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「孤島立国」異世界で自分達の国を作ろう   作者: 八神夕輝
第一章 アサルド王国
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【八】王都への招待状

 勇作達は飛行艇カーチスと水陸両用ホバーに分乗してアサルド王国の属島である一つの島に向かっていた。

 王国の宰相からの提案を受け入れた結果である。

 マルカナ島以外の島は四島あるが距離の近い順にコナトラ島、サーミル島、トゴイル島、ラスターヤ島と続く。

 マルカナ島は島民五百人程の中規模島だが、属島の中で最も広い面積を持ちアサルド王国にも近いサーミル島は島民が三千人を超える規模らしい。

 コナトラ島はマルカナ島と同規模、逆にトゴイル島は最も小規模でシステア共和国に近い位置にあり島民二百人程のようだ。

 ラスターヤ島はアサルド王国から最も遠く、ルビナンス教国に近い位置にあり島民千人ほどの規模だ。

 勇作達が今、向かっているのはマルカナ島から最も近いコナトラ島である。

 最近、シーサーペントが複数出現していて、島民は漁どころでは無いらしい。

 ホバーにはカーチス離発着用のプレーンポートが上部に新設された。

 通常の飛行艇では滑走路(海上)が無いと離発着できないが、カーチスでは収束エネルギーエンジンの向きを変える機構を組み込んで垂直離発着が可能にした。

 カーチスを上部に乗せたホバーがコナトラ島の港に入港すると、王国から既に連絡が入っていたようで村長以下百人程が出迎えた。

 初めて見る大きな機械の塊に目を見開いて驚きながらも勇作達を歓迎してくれた。


 勇作達は村長宅でシーサーペントの情報を入手した。心配そうな村長以下島民達をよそに明朝からの討伐に備えて早めにホバーで就寝した。

 翌朝、朝食を済ませた勇作達は村長へ討伐に向かう旨を伝えるとコナトラ島を出港した。

 出港して十分程でシーサーペント出現海域に到着した。

 カーチスは花梨が操縦して空から、ホバーは愛理の操縦で海上から哨戒を行っている。

 花梨から無線連絡が入った。「海面に巨大なものが浮いて来ますわ、ご注意を!」

 ほぼ同時に愛理からも警告が入った。

 「ホバー前方に巨大海洋生物と思われる物体が接近中!その数二体です」

 勇作は全員に通達した。「総員、第一種戦闘態勢!各自の判断で攻撃開始!」

 その直後、海面から二体のシーサーペントが出現した。片方は前回討伐したものより遙かに大きい。

 ホバーは波の影響を避けるため、海面から一メートル程浮かんだ状態を保っている。

 心愛のエネルギー収束砲が火を噴いた。大きいシーサーペントは辛うじて避けられたが小さい方は頭部を打ち抜かれて海面に落ちた。

 大きいシーサーペントが凄まじい金切り声を上げながら、ホバーに体当たりしようと突進して来る。

 志摩と希美が前に出て杖鞭を飛ばす。先端が接触したと同時に最大出力で一万ボルトの電撃を見舞う。

 シーサーペントは身体の半分ほどを黒焦げにしながらも突進を止めない。

 続いて、早苗と陽鞠が前に出た。

 裂帛(れっぱく)の気合いと共に早苗の二刀居合切りと陽鞠の薙刀唐竹割りが三閃(さんせん)真空刃となってシーサーペントに襲いかかった。

 六つの肉片に切り分けられたシーサーペントは海面に崩れ落ち絶命した。

 小さい方のシーサーペントはカーチスに乗る花梨が機体に装備された収束機関銃を浴びせ掛けてこれも絶命させた。

 時間にして五分にも満たない討伐戦は勇作達の圧勝に終わった。


 シーサーペントだった肉片を粗方回収するとコナトラ島に凱旋(がいせん)した。

 この肉は毒も無く、上質な鶏肉に似てとても美味しいことはマルカナ島での討伐時に確認済みだ。

 一部は保存用の燻製(くんせい)肉として勇作達が使用したが、ほとんどの肉は島民に提供された。

 今回は二匹のシーサーペントを仕留めたため、使えない部位を廃棄しても大量の肉が余る。

 勇作達は燻製肉の作り方を島民達に伝授して、保存できるよう協力を行った。

 その後、島中を上げて宴が催された。よほど嬉しかったのか島民のほとんどが宴に参加している。

 まるでかつての世界の「夏フェス」である。

 島では海風を受けても育つ小麦に似た作物から発泡酒であるエール(ビールのような物)の生産が盛んだ。

 島民達から次々と進められたメンバー達は全員最後にはぶっ倒れてしまった。

 このエールだが、アルコール度数は高いのに島で取れる果物のエキスをブレンドしたフレーバーエールだったが失敗した。

 口当たりが良過ぎて自覚の無い内に大量に飲んでしまったのだ。

 翌朝、島民達からの熱い見送りと、数多くのお土産を持たせてもらって帰路についた。


 今回の討伐で勇作達に対して警戒感の無くなったコナトラ島から正式に話があって、輸出入の取引が始まった。

 マルカナ島までに比べて三倍近い距離のあるコナトラ島だが、空路の移動手段を手にいれた今となってはさほどの苦労も無く行き来できる。

 エルピス島からコナトラ島への輸出品の中では蜂蜜を使用した蜜酒や加工食品、美容食品が特に喜ばれた。


 コナトラ島の討伐戦後、十日程経った頃に王国国王からの親書を携えた騎士団がエルピス島にやって来た。

 親書の中身は「王国では困難な討伐依頼等の事態の収拾に当たることを条件に、異世界から来た民に対してエルピス島の所有権を認め、不可侵を約束し、共に友好を築けることを願う」と言うものだった。

 また、補足事項として「異世界から来た民から要請があれば必要とされた物資を無償で提供する用意がある(但し、上限はある)」とあった。

 実際のところ討伐に関してはその対象が曖昧(あいまい)で、王国にとって討伐対象であるとなれば勇作達はその都度出陣しなければならなくなる。

 親書の中身については先日、宰相と約束したものに近い。

 「討伐対象」の明確化と勇作達がその必要性に賛同した場合に限り討伐に当たるという二つの条件を付けて送り返した。

 返答によっては、今後、討伐は行わないことも付け加えた。

 ただ、実際のところは付き合いのある二つの島からの依頼は受けるつもりだったが。


 それから一ヶ月程して王国から騎士団が書簡を持ってきた。

 王都とエルピス島ではかなりの距離があるのに、仕事とは言え何度も来てもらって騎士団の皆さんご苦労様である。後で美味しい蜂蜜酒を進呈しよう。

 書簡の内容は基本的に勇作達からの要望を受け入れた形だ。

 最終的な合意として勇作達からの回答を持ち帰りたいらしい。

 更に、どうしても王都に一度は来て欲しいらしく、これは譲れないとのこと。

先程の書簡とは別に宰相からの王城への招待状を手渡された。

 以前、王都への招待は断ったのだが国の重要政策を決定するのに、一度もあったことが無いというのもマズイらしい。

 王国には四季がある。と言ってもかつての世界で言う程の気温差があるわけでは無いが。

 現在は四季で言うと秋に当たる。雪の降ることは無いだろうが真冬になる前に一度、行っておくか。

 勇作は招待に応じるため、十日後にこちらを出発することを伝えた。

 騎士団は皆、ホッとした表情で王都へ戻って行った。


 騎士団が王都に戻って行った日から十日後、勇作達はホバーに乗り込んでメンバー全員で拠点を出発した。

 今回は初音と花江も連れて行くことになった。

 これは王都までホバーで片道五日間、往復十日間も掛かるためだ。

 滞在期間入れると約二週間の長旅になる。その間、拠点に戦闘力の無い二人だけにするのは危険と判断したからだ。

 このため出発までの十日間はほぼ拠点の無人防衛の為に費やされた。

 その甲斐あって防衛システムはかなり良い線まで持って来ることが出来た。

かつての世界の〇ベルの塔のとまではいかないが、その出来に勇作達は満足していた。

このシステムが機能すれば、巨大生物から複数同時攻撃でもされない限りは問題無く排除できるはずだ。

また、カーチスは最初から奥の手を全て(さら)したくない意図もあって、拠点内の待機場に置いてきた。


勇作達は、一番近くに位置するマルカナ島を経由して、コナトラ島へと進んだ。

両島の民達は王都に向かう勇作達を我が事のように喜び送り出してくれた。

そこから一路、サーミル島を目指した。コナトラ島までは一日、サーミル島までは二日で三日間の航程である。


 サーミル島に寄港したのは夕方になった。

 ここまで交代制でホバーを走らせてきたので、島内に入って暫しゆっくりすることにした。

 見慣れぬ不思議な形と駆動音(実際には噴射音がほとんどなのだが)に島民は目を丸くしたり、珍しそうにしながらも遠巻きに見ていた。

 サーミル島の町長宅を訪ね、寄港の許可と目的を説明した。

 巨大海洋生物討伐の噂はサーミル島へも届いていて、勇作達は思いの外、歓迎されることになった。

 アサルド王国から最も近くに位置するサーミル島は政情も安定し、島民は不自由無く暮らしているようだ。

 勇作たちの知る二島に比べると町全体に活気があって、市場にも沢山の品物が並んでいる。

 島内でサーミル島の特産品(畜産が盛んで肉製品、乳製品、革製品などが溢れている)を使った夕食を町長宅で戴いた。

 明日も早いので酒類は極力控え、就寝のためホバーに引き上げた。

 翌朝、町長に出港する旨を伝え、一路、王国を目指して出発した。


 サーミル島を出港して一日半、昼過ぎには王国の港町、ハミルブルックに到着した。

 港にある検問所の衛兵に王国騎士団から手渡された王城への招待状を見せた。

 そうそうお目に掛かることの無い王国宰相からの招待状に衛兵達は怪訝(けげん)な表情をしながらも「確認するゆえ、しばし待たれよ」と言い残して詰め所に入って行った。

 書類を確認したところ、勇作達が来たら最優先で通すよう通知が出ていたらしい。

 先程とは打って変わった緊張した面持ちで「確認が取れました、お通り下さい」と衛兵が深々と敬礼して来た。

 ところがここで問題が発生する。検問所のある門は馬車などが十分通れる間口を持っているのだが、勇作達の乗ってきたホバーは大きさの桁が違った。

 仕方無く、衛兵と相談の上で検問所の左右に延々と続く高さ三メートル程の壁を浮上させてホバーで乗り越えた。

 宙に浮く巨大な物体に呆気(あっけ)にとられる衛兵と目を見開いて腰を抜かす住民達を残し、勇作達は王都に向かって出発した。

 王都までは一日程の距離なので、途中、一回の野営?をする必要がある。

 ただ、ホバー内の居住区で食事や休息を取るので、はたしてこれを野営と言うかどうか難しいところだ。

 シャワールームも完備されていて、動くホテルといったところである。

 宿場町に寄らなかったのは、ホバーの存在が目立ちすぎて面倒だったからである。

 「野宿ゆうてもホテルと変わらんな、快適や・・」「本当だねぇ、心愛達に感謝だねぇ」

 作戦指令室で濡れた髪を乾かしながら志摩と早苗の二人は感心していた。

 夜間は二名ずつ交代でホバー搭載機器の監視に当たることになっていた。

 夜半に一度、三メートル近い狼らしき動物が複数匹ホバーに近寄って来たが、警告音を発しただけで一目散に逃げて行った。

 メンバー達は朝食を済ませた後、王都に向けて出発した。


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