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騎士学生の英傑  作者: えす
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入学式編【2 】

武道館まではあっという間に着き、担当の教員に案内され共刄とは別の控室に着いた。

まさに控室という感じで特に何もあるわけではなくこじんまりした部屋だった。

俺はいつも試合の前は精神統一をして魔力の流れを落ち着かせるようにしている。その後に武器の手入れだ。

と、言っても六英刀ろくえいとうクラスの武器は素人が手入れを出来るようなものでも無ければよっぽどなことが無ければ手入れをする必要はない。することと言えば魔物を相手にした後、洗って血を落とすくらいだ。

俺は今までに数回、中等騎士団と言われる騎士団見習の様な所にいた時に魔物討伐に行った事がある。

魔物と言ってもピンからキリで、中等騎士団が相手するのはせいぜい知能を持たないと言われる魔物だった。


精神統一を済ませ、武器の手の馴染み具合を再確認し終わりしばらくすると教員がやって来た。

「如月君は1試合目ですので、準備が出来たら声をかけてください」

「了解です。先生。自分はいつでも行けます」

「そうですか、さすがに段取りが早いですね、では付いてきてください」

俺は無銘刀を鞘に収め、教員に付いていった。

歩いて数十メートル歩いたところで少し上に上がる階段を登り扉の前で止まった。

「では、ここで待っていてください」

中等部の時から試合を何度も経験しているから手慣れたものだ。初めてのときは緊張して息を荒らして落ち着きがなかったな。

でも今は違う。目を閉じて呼吸を整え魔力回路を開くイメージをする。そして相手の攻撃に対してどの魔法で対処するか、立ち回りはどうするか考えた。


そうしていると扉がゆっくり開いた。

俺はゆっくりと扉の先の階段を登った。

すると、登りきった先に見えたのは先ほど知り合ったばかりの黒髪で若干筋肉質の神崎共刄だった。

「おお、こりゃあ聖都じゃんか!まさかお前が相手とは、楽しめそうじゃねえか」

「あぁ、俺も共刄と試合をやってみたいと思っていたところだ」

俺等が今立っている試合場は武道館の1階部分だ。2階部分からは観戦席となっている。

正確な数はわからないがセリギアント学園の中等部、高等部の全生徒が入っても余裕があるくらいだ。

客席は満員。毎年入学者の試合は人気があり高等部はもちろん、中等部の生徒や貴族達も見に来るほどだ。

「おうおうおう!この神崎共刄様の華麗なる剣技を見る為にこれ程の人が集まるとは…ふふふふふふははははは!心高ぶってきたぜ!何だよこの学園、最高だよ!そして貴様もだよ聖都!歩いているのを見るだけでわかるその身のこなし、相手には不足なし!」

「そう言っていただけるとありがたいな共刄。いい試合にしよう」

「それでは…試合開始!」

審判の合図だ。さぁ、共刄はどうくる?

とりあえず無銘刀をいつでも抜けるように構える。

「天才、神崎共刄様…まかり通るぜ!」

!?

10メートルあった距離から共刄が一気に詰めてきた。

正直エクスカリバーの情報が少ないから最初からこんなに距離は詰めたくなかった。

向こうも何らかの魔法攻撃で徐々に詰めてくるものかと思った。

咄嗟に無銘刀を鞘から抜き初撃を防ぐ。

「ふははは!防いだか、俺の一撃を!だがこれはどうかな!」

エクスカリバーの刀身が光り始めた。恐らく魔力を放出するんだろうけど、どんな属性のどんな魔法なのか見当がつかない。

「っく」

キィン

なんとか共刄のエクスカリバーを弾いて距離を取れた。

考えろ、次はどう来る。

俺は初めて対戦する相手のことはよく観察してからじゃないと突っ込めない。

正確に言えば先代の当主。父からの教えだった。相手をよく見て必殺の一撃を与えろ、と。

物心をついたときから剣の指導をされていたためそうしないとむず痒くてうまく立ち回れない。

「ふむふむ。弾いて距離を取られたか。なら!付加エンチャント聖なる炎ォ!」

聖なる炎?なんだそりゃ!?え!?

柄にもなく内心凄く焦った。炎!?火属性の付加じゃなくて?炎!?

みるみるうちにエクスカリバーの刀身には火属性が付加され火を纏っていた。

「何だよ、炎って言うから焦ったじゃないか」

「何を言っている、聖なる炎だよ。俺様の火は特別なんだよ!!!はあぁぁぁぁぁ」

また共刄が距離を詰めてくる。だけどさっきとは違い普通に走って来ている。なら!

「付加、雷!」

付加には付加、と言うのが鉄則だ。

今回は相手が六英刀使いと言うこともあるが、ブロンズソードだろうがミスリルソードだろうが、付加された武器での攻撃をそのまま防いでしまうと簡単に折れたり溶けたりする。

俺は無銘刀に魔力を流し更に左手を軽く刀身に触れ2重に付加をかける。

これは如月家だけが出来る二重付加ダブルエンチャントと言われる特殊なスキルだ。

そして如月家は雷属性を得意とし、2重に付加をかけることにより、この世で一番硬いと言われる黒曜石をも真っ二つにする事ができる。

この勝負の勝ち方は二重付加した無銘刀を一度鞘に納め、体にも雷属性を付加させ瞬発力を通常の数倍にもして、奥義「雷線」で共刄のエクスカリバーを弾き飛ばす。


「ほほう、聖都は雷属性を付加させたか。ふむふむ。ならばこれでどうだ!”氷塊”!」

共刄はこちらに左手を向け、そこから氷属性のつぶてを発射してきた。

予想外だった。誤算と言ってもいい。

普通、魔法の適正属性は1人1つとなっているからてっきり共刄は火属性だけを扱えるものだと思っていた。

だからこちらも手の内を見せることになるけど無銘刀の付加を行った。

どうする?体への付加をすぐにでもして避けながら雷線を使うか?だが氷の礫を避けてもエクスカリバーから火の斬撃が来る可能性も。それに最初に見せたあの移動速度。

落ち着け、集中しろ。

しかし氷の礫はもう目の前まできていた、これ以上は考えても意味がない。

体に雷属性を付加させ高速で礫をかわした。次はどう来る。

「アニキーーーー、そんな奴に負けるなーーー、いや、負けるはずないんだからなァァァァァァァァ!!!」

あの黒髪赤毛…龍斗りゅうとか、いつもは寝てるくせに今日はちゃんと見てるんだな。

「兄さん!必ず勝てますよ!だって兄さんは最強なんですから!」

横から言ってるのは小雛こひなか。あれほど龍斗の横にいるなって言うのに…。


でも、あの2人から見られてるから負けるわけには行かないな。腹くくるか。

「ねえねえ聖都。兄さんって言ってる子お前の妹?あの金髪の子」

「あぁそうだ。俺の自慢の妹さ。ついでに横にいるアホ面は弟」

「ほほうほほう。かわえええええええええええなぁぁぁぁぁぁあ!妹さん!俺様は神崎共刄と言います!この勝負でお兄さんに勝ったら付き合ってください」

ブーブーブー。勝てるわけ無いだろー。よそもんが小雛ちゃんに話しかけるな!

共刄、哀れ。完全にアウェーだなお前。

「いいですよ!でも私の兄さんに勝てたらですけどね!」

「まっかせてください。この共刄、今まで負けを知らぬ鬼神何ですからねぇ!!さあ来い聖都お兄様!俺様が勝って妹さんをいただく!!」

「いついただいていいって言ったよ…でも、お前が勝ったら良いって言ってるからな…」

「そうだろうそうだろう。だからこの勝負、勝たせてもらうぜ!」

ガキィン

「え」

共刄の間抜けな声が武道館に響いた。

勝たせてもらうぜ!って言った瞬間に雷線の準備を終えていた俺は居合いの一撃をエクスカリバーに食らわせ宙を舞わせた。

そのまま共刄の首元に刀身を向けた。

「そこまで!勝者、如月聖都!」

こうして共刄の不敗記録は呆気なく終止符を打たれた。



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