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悪役令嬢は第一王子に溺愛される。

作者: 下菊みこと

コミカライズ記念の新作

「クリスティーナ・バイルシュミット!貴様との婚約は破棄させてもらおう!そして今この場で貴様の罪を断罪する!」


はじめまして、ご機嫌よう。クリスティーナ・バイルシュミットです。公爵令嬢です。ただ今、学園の卒業パーティーの場でこの国の第二王子で王太子のカイル・フィリップ王太子殿下から婚約破棄され、有りもしない罪で断罪されそうになっています。


「あの…カイ様、私の罪とは…?」


「惚けるな!貴様レティを虐めただろう!」


「カイ様ぁ。怖かったですぅ…」


カイ様の横に立ち、勝ち誇った顔をしているのはレティシア・クーベルチュール様。男爵令嬢です。元は平民でしたが、クーベルチュール男爵の妾腹の実子であることがわかり男爵家に引き取られました。そして貴族や王族の通うこの学園に転入してきて、早々にカイ様の恋人となられたのです。婚約者の私を捨て置いて。


「へえ。面白い冗談だね?カイ」


そこに割って入ってきて、私を庇うように背に隠すのはこの国の第一王子であるアルバート・フィリップ王子殿下。第一王子でありながら、平民の母を持つ妾腹の子であるためカイ様に王位継承権を譲られた、とても優秀で誠実、お優しい方です。カイ様の婚約者でありながら、カイ様に蔑ろにされてきた私をいつも慰めてくださった、私の初恋の方。妾腹の子でなければ、優れた王になっただろうと言われています。


「兄上!冗談ではありません!この女は男爵令嬢であるレティを虐めたのです!王太子妃に相応しくありません!」


「うんうん。証拠はあるのかな?」


「レティの証言です!」


「それ以外は?」


「えっ…」


「…それ以外の証拠はないようだね。みんな、どうだろう?クリスティーナ嬢がレティシア嬢を虐めたところを見た者は?」


さっきまでざわついていたパーティー会場がシーンとなります。誰も何も言いません。


「おや、誰一人として見ていないの?可笑しな話だね?」


「…っ!」


「兄上、信じてください!レティが嘘など吐くはずがない!」


「あっそ。一応言っておくけど、もし万が一クリスティーナ嬢がレティシア嬢を虐めていたとしても、公爵令嬢がたかだか男爵令嬢を虐めたくらいでは罪には問えないよ。でも、まあ。婚約者であり公爵令嬢であるクリスティーナ嬢を信じず、レティシア嬢の言葉を鵜呑みにしたお前には過失はあるよね」


「えっ…」


「まあ、まあ。とりあえず、そこの神官見習い君。婚約破棄の書類をくれる?」


「は、はい」


神官見習いの卒業生が書類をアルバート王子殿下に渡します。


「はい、クリスティーナ嬢。書いて」


「…はい」


何故婚約破棄の書類に署名捺印しなければならないのかはわかりませんが、アルバート王子殿下なら悪いようにはなさらないでしょう。大人しく書き、判子を押します。


「カイ、お前も」


「はい!」


嬉々として署名捺印するカイ様。


「神官見習い君、受理して」


「はい、受理しました!」


「では次に、レティシア嬢とカイの婚姻届を」


「アル様ぁ。ありがとうございますぅ!」


「兄上、ありがとうございます!」


そうしてレティシア様とカイ様の婚姻届も受理されました。


「さて、ティーナ。君もこの婚姻届に署名捺印を」


「えっ…」


「これは父上からの〝王命〟だよ。さあ」


えっ、王命?


とりあえず署名捺印をします。


「あとは僕が署名捺印して…はい、神官見習い君。受理して」


「はい、受理しました」


えっ…私、アルバート王子殿下と婚姻したの?


「!?待ってください、兄上!何故兄上がその悪女と!?」


「口を慎め、カイ。これよりティーナは僕の妃だ」


カイ様を睨みつけるアルバート王子殿下。


「アル様ぁ。そんな悪役令嬢と結婚しちゃダメですよぉ」


「悪役令嬢…?ああ、そういえば最近そういう劇も流行っているね。…僕からすれば、君の方が悪役令嬢だが」


「なっ…」


「兄上!いくら兄上でも、王太子妃を侮辱するのは許されません!」


カイ様の言葉を聞いてきょとんとするアルバート王子殿下。


「何言ってるの?王太子妃はティーナだよ?」


え?


「え?」


「は?」


「カイ、お前は正妃の子とはいえ、公爵令嬢であるティーナとの婚約破棄を父上…王の承諾無しに行った愚か者だ。しかもこれで公爵家の後ろ盾も失った。お前はクーベルチュール男爵家の婿養子になるんだよ。これはお前の不貞を知った父上からの王命だ」


「は?なによそれ!聞いてない!私、王妃になれるんじゃないの!?」


「兄上!嘘ですよね!?父上が俺を見捨てるなんて!」


「いや、本当だ。そして、王命により僕とティーナは結婚する。僕は妾腹とはいえ、公爵家の後ろ盾を得た。よってお前の王太子位は剥奪され、僕が王太子となる。これからはティーナが王太子妃だよ」


あまりのショックに顔面蒼白なレティシア様。そして頽れるカイ様。私は怒涛の展開に呆然としています。


「さあ、みんな!騒がせて悪かったね。引き続き卒業パーティーを楽しんでくれ!さあ、ティーナ。踊ろう」


「は、はい。アルバート王子殿下」


「結婚したんだ。アルでいいよ」


「はい、アル」


「素直で可愛い」


私の頬にちゅっとキスをするアル。まさか、初恋の方とこんな形で結ばれるなんて…。人生、わからないものですね。


「結婚式と披露宴はまた後日改めて行おうね」


「はい」


「…実はね、幼い頃から、ティーナに少しずつ惹かれていたんだ。だからこの歳までわがままをいって婚約者を作らなかった。好きだよ、愛してる。ティーナ」


「まあ…!嬉しいです。私も…実は、幼い頃よりお慕いしております」


「本当?嬉しいな。これからよろしくね、ティーナ」


「はい、アル」


なんだかんだとありましたが、私、幸せになれそうです!

『悪役令嬢ですが、幸せになってみせますわ!アンソロジーコミック』の第3弾が7月27日(月)発売です!

定価780円+税

ISBN 978-4-7580-3534-7



〇内容紹介


大人気アンソロジーついに第3弾!

『悪役令嬢ですが、幸せになってみせますわ!アンソロジーコミック』の第3弾が7月27日(月)発売!!

「小説家になろう」発の人気読み切りコミカライズアンソロジー、大好評につき第3弾!!


私の書いた短編、『嫌われている相手に嫁いだはずがいつのまにか溺愛されていました』が収録されています。


コミカライズしていただき書籍化していただけたのも全て皆様のおかげです。ありがとうございます。もしよければ是非手にとっていただけたらと思います。

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