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「孤島立国」異世界で自分達の国を作ろう   作者: 八神夕輝
第一章 アサルド王国
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【九】いざ、王城へ

 翌朝からの王都への移動中、特にトラブルも無く予定より早く到着した。

 港の検問所での騒動を教訓に近くの森の中にホバーを隠して、徒歩で王都に入ることになった。

 検問所には入城審査を受ける人達の長蛇の列ができていた。

 「いやー、これは門をくぐるまでに結構時間かかるねー」と陽鞠。

 「一国の王城に入るのですから仕方無いですわ」と花梨。

 「・・我慢しか無い・・」「そうだねぇ・・」「あらあら、入るだけで大変なのね」と心愛、早苗、希美が嘆く。

 「これ何時間掛かるか分からんね・・愛理、超法規的なとか、何とかならんの?」と志摩。

 「わ、私に聞く?そんなものあるわけないじゃないですか」と愛理。

 「えー、ただ待ってるだけいうのはいややわぁ・・いつものようにランチャーぶっ放しちゃえばええんとちゃう?」

 「な、なにがいつものようにですか・・いつもぶっ放してなんかないもん・・」と涙目の愛理。

 「おいおい、あんまり愛理をからかうなよ、後が大変なんだから」と助け船を出したつもりの勇作。

 「後が大変って何ですか?勇作くん?」を顔を真っ赤にして愛理は抗議した。


 そんなに騒いでいたつもりは無いのだが、基本的にメンバーの女性陣は皆、かなりの美少女である。

 王都と言っても所詮は中世期の西洋程度。

 街行く男達が皆振り返る程には彼女達の洗練された美しさは飛び抜けていて、目立つことこの上無い。

 騒ぎを聞き付けた衛兵が勇作達のところにやってきた。

 「貴様ら、騒いでいないで大人しく順番を待たんか!」と頭ごなしに叱責(しっせき)してきた。

 「なんか感じ悪―い、私達何も悪いことなんてしてないのにー」と陽鞠の反論した声が聞こえてしまった。

 「な、なんだ貴様、口答えするとは良い度胸だな、牢屋にぶち込んでやる・・」

 衛兵は陽鞠の腕を掴もうとした。

 しかし、軽く身体を捻って衛兵を避けると、刃に鞘を付けたままの薙刀で見事な足払いを見舞った。

 転んだ拍子に頭を地面に打ち付けた衛兵は、「ぐえっ!」と(かえる)の潰れたような声を上げて気を失ってしまった。

 「お、おまえら・・」それを見た衛兵達は一斉に抜刀すると勇作達を取り囲んだ。

 「あのー、私達こういうものを持っているんやけど・・」

 そんな中、場の空気をものともせずに一歩踏み出した志摩は、王城からの招待状をヒラヒラさせた。

 「なんだそれは?」「ん?王城からの招待状やけど?」「なに?見せて見ろ!」

 半信半疑ながらも隊長格の衛兵が確認のため、志摩からそれを引ったくると招待状をマジマジと見つめた。

 「こ、これは王印、しかも差出人は宰相様・・本物なのか?」

 「疑うんなら-、確認した方が良いンじゃなーい?」と薙刀棍棒をユラユラさせながら突っ込む陽鞠。

 陽鞠、これ以上、(あお)らないでくれ。

 「・・確認は基本・・」と銃剣型収束機関銃を背負い(にら)み付ける心愛。

 心愛、マジで怖いからそんな目で見るのは止めなさい。

 「殺っちゃっていいかねぇ・・」と両剣棍棒を振り回す早苗。

 早苗・・お前が言うと洒落にならないからな。

 「騒動が大きくなる前に確認することをお勧めしますわ」と銃剣型収束機関銃を背負い薄い胸を張る花梨。

 ああ、花梨・・君が常識人で良かったよ。

 「あらあら、私達に剣なんて向けちゃって良いのかしら?」と電撃杖鞭を持つ希美。

 希美・・既に帯電させてるのは何故?

 止むを得ず、勇作が前に出ようとしたところで、拳銃型収束銃を腰に下げた愛理がそれより先に皆の前に出た。

 「私達は王城の国王様から招待を受けて来ているのです、失礼にもいつまで剣を向けているのですか?・・ここで私達とやり合いたいのですか?それでも構いませんよ?・・どうするのですか?」

 愛理の瞳から色々な物が消えている。これはかなりブチ切れている。

 あまりの迫力に衛兵は青ざめた顔で後退り、勇作達の中心に保護されている初音と花江までガクブルしていた。

 「そうで無いのなら剣を引きなさい!急ぎ王城にも確認しなさい!今すぐに!・・時間は有限なのですよ?・・五秒以内に実行しなさい、実行しない場合、敵対行動と見なして戦闘に入ります・・五、四、三・・」

 それまで硬直していた衛兵の隊長は弾かれたように「分かった、お、お前達すぐに剣を引け・・誰か王城に確認して来い」と大声を上げた。

 衛兵達は慌てて納刀すると若い衛兵が王城に向けて走り出した。

 仁王立ちしたままカウントダウンを止め、衛兵達を睨み付ける愛理は正直、格好良かった。

 そのまま睨み合うこと半刻(一時間)、若い衛兵と共に今では顔馴染みとなった数名の王国騎士団が慌ててやって来た。

 「衛兵達、何をやっておるか!宰相様が直々にご招待している方達なのだぞ・・引け!、引かんか!」

 物凄い剣幕の騎士に顔を青ざめさせた衛兵達は、急いで十メートル程後退ると一列に整列、敬礼した。

 馬上から転がるように地面に降りた騎士達は勇作達の前に駆け寄ると片膝を付いて深々と頭を下げた。

 「こちらの連絡不行き届きのため、衛兵達から勇作様方に大変不愉快な思いをさせてしまいましたこと、この通りお詫び申し上げます、何卒、ご容赦を・・」

 勇作達の最前列で腕組みをして不機嫌さを隠そうともせず睨み付ける愛理の迫力に騎士達は冷や汗を流した。

 ここで勇作が助け船を出した。

 「分かりました謝罪を受け入れます、あなた方の言われることは本当のことでしょう・・同じようなことは港町ハミルブルックでもありましたから」

 「わ、私は納得していませんよ?」

 そう言う愛理の肩を優しく抱き寄せて耳元で囁いた。

 「ありがとう愛理、皆を代表して怒ってくれて・・でももう大丈夫だ、それと怒ってくれた愛理、凄く格好良くて綺麗だったぞ」

 突然の勇作からの(ささや)きに何を言われたのか理解するのに数秒・・その直後、顔を真っ赤にした愛理は「べ、別に格好良くなんかないもん・・」と顔を両手で隠して座り込んでしまった。

 勇作は希美に目配せして愛理を任せると、騎士達に向き合った。

 「不幸な行き違いがありましたが、刃傷沙汰にならず良かったです、僕達の目的は王城に行くことですから・・案内をお願い出来ますか?」

 「はっ、すぐにご用意致します・・暫しお待ちを」

 騎士団は検問所近くにある待機所から三台の馬車を引いて来た。

 先頭には勇作、愛理と騎士団から一人が乗り込んで来た。

 他のメンバーは残り二台の馬車に分乗した。

 「王国騎士団の団長を務めております、ラフェスタと申します・・先程は貴方達に我が国の衛兵が大変失礼なことをしてしまったこと、改めてお詫び申し上げます」

 騎士団団長のラフェスタは勇作達に深々と頭を下げた。

 「顔をお上げ下さい、先程、謝罪は受け取りましたから・・」

 「そう言って頂けると助かります、関係者は全て厳罰に処しますのでどうかお許し下さい」

 「分かりました・・衛兵の方達も国への忠誠心からあのような行動に出たのだと思います、寛大な処置を希望します」

 「寛大なお心遣い痛み入ります・・」


 馬車に乗ること三十分程で王城に到着した。

 メンバー達は西洋の城そのままの出で立ちと雰囲気に「すごーい!」と感嘆の声を上げていた。

 衛兵の立つ重厚な門を(くぐ)ると中庭に出たところで馬車が停車した。馬車はここまでらしい。

 馬車から降りた勇作達は騎士団長に案内されて、中庭を抜けるとそびえ立つ城の下層にある出入り口に来た。

 「私の案内はここまでです・・ここからは別の者がご案内します」

 するとこれを待っていたかのように、豪奢(ごうしゃ)な扉が開いてメイド服に身を包んだ女性三名が進み出た。

 深々と頭を下げ「お待ちしておりました、勇作様、ご一行様・・私、メイド長をしておりますシステアと申します・・長旅お疲れ様でした、こちらへどうぞ」と優雅に背を向けて歩き出した。

 勇作達は騎士団長に会釈すると、メイド長に続いて長い廊下を進んだ。

 無駄に広い廊下、赤に近い絨毯(じゅうたん)が敷き詰められ、左右の壁には様々な調度品が飾られ、いやでも「王城に来たんだな」を思わされる。

 別の建物に二度移動した後、二回長い階段を上がると、今までとは雰囲気の異なるフロアに出た。

 ある部屋の前まで来ると中へと促された。

 「暫し、ここでお待ち下さい・・準備が出来ましたらお呼びに参ります」

 メイド長は勇作達にそう告げると部屋を後にした。

 部屋に残ったメイド達に勧められるままソファーに腰掛けた。

 テーブルには様々なお菓子や果物が用意され、何のハーブか分からないが良い香りのする紅茶をメイド達が煎れてくれた。

 メンバーは紅茶を一口飲むと皆「美味しい!」と感嘆していた。

 メイドに王城のことなどをあれこれ聞きながら待つこと十分程で、先程部屋を出て行ったメイド長がノックをして入って来た。

 「お待たせしました、お腰のものなどは一旦、こちらでお預かりさせて頂きます・・準備ができました、どうぞこちらへ」

 メイド長が先頭に立って歩き出した。同じ階にある一段と大きな扉の前に来ると「お越し頂きました」と衛兵に告げた。

 衛兵の開く扉をくぐり、メイド長に促されるまま部屋の中へと進んだ。

 そこは豪華な装飾が部屋全体に施された大広間だった。謁見(えっけん)の間と言う部屋だろう。

 奥を見ると絨毯の敷かれた先には何段か高くなった台座があり、これまた豪華な椅子が二脚ある。

 台座の下段にはこの間、エルピス島を訪れたプロイス宰相が立っている。

 花道の両側には王国の貴族達であろうと思われる上品な服を(まと)った数多くの男達が並んでいた。

 宰相に促され、数メートル手前まで進むと勇作達は片膝を付いて頭を下げた。

 本来ならば平伏するところかも知れないが、生憎、勇作達は王国の家臣でも国民でも無い。

 頭を下げているだけでも最大級の礼を尽くしているのだ。

 勇作達の態度に貴族達からひそひそと批判の声が聞こえて来た。

 「静粛に!国王陛下様のご入場である」プロイス宰相は近衛騎士を一瞥した。

 部屋の奥にある大きな扉が近衛騎士によって開かれ、壮年の白髭を生やし大きな王冠を頭に戴いた男性と白を基調としたロングドレスに身を包み首元には様々な宝石の首飾り、額にはこれでもかと大きな宝石がいくつも輝くティアラをした中年女性が入って来た。

 多分、この二人が国王と王妃だろう。それぞれの後には若い男女が王冠やティアラこそ付けていないものの、豪華な衣装に身を包んで入って来た。

 国王、王妃が椅子に腰掛けるとその左右に若い男女が並んで立った。

 それを見届けた宰相は「勇作殿を初めとする異世界の民よ、これよりアサルド国王様よりお言葉がある」と告げた。

 「余がアサルド王国国王をしておるイェティス・ルーク・アサルドじゃ・・顔を上げられよ、異世界の民よ」

 勇作達は一斉に顔を上げ、国王を見た。穏やかな顔立ちで中々のナイスミドルだ。

 「我らが遭難しエルピス島に流れ着いた、異世界の民と呼ばれている者です、本日はご招待頂きましてありがとうございます」

「そなた達は我が国の島々で出没している巨大海洋生物を何回にも(わた)って討伐してくれた、国民に成り代わり礼を言わせてもらう・・して何かしら恩賞を出したいと思うておるのじゃ、宰相と相談してくれると良い」

 「私からも礼を言わせて下さいな・・我が国民を守ってくれてありがとう」とソフィア・アルク・アサルド王妃殿下からも礼を述べられた。

 国王と王妃はそこまでと言うと謁見の場から退席した。

 宰相から謁見の終了が告げられ、勇作達は別の部屋に案内された。


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