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憎悪
ヒトはヒトを憎む。きっかけはなんだろう?
大切なものを奪われた。
ひどく、傷付けられた。
自分より美しいもの、優秀なものへの妬み嫉み。
深い憧れや愛情が、突然変異することもある。
ヒトはヒトを憎む。それに何の意味があるのだろう?
憎しみを抱いても、復讐を遂げても、得るものはあまりない。
達成感は一瞬で消えうせる。
さらに大きな空虚感に襲われて、そのまま自身も消え去るか、もっと大きな憎しみを抱え込むか。
ヒトはヒトを憎む。
面白いことに、彼らは知っているのだ。
その憎しみが歪んでいること。その果てに待つものが、破滅でしかないこと。
周りの誰も、そう、自分自身をさえ救うことはできないと。
なのに、止められない。
彼らの想いは、その器に納まりきれないほどに自由すぎる。
僕は思う。
それはきっと哀しいこと。
だけどそれは、ヒトがヒトである所以。
ほんの少し、僕は人が羨ましいとも思う。