込めすぎちゃったみたい。でもきれいになったし大丈夫、かな?


 おろしたての様にピカピカになった鎌を持ち主の男の人に返すと、彼はそれを角度を変えていろいろな方向から眺めた。そして鎌を手に持ったまま、逆の手で私の肩をがっと掴んだ。反射的に「ひゃっ!」と変な声が出てしまった。






「すげえ! あんた、すげえな!」


 男の人はキラキラした目で私にそう言った。よかった。とても喜んでくれてるみたい。でも彼はすぐに気まずそうな顔をして私に言った。


「礼をしたいが金がないんだ。悪いけど別のもんでもいいかな?」


 私は「お礼なんていいですよ」と言いそうになって、ハッと口を噤んだ。タダで仕事しちゃダメって言われたことを思い出したからだ。


「お金でなくてもいいですよ。」


 私がそう答えると、彼はホッとした表情で「じゃあ、家で獲れた野菜を持ってくる」と言い、走って行ってしまった。彼が行ってしまった後、それまでのやりとりを見ていた男の人たちが「俺たちの道具も直してもらえるかい?」と聞いてきた。






 私は「もちろんです」と答えて、彼らの道具を次々と直していった。男の人たちが喜ぶ声を聞いて、家の中から子供を連れたおかみさんたちが様子を見にやって来た。


 私の直した農具を見た彼女たちはすぐに家の中に走っていき、古くなった鍋や包丁などを手にして戻ってきた。私の周りにはあっという間に人だかりができてしまった。


 一つ一つ直すのは大変だし、時間がかかる。魔獣探しもしなきゃいけないので、私は村全体を《領域創造》の魔法で包み込んだ。


「一気に直しちゃいますよ!」


 《領域》内にあるすべての金属器を一度に修理する。せっかくなので各家のおトイレもすべて《洗浄》し《乾燥》させてきれいにしていった。






 さらに畑に植わっている植物には《植物活性化》の魔法を使い、こっそり魔法薬も撒いておく。


 井戸や水甕の水を《浄水》の魔法できれいにし、最後に村の人全員を《安眠》で一瞬だけ眠らせて、その間に《どこでもお風呂》の魔法でさっぱりしてもらった。


 皆を眠らせたのは《どこでもお風呂》の魔法を他の人に見せちゃダメって言われてるからだ。でも皆が寝てる間なら使っても分かんないから、別にいいよね。うんうん。


 魔法の《領域》を解除すると、立ったまま眠っていた村の人たちがハッと我に返って自分の体をあちこち見回しはじめた。魔法を解いたはずなのに、皆はまだ夢を見ているような表情で私を見つめている。


 あれれ、どうしちゃったんだろう?


 魔法がうまく解けていないのかと思って私が木の杖をコツコツと叩いていたら、村長さんが近づいてきて私の手を取った。






「ドーラさん、いやドーラ様。何のおもてなしもできませんが、ぜひ村の皆でお礼をさせてください。」


 村長さんは私にお昼ご飯をご馳走してくれると言った。私が「ありがとうございます」と言うと、彼は広場のすぐ側にある自分の家に私を招待してくれた。


 でも他の村の人たちも私と一緒に食事をしたいと言い出したので、急遽家の外にテーブルを出して外で食事をすることになった。テーブルの側に作られた仮の竈の周りには、村の人たちが持ち寄った野菜や川魚、狩りの獲物が並べられていく。


「我々の村の唯一の自慢です。」


 そう言って村長さんが取り出してきた小さな樽に入っていたのは、琥珀色をした美しいお酒だった。


 酒杯に慎重に注がれたそのお酒からは、とても甘い香りがしている。私は危うくよだれが垂れそうになり、慌てて口元を押さえた。酒杯にほんの少し注がれているだけなのに、とてつもなく豊かな香りが辺りに広がる。


 私は勧められるままに、そのお酒に口を付けた。






「これ、美味しい!! すごく美味しいです!」


 それは私がこれまで口にしたどんなものよりも甘いお酒だった。おそらく果実を使った醸造酒だと思うのだけど、こんなに甘い果物なんて今まで食べたことがない。


 昔、神々の間で流行った『神酒ソーマ』って飲み物を飲ませてもらったことがあったけど、それに勝るとも劣らない美味しさだった。陶然とする私を見て、村長さんは誇らしげに言った。


「喜んでいただけて何よりです。これは私たちの村に伝わる秘伝の酒、貴腐酒トゥルッケンベーレンです。」


「本当に美味しいですね! でも貴重なものなんじゃありませんか?」


 私がそう尋ねると、村長さんをはじめ村の人たちはちょっと悲しい目をして笑った。


「いえ、構いません。おっしゃる通り、大変貴重なものですが、今さら取っておいても仕方がないですから。」


 どういうことだろう? 不思議に思ってその訳を尋ねたけれど言葉を濁され、さらにお酒を勧められていつの間にか誤魔化されてしまった。

 





 思いがけず美味しいお酒をたくさん飲んだことで私はすっかり気持ちよくなってしまった。


 水辺でよく育つというカサバ芋とウサギ肉のシチューを食べ、蕎麦の実で作った薄焼きパンガレットを頬張る。そしてまた振舞われるままに美味しい葡萄酒や果実酒を飲む。貴腐酒ほどではないけれど、どのお酒も驚くほどおいしい。


 テーブルの上にあるのは、どれもこれもハウル村では食べられない珍しい食べ物ばかりだ。中でも私が驚いたのは、焼いた鹿肉の付け合わせとして出された緑色の野菜だった。


 少しつんとした匂いのするその野菜を何気なく食べた瞬間、私の鼻から脳に向かってとんでもない刺激が走った。目を白黒させ、果実酒の酒杯を飲み干した私を見て、村の人たちは楽しそうに笑った。


「ドーラ様はフェルト菜を食べるのは初めてですか?」


 私がそうですと答えると、村長さんがこの野菜のことを教えてくれた。






 フェルト菜はきれいな水辺にだけ生えるというこの村の特産品なのだそうだ。今、私が食べた通り、そのままでは辛くてとても食べられない。でもゴツゴツした根をすりつぶし匂いの強い肉と一緒に食べると、肉の匂いを消し旨味を引き出すことができるのだそうだ。


 皆に勧められて肉と一緒に食べてみたら、確かに驚くほど肉が美味しくなった。ハウル村で食べているショウガやニンニクと似ているけれど、それよりもずっと匂い消しの効果が高い。後口がよりさっぱりする感じだ。


 私はすっかりこのフェルト菜が気に入ってしまった。村の人たちはそれをとても喜んで、私にお酒や料理をどんどん勧めてくれた。






 ふと気が付くと辺りはすっかり暗くなっていた。大きな焚火の周りで、村の人たちは素朴な笛や太鼓などの楽器を手に取り、演奏を始めた。それに合わせて他の人たちが踊りだす。


 ハウル村の秋祭りのダンスに似ているけれど、それよりもテンポが速くて目まぐるしい。私はその演奏に合わせるように、夜空に向かって次々と魔法の花火を打ち上げた。


 魔法の光が作る花がパッと広がるたびに、子供たちは大きな歓声を上げた。私は彼らにねだられるまま、次々といろいろな形の花火を出した。


 クルクルと回る人たちを見ているうちに、私の視界は何だかフワフワし始めた。楽しい。すごく楽しい。






 私はその場に立ち上がり杖を掲げると、村全体を《幻影》の魔法で包んだ。


 地面から次々とうっすらと光る植物が芽吹き、それが瞬く間に大きくなって色とりどりの花を咲かせた。その花びらは一斉に散って風に舞い、それが花の妖精へと変わっていく。


 妖精たちが飛び交う中、美しいドレスを纏った貴婦人とそれをエスコートする男性たちが現れ、優雅に踊り始めた。


 突如出現した楽団の演奏に合わせて、煌びやかな鎧を身に着けた騎士たちが流麗な動きで剣舞を舞い、聖女の衣装をまとった歌手が朗々とした声で賛美歌を歌う。


 月の光を受けてキラキラと輝く雪が降ったかと思うと、虹のかかった青空の下を極彩色の鳥たちが飛んだ。私がこれまでに見てきた様々な美しい光景が幻影となって現れては消え、次々と目の前を流れていく。


 村の人たちは言葉を失くし一心にそれを見つめている。中には地面に跪いて大地母神に祈りを捧げ、涙を流す人の姿もいた。






 私が杖を下ろすと、すべての幻影は虹色の輝く光の粒となって消えた。茫然としていた村の人たちは、子供たちが上げた歓声を合図に我に返り、一斉に拍手をして私の魔法を褒めてくれた。


「ドーラ様、本当にありがとうございます。今日はもう遅うございます。ぜひ我が家にお泊りください。」


 村長さんは私にそう言ってくれた。確かに今、ものすごく眠い。このまま寝たらきっとすごく気持ちがいいだろうなー。


 でも私はそこで不意に、自分のするべきことを思い出した。そうだ。すっかり忘れてたけど、魔獣のことを聞きに来たんだった! 私は村長さんにこの辺りにいる魔獣の住処について聞いてみた。






「あの、わらひ魔獣まじゅーを探してるんでふけど、ヒック! どっかに居ましゅか?」


「まじゅー? ああ、魔獣ですね。村の周りの川や池には水辺にすむ魔獣が多くおります。村を柵で囲っているのも彼らからの被害を防ぐためなのです。」


 村長さんはこの辺りの魔獣の住処や種類について詳しく教えてくれた。思った通り水の魔石を持つ魔獣が多く住んでいるようだ。


 村長さんは最後に「ですが魔獣よりも厄介なのは・・・」と言いかけたけれど、他の人たちの方をちらりと見てすぐに口を噤んだ。


 私は村長さんにお礼を言い、ハウル村に帰りますと告げた。村の人たちは私にお礼の品をたくさん渡そうとしてくれた。けれど私は持ちきれませんからとそれを断り、カサバ芋とフェルト菜を少し、それに葡萄酒を一瓶だけ受け取ることにした。


今日きょーはありがとーごじゃいましゅた! また来ましゅね! ヒック! これ、おしゃけのお礼でしゅ。」


 私は銀貨の詰まった小袋を村長さんの手に押しつけると《転移》の魔法でハウル村に戻った。











「エマー!! 今、帰りましゅたよー!!」


「おかえりお姉ちゃん、随分遅かったね。心配してたんだよ・・・って、お酒くさい!!」


 天幕の向こうで私を待っていたエマを抱きしめようとしたら、後ずさって逃げられてしまった。


「ドーラ!? あんた、どこで一体そんなに飲んできたんだい!?」


「うふふ、マリーしゃん。だいしゅきですー!」


「ああ、こりゃあダメだね。完全に出来上がっちまってる。まったく何やってんだか、このは! ほら、これ飲んで!」


 私はマリーさんから渡された湯冷ましの水をこくこくと飲んだ。






「ふにゃあ、おいしいでしゅー!」


「ほんとにしょうがない子だね。さあドーラ、今日はもうおやすみ。あんたの話は明日の朝、たっぷり聞かせてもらうよ。」


 私はマリーさんとエマに手を引かれ、寝床に連れていかれた。藁の寝床に倒れ込んだ私の長衣と半仮面をエマが脱がしてくれた。


 「おやすみ、ドーラお姉ちゃん」という言葉と、頬にエマの唇が触れた感触を最後に、私は気持ちのいい眠りの海の中に沈んでいった。






 次の日の朝、目が覚めて昨日のことを思い出した私はマリーさんに何があったのかを問い詰められ、またこっぴどく怒られてしまったのでした。

読んでくださった方、ありがとうございました。

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