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エッセイ、ヴィーガン関連

牛肉の危険性と欧米で広まる『嫌肉ブーム』タバコの次は牛肉か?

作者: NOMAR

(* ̄∇ ̄)ノ 寄才ノマが極論を述べる。アメリカ産の牛肉について調べてみたぞ。


 2020年1月

 アメリカで第77回ゴールデン・グローブ賞の祝賀ディナーで、初めてヴィーガンメニューが出された。肉無しのディナーが出るのはゴールデン・グローブ賞のディナーでは史上初。

 これに菜食主義者のホアキン・フェニックスは喜び絶賛したという。


 ゴールデングローブ賞で肉無しディナーを出したのは気候変動対策の為だとか。


 欧米では近年、肉食がもたらす環境問題を考慮し、ヴィーガンの食生活を取り入れる人が増加していることを受けてのこと。

 肉を生産する過程では、多くの温室効果ガスが排出され、気候変動に影響を及ぼしていると考えられ、また魚についても水産資源の乱獲が世界の問題となっている。


 祝賀ディナーのヴィーガンメニューでは、デザートを含むすべてのメニューには、肉魚や乳製品はもちろん、動物由来であるゼラチンなども含まれていないという。


 深刻化している気候変動への危機感から、欧米ではヴィーガンになる人が若者を中心に増加している。


■アメリカ肉事情


 アメリカでは若者の牛肉離れが進んでいる。

 もともとが肉食寄りのアメリカでは肥満が問題になっていた。アメリカ人の約7割が太り過ぎで、総人口の4割は心臓疾患や糖尿病などの病気を併発する肥満症という状況。


 肥満問題が深刻化する中、流行したのがオーガニック食品。健康に関心を持った人達が、自分たちが何を食べているのかに関心が高まっていった。

 オーガニック・ブームとなり、人々は有機栽培表示にこだわるのと同時に、スーパーに並ぶ野菜や肉がどのように作られたかに関心が持たれるようになった。


 また、アメリカでは国民皆保険が無いために、健康を維持し病気の予防になる食生活の改善に意識が高まっていく。国民皆保険が無いことで治療費が高くなることから、病院の世話にならないように日頃から心がけるようになる。

 食品を買う前に、産地や食品成分表をチェックするようになり、情報がネットに上がる。

 特に熱心になった世代はデジタルネイティブの1970年代後半産まれのミレニアル世代から。


■肥育ホルモン剤の使用


 米国産牛肉の多くは肥育ホルモン剤として、エストロゲンなどの女性ホルモンを投与されて育てられている。


 家畜における合成肥育ホルモンの継続的な使用が安全であるかどうかについて、未だに因果関係の立証は難しいが、EU諸国では肥育ホルモンを使用して育てた牛肉の輸入を一切認めていない。また、日本も肥育ホルモン剤を使用しての畜産は認めていない。


 1970年代半ばから1980年代初めにかけて、プエルトリコなどで幼い女の子の乳房が膨らむ、幼いのに月経が起きるなど、性的に異常な発育が続出。

 その原因がアメリカ産の牛肉に残留した合成肥育ホルモン剤

『ジエチルスチルペストロール』

 とされた。その後、アメリカでは1979年に使用が禁止に。


 ただし、同種の合成女性ホルモン剤は今も使用され続ける。

 ヨーロッパで家畜へのホルモン剤投与反対運動が起こり1988年に使用は全面禁止に。

 1989年には合成女性ホルモン剤を使用したアメリカ産の牛肉などが輸入禁止になる。

 女性ホルモンを多く利用、服用すると乳がんが増えるという研究データもあり、ホルモン剤を使用された家畜の肉はガン発祥リスクが高まるとされた。


■肉の表示


 ヨーロッパの輸入禁止措置を受けたことで、アメリカの精肉売り場でも、

『HRMONES FREE』

 と、肥育ホルモン剤不使用と表示された牛肉が人気となる。


 牛肉を買うときは、少し高くとも肥育ホルモン剤を使用していない牛肉の方が健康に良いとされる。また、肥育ホルモン剤を使った牛肉を食べることを嫌って、アメリカ人の牛肉離れが進行する。


■畜産ドキュメント


 SNSでシェアされる家畜に関するビデオやドキュメンタリー映画が、現代の畜産の状況を広く人に伝えることになった。


『フード・インク』

 2008年のアメリカ映画。アメリカの食品産業に潜む問題点に切り込んだフード・ドキュメンタリー。


『カウスピラシー』

 牛の畜産業は地球を破壊している産業であることを詳細に描いたドキュメンタリー映画。


 畜産業の問題点。広大な農場に散布される農薬、遺伝子組み換え問題など。大量生産低コストの裏側にあるリスクを伝え、オーガニック・フードの本当の価値を訴えるドキュメント。


 フード・インクでは、窓の無い建物の中で、自分の糞尿に足首まで浸かって育てられる牛。

 日光が全く当たらない屋内で成長を早めるために、肥育ホルモン剤や抗生物質などを与えられ、骨の成長が追い付かないために歩けなくなったニワトリなど、衝撃的な映像がある。


 デジタルネイティブ世代がこれらのドキュメントをネットで知り、影響を受ける。

 かつて、クジラを食べるのは可哀想、という論があったが、今では牛を食べるのは可哀想、という人が増えて来た。


 自分達が日頃、口にする肉がどれほどひどい状況で育てられているかが、インターネットの発達と共に広く知られるようになった。


■インスタ映え


 2014年からアメリカではインスタ映えするサラダ・ボウルがブームになる。ニューヨークなどの都市部でサラダ専門店が流行に。日本でも2015年からサラダ専門店が増加する。


 地元の農場や自主農園のオーガニックフードを売りにしてファーストフードに迫る勢いになる。健康に良くて見映えがいいサラダ・ボウルは、ヴィーガンの増加と共にヘルシーなランチとして、またインスタ映えからSNSでも人気となった。


 安い牛肉を食べるのがダサイ。肉を食べないのがオシャレでクール、という若者が現れ始める。


■40年で半分に


 アメリカでは、かつては牛肉が多く消費されていた。 

 1976年には1人あたり年間40kgほどの牛肉を食べていたが、2018年には1人あたり20kgほどに減少した。


 牛肉の需要が減少していく風潮は続く。アメリカではミートフリーマンデー運動、週に1日月曜日は肉を食べないようにすることで、地球環境を守ろうという運動をポール・マッカートニーが提唱している。

 肉食を減らすことで地球温暖化を食い止め、資源を守り、多くの動物の命を助けよう、そして、健康な身体を手に入れよう、というもの。


 2019年3月、アメリカのニューヨークの全学校でミートフリーマンデーが導入。


 デブラシオ市長は『肉の消費を少しでも減らすことはニューヨークに住む人々の健康改善につながり、温室効果ガスの排出量削減にもなる』と訴えた。


 同様の政策は同市ブルックリン地区の15の学校で2018年に始まり、毎週月曜日にベジタリアン向けの朝食と昼食が提供されているが、今後はニューヨーク市内すべての学校に拡大される。


 カリフォルニア州のサンフランシスコ、その他管轄区の公立学校数百校では、既にミートフリーマンデーが実施されている。民主党が用意した新しい法案では、生徒にヴィーガン向けの食事も選択できるように提案がなされている。


 今後はますますアメリカ国内での牛肉の需要は冷え込むと見られている。


■アメリカンビーフの関税引き下げ


 これまで38.5%だったアメリカ産牛肉の関税は、日米貿易協定が発効した2020年から26.6%へ引き下げ。今後も段階的に関税率は下がり続け、2033年4月には9%にまで下がる予定とのこと。


 今後、アメリカで売れ残るホルモン剤で育てられた牛肉の余剰生産を日本で処理するつもりなのだろう。


 日本では畜産に肥育ホルモン剤の使用は認められていない。

 しかし、肥育ホルモン剤を使用した牛肉の販売は禁じられてはいない。また肥育ホルモン剤の使用を表示する義務も無い。

 ヨーロッパではガン発祥リスクが増加する危険性から輸入禁止になるものが、日本では非表示で販売してもいいことになる。


■食の安全後進国の日本


 食の安全基準では日本は世界に遅れをとっている。

 日本産のカツオ節がHACCP基準に合致していないという理由で、イタリア政府の輸入禁止処分を受けている。食品の安全管理のシステムついては日本は後進国。


 例えばカドミウムであれば、国際的な食品の規格(コーデックス規格)では、米、小麦、穀類、豆類、根菜類、果菜類、海産二枚貝、頭足類、などなど多くある。

 しかし、日本の食品でカドミウムの安全基準があるのは、米、清涼飲料水、粉末飲料の三種類のみ。

 この三種類以外の食品では、製造中にカドミウムを混入しても違法にならない。安全基準そのものが無いのだから。


 コロナウィルスで延期されたが、日本政府は五輪開催までに食の安全を世界基準に引き上げることがひとつの目標。


 2020年6月より日本でもHACCPが義務化となる。世界中で採用されている衛生管理の手法を導入し、食品安全後進国から脱却しようというもの。

 欧米の基準に適合する食品でなければ東京オリンピックの選手村で採用されないだけでなく、欧米に食品を輸出することができないことになる。


■日本の嫌肉ブームは?


 日本は欧米ほどに嫌肉ブームとはならないのではないだろうか。

 環境保護よりも個人の健康が重要視され、肉と野菜をバランスよく食べることが良い、という人が多いと思われる。

 また、ホルモンフリー、肥育ホルモン剤使用肉、といった表示義務も今後のアメリカの余剰農産物を輸入し続けるためには不要とされることだろう。


 個人的には食の好みは選ぶ自由はあった方がいいと考える。

 クジラ、イルカ、犬、といった食肉も歴史的、文化的な背景のある民族もいる。これらはひとつの文化として伝え残す方がいい。


 ただ、牛肉にも肥育ホルモン剤使用という表示はつけて欲しい。スーパーの売り場で、どれが肥育ホルモン剤使用肉か、どれがホルモンフリーなのか、分かりやすくして欲しい。


 タバコのパッケージには、

『喫煙は肺がんをはじめ、あなたが様々ながんになる危険性を高めます』

 と、注意書が書かれている。


 肥育ホルモン剤使用牛肉も同様に、

『肥育ホルモン剤使用牛肉は乳がんをはじめ、あなたが様々ながんになる危険性を高めます』

 と、表示して欲しい。


 肺がんになっても構わないとタバコを吸う人がいるように、がんになってもいいから安くて美味しい肉を食べたい、というのは個人の好みであると考える。食べたい人は食べるといい。


■知らぬが仏


 だが、こういう話をすると、知らなければ良かった、と怒る人がいる。なにも知らなければアメリカンビーフを安くて美味しいと食べることができたのに、と。

 安くて美味しい肉を食べ、それでがんになってもそれは運が悪かった、と知らなければ済む話ではある。

 そして知らない方がいい、という人が多いから日本は食の安全基準では後進国なのかもしれない。


 以前に世界で増加するヴィーガンについて調べてエッセイを書いたところ、肉と野菜をバランス良く食べるのが健康に良い。人はもともと雑食だ、という感想をいくつか頂いた。

 このバランス良く、という部分は耳障りが良いのだが、どれくらいの分量が良いバランスなのか、という部分が私にはよくわからない。


 日々の体感は時間の経過で少しずつ変化する。また、安い食材が出回れば家計の為に安い食材を買う人も増えるだろう。


 農林水産省の食料需給表によると、日本の肉類の1人あたりの年間消費量は、1960年度は5.2kgだったのに対し、2016年度は31.6kgに増加。6倍にも増えている。

 約60年で6倍に増えたものの、どの辺りに良いバランスがあるのだろう? 今ではアメリカ人の約1.5倍の肉を食べていることになる。

 また、アメリカンビーフが関税引き下げから安くなり、多く輸入するようになれば今後、7倍、8倍と増えていくかもしれない。


 個人の健康の為には肉と野菜をバランス良く。これが理想というのは理解する。

 しかし、地球の健康という点では畜産のバランスは既に壊れかけている。


 とりあえず、スーパーなどで売られる肉類には肥育ホルモン剤使用の表示義務をつけて欲しいところだが、あまり期待はできなさそうだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  またか、って感じですけど、どこの世界の嫌肉ブームですか。バイアス全開の偏向エッセイやなぁ。 フォーブスからの引用 >米農務省(USDA)によれば、米国人の肉の年間消費量は今年、過去…
[一言] 中々難しいですね。海外と日本では飼養基準が違いますし、海外と言ってもそれが統一されてる訳じゃないので。 一応、輸入規格は存在するけど、だから安全という訳じゃないですし。 しかし、日本は輸出…
[一言] 常々思うのは、人ってのはなんで極端論にしか向かわないのだろうということ。 食べる肉の量を減らそう、とならずに何故か肉食けしからん! と走るのはなんなんでしょうね。 まー、他人に強要しなければ…
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