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迷宮世界の英雄譚  作者: ワンサイドマウンテン
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家具とかアイテムとか防具とか

遅くなりました。

 チチチと小鳥の囀りが聞こえる。

 窓からは朝日が差し込んでいる。どうやら朝らしい。

 ガバリとベッドの上で上半身だけを起こして目をこする。

 三十秒程そのままぼーっとしてそれから完全に起き上がった。まずは台所の水で顔を洗う。

 そして、んー、と伸びをして……伸びをして朝食をとりたいんだけど家には何もない。そう、装備一式(といってもボロボロのポーチと剣、服が三枚だが)と備え付けてあったベッドとテーブル以外にはこの家には今現在何もないのだ。


 至急外に出て朝の早い冒険者用にと開いている店で本来なら道中に食べられる軽食を買って食べた。ついでに昼の分も買うことを忘れていない。

 今日は一日体を休めるために街の外には出ない。つまり今日の収入はゼロになるわけだが無理をして死んでしまっては元も子もない。ただ、やることがあるのでしっかり休めるかどうかはわからないけど休む。

 そのやることとはダンジョンのような殺風景な部屋に家具とかを増やすこと、残った資金によるけど装備、一部でもいいから鎧を見に行くこと。それから、これも残った資金によるけどエルダさんの『ユグドラシル』に顔を出してアイテムなんかを少し買うこと。ミアさんにもうちの店をご贔屓に、なんて言われてるしエルダさんにも冒険者になったらユグドラシルで買って恩を返せって言われてる。それに少し見ただけでそんなに詳しくはないんだけどあの店で扱っているものはどれも質が良さそうだった。その分値段は張るんだろうけどランクが下の方のものもしっかりしていた。

 信頼できる店、ユグドラシルは例えミアさんやエルダさんと出会っていなくても贔屓にしそうだ。


 朝、いろんな店が開店し始めるころから家を出て生活に必要なものを揃えるため練り歩く。

 午前中のうちに椅子や食器類、服、それをしまうための戸棚といったものを買い揃えた。これで五〇〇〇ジールと少し。全財産の半分を持っていかれた。いや、半分で済んだと言った方がいいのかな。

 午後からは装備とアイテムを見に行くわけだけどお金が足りる気がしない。見るだけになるかも……。

 買った家具なんかを全部自分で運んだのでとても今日一日安静にはできなっかたな。結構重労働だった。そんなことを思いながら最後に買った戸棚を持ち帰ったついでに朝一番に買っておいた冒険者用の携帯食を食べる。


 さて、午後からはいよいよ装備を見に行く。剣もちゃんと手入れしたいので腰に下げていく。


 武具屋が集まっている場所は把握している。街の南西あたりに密集しているそうだ。

 そのあたりまで来るとちらほらと武具屋が見え始めてやがて乱立するようになってきた。

 どの店も店先にショーケースがありその中に店の最高の品が飾ってある。もちろんそれは売り物で値札も付いている。そこに飾ってある武器や鎧の質でその店のレベルの判断基準となる。もちろんその店を代表するものなので非常に高い。

 今の僕じゃあレベルの高い店に入っても何も買えない。そりゃあいくら優秀な鍛治士が作る武器、鎧といいったって値段もピンからキリまであるだろうけどそれでも手が届くかどうか怪しい。

 そこそこだと判断した店に何軒か入って見たけどやっぱり手が届くものは早々ない。それに店によってはそこそこと判断しても僕みたいな新人には場違い感があったりする。

(このままじゃ埒があかないな)

 多分、このまま見て回っても結果は同じだろう。

 先にユグドラシルに行ってみよう。

 というわけでユグドラシルに向かって足を向ける。


 やっと着いた。わかっていたけどやっぱりこの街は広い。午前に家と店とを家具を運んで往復したのも手伝ってさらに大移動。体を休めるどころか疲れた。


「あっ、シュリさん。来てくれたんですね!」


 店の前で一息ついているとちょうど何かの用事で出てきたミアさんと会った。

 僕を見つけるとパッと明るくなって(別にそれまで沈んでたわけではなさそうだけど)ババッと僕の手を握ってさぁさぁどうぞどうぞと導かれる。

 ていうか手!? 最初に会ったときも握ったけどあの時は必死だったわけで、その、女の人に耐性のない僕からするとこれはハードルが高いといいますか、しかも相手がミアさんみたいな可愛い女の子ともなるともうお手上げ。ボッと聞こえてもおかしくないくらい一気に顔が赤く染まる。

 ミアさんに導かれるまま店内に入ると今は店に人はいないようでエルダさんがすぐに僕を認識すると大きめの声で


「早速きたかい! 存分に買っていきな!」


 と笑いながら言った。

 あんまり多くは使えない僕からしたらちょっと困るわけではは、と愛想笑いをするしかなかった。


 どっしりと構えるエルダさん、後ろでニコニコと笑顔で見守っているミアさん。今、店の中が僕一人だけなので顔なじみというのもあって自然と視線やら気配やらが僕に集まる。

 ちょっと落ち着かないというか主にエルダさんのたくさん買いな! って感じの気配がプレッシャーになる。

 そうしてうろうろとしていると店の中の棚なんて全て見終わってしまった。扱っている品はいいそうだけどそんなに大きな店じゃないしね。


「どうですか? 何を買います?」


 全てを見終わって何も選ばない僕を見かねたのかミアさんが声をかけてきた。

 選ばないというよりは選べないというのが正しい。昨日の経験からポーションという飲めば回復できる不思議な液体は必要だと思う。けどたくさん買えよオーラを出しているエルダさんにポーションだけですなんて言えない。ポーションをたくさん買ってもいいんだけどどうせたくさん買うなら何か他にも、と思うのだ。けど道具(アイテム)のことなんて詳しく知らないから一体何を選べばいいのかわからないというのが今の状況だ。そこでミアさんが声をかけてくれたのはありがたい。まぁ、声をかけられなくても聞いてたかもしれないけど。


「えっと、ポーション以外の道具(アイテム)について全然知らなくて一体何を買ったらいいのかなって」


 それなら、とパンッと手を打っていくつか持ってきてくれた。


「これなんておすすめですよ。機能性抜群のポーチです! 見た目より多くのものが入ってさらに中で物が乱れにくくなってるんです。取り出しやすい位置にポーションを入れやすい構造になっていたりしていていて。あと素材も頑丈なので壊れにくいです。どうですか?」


「いくらするんですか?」


「一二〇〇ジールです」


 ……ポーチは持ってるけど昨日の戦闘でまだ辛うじて使えるけどボロボロになっちゃったしそのくらいの値段ならまぁいい、かな?


「じゃあ、そのポーチとポーションを二つ下さい」


「ありがとうございます。ポーションは最高ランクのものでいいですか?」


「はい……じゃなくて一番下のやつでお願いします!」


 ……商売魂が凄まじい。危うく笑顔に流されて一番高いのを買ってしまうところだった。けど今、カウンターの方で舌打ちが聞こえた気がするんだけど。もしかしてミアさんにこれを仕込んだのって……。


「Cランクポーション二つにポーチで合計一八〇〇ジールだよ」


 お金を払って商品を受け取る。……ってあれ?

 Bランクポーションが混じってる? でもCランクポーションが一つ三〇〇ジール。二つで六〇〇ジール。一二〇〇ジールのポーチと合わせて一八〇〇ジール。間違っていない。


「あの、僕Bランクポーションなんて買っていないんですけど」


「そいつはミアからの餞別だよ。ありがたく受けとりな!」


 振り向くとミアさんは照れたように笑っている。


「あの、冒険者ってやっぱり危険なお仕事なのでもしもの時のために。私、シュリさんには死んで欲しく無いので」


 不意打ちだ。そんなこと言われたらまた。今度は顔だけでなく全身が真っ赤になっていたと思う。


「なんだい、えらくミアに気に入られたようだね! 死ぬんじゃ無いよ!」


 バシバシと背中を叩かれる。痛い。普通の女性の体格なのにどこにそんな力があるんだろう。それとも僕が自分が思っている以上に貧弱なのかな?


 早速買ったポーチをつけて中にポーションを入れてみる。左の腰から少しだけ下にポーションが入りやすく入れ物と同じ大きさになるくらいに仕切られていてスッと入るし絶妙に取り出しやすい位置にある。いい買い物をした。

 あとは装備なんだけど残金は三八〇〇ジール。絶望的かなぁ。

 それでも見に行くだけ見に行ってみるか。そもそも駆け出しの冒険者である僕が一級品の防具をつけようだなんてことが間違っていたのだ。そりゃあ、戦闘になれば自分の身を守るものだから半端なものはつけたくはないけど自身の身の丈に合っていない装備を付けると装備者の成長の妨げになるなんて聞くし無いよりはマシということで。


 じゃあ、と店を去ろうとすると


「せっかく来てくれたんですからもう少しゆっくりしていきませんか。今は他のお客さんもいませんし、世間話なんて」


 ミアさんに引き留められた。このあともう一度武具屋に行く用事がなければその誘いを受けてもよかったんだけど生憎今日はそれを受けられない。


「すいません、この後武具屋に行って装備を見ないといけないんです。明日からまた依頼を受けようかなって思ってて。残念ですけど」


 断るとシュンとなって「そうですかと」非常に残念そうに呟くミアさん。なんだろう、物凄い罪悪感。

 けど、そんなミアさんもすぐに立ち直って


「あの、それでしたら私、お勧めの店があるんです! よかったらぜひそちらに。えーと、場所はここと同じ西のブロックにあるんですけど。ていうか、ここからそんなに離れていません。前の道に出てすぐのところにある角を左に曲がってしばらく進んでいったら一軒だけポツリと武具屋があるんですよ。あまり売れてないみたいですけどその店の鍛冶師の腕はいいようなので行ってみたらどうですか」


「ありがとうございます、行ってみます」


 身振り手振りで説明してくれるミアさん。ちょっと可愛かった。いや、元から可愛いんだけどね。

 最近はちょっと慣れてきた気がするんだけど。繰り返し言うけど僕が住んでいたところには同年代の女の子なんていなかったから本当に耐性がない。だから、これは大きな進歩。がんばった僕。


「また来てくださいね」とミアさんに見送られ、それに応えてユグドラシルを後にした。

 さて、ユグドラシルを出てすぐの角ってこれか。ここを左に曲がってしばらく進んで・・・・・・ここか。少し閑散とした通りで民家が続く中にちらほらと小さな店が何軒かある。その中の一つがミアさんに教えてもらった武具屋だ。

 他の店のように店頭にショーケースもない小さな店。店の裏から煙突が伸びている恐らくこれも小さいが工房があるのだろう。

 申し訳程度に看板が掲げられていて『カグツチ』と書かれている。見てきた中で大抵は自身の名前をもじったりしたものなんだけど、変わってるなぁ。


「まいど、わいの自慢の武器、防具、しっかり見てって下さい。値引きしまっせ」


 店に入るなり明るい茶色、橙に近い派手目な髪をした二十歳くらいの男性が出てきた。目が細い。さっきまで鍛治仕事でもしていたのか丈の長いエプロンのようなものをして袖はまくってある。露出した肌や頰にはいくつか煤が付いている。あとなんだろう、話し方にクセがあるというか。アクセントやイントネーションが僕やこれまで出会ってきた他の人と違う。

 それはさておき、目的を済ましてしまおう。

 小さい店で商品の数は少ない。武器が六点、防具が五点の計十一点。今日は武器の整備と防具を見たので防具が置いてあるコーナーに目を向ける。

 並んでいるのはレザーアーマー、フルプレートアーマー、シールドの三種類。

 それぞれ六五〇〇、三八〇〇〇、三〇〇〇ジール。

 足りない。

 やっぱり防具って値段が張るのかな。使用者の身を守るものだから半端なものは作れないから格安なんてことにはならないのか。

 仕方がないから今日のところは防具は諦めて武器の整備だけにしよう。


「この剣の整備をお願いします」


「なんや、防具買わんの?」


「欲しいんですけどお金がなくて」


「そういうことならいくらか負けたるわ! 手持ちはいくらなん?」


「えっと、三八〇〇ジール」


「……そらアカンわ。二七〇〇ジールも負けるわけにはいかん。武器の整備もあるしなぁ」


 やっぱりダメだったか。六五〇〇ジールするレザーアーマーを武器の整備と合わせて三八〇〇ジール以下でなんて通るわけがない。


「でも、諦めんでもええで。ちょっと待っててな」


 肩を落としているとパチンと指を鳴らして店の奥、裏の工房に消えて行った。

 数十秒ほどで戻ってきて彼の腕には鉄の塊が抱えられていた。


「胸当てや。作ったわええけど店に並ばんくてなぁ。工房の端に眠っとったんや。これなら武器の整備と一緒で三〇〇〇ジールでええで!」


 八〇〇ジールも残れば今晩と明日の朝、軽食くらいは買える。胸当てだけとはいえ身を守るものが一つでもあるのとないのとでは違う。武器の整備と合わせて買わない手はない。


「じゃあその胸当てと剣の整備をお願いします」


「まいど! 三〇〇〇ジールになります。武器の整備はちょっと時間かかるわ」


 胸当てを受け取り三〇〇〇ジールと剣を渡す。


「ほな、ついてきぃ。終わるまで待ってもらうんや、飲み物くらい出すわ」


 彼について裏の工房に行く。椅子を用意されそれに腰掛ける。そしてコップ一杯の水を渡される。飲み物くらい出すって水のことだったのか。いや、嘘ではないけど。


「まぁ、ゆっくり見とき。手順覚えたら自分でも出来るようなるから整備代浮くで。まぁ、こっちとしては頼んでくれる方がええけどな」


 ヘラヘラと笑いながら彼は準備を進める。準備したのはサンドペーパーと回転砥石、オリーブオイルと羊毛の四つ。

 準備を終えると僕が渡した剣を鞘から抜き状態の確認に入った。ふむ、とじっくり見終わるとサンドペーパーを手に取り刀身にある鯖を落とし始める。

 明るい印象を与えたいた彼だが武器の整備を始めると纏う空気が変わった。集中している。鯖を落とし終わると回転砥石で手前から奥へシャッシャッと研いで行く。ここにきてから一層纏う空気が変わる。彼の周囲で熱気が蠢いているようだ。

 何度かその動作を繰り返すとオリーブオイルを取り研いだ刀身に塗っていく。塗り終えると最後に羊毛で拭き上げていく。

 これで終了のようだ。

 整備を終えた彼は一息つくとニカッと笑って「終わったで」と一言。汗を拭うと刀身にさを鞘に収めて僕の手元に返ってくる。


「その胸当てつけてみ。サイズの確認や」


 胸当てといってもフルプレートアーマーの一部分を少々改造したもの。値段の張るフルプレートアーマーで中々手が出づらいということでパーツごとに小分けで売ると値段も下がるので僕のような新人の冒険者の手にも届きやすくなるとのことだ。着用するときには世界一頑丈だという紐で縛って固定する。信じられないことだがこの紐はそこらのモンスターの爪やらでは切れたりしないらしい。もっとも、縛って固定した紐にはアーマーを被せるから中々その効力を拝む機会はないようだけど。


 胸当てを自分の胸に当てて後ろでギュッと縛る。


「うん、問題ないな。ばっちしや」


 ビシッと親指を立てて問題ないとサインをくれる。

 変に余っていたり、逆に面積が足りていないということはないようだ。

 というか、着けた時にわかっていたけどこの防具、今回はたまたまかもしれないけどしっかりと体に合う。もしも、オーダーメイドで僕の体にぴったり合うものを作ってもらったら。偶然出会ったこれですら使用者にこれだけ合っているのだ。なら、最初から特定の使用者のためだけに合わせて作ったら。

 きっと素晴らしいものが出来上がるはずだ。素人の僕でもはっきり分かる、これを作った目の前の青年は凄い。ミアさん曰く無名らしいけどこの人は僕が午前見てきたグランデのトップクラスの鍛治士たちにも負けていないと思う。

 これだけの防具が作れるのだからきっと武器の出来も素晴らしいのだろう。

 次からはここだ、ここしかない。


「ん、気に入ってくれたみたいやね。そんな君に一つ提案があるんやけど。どう、聞いてみる?」


 僕が彼の作った防具の品質に衝撃を受けたのを見たか話を切り出してきた。それにコクリと首肯して続きを促す。


「見て分かると思うけどわいの店は全然売れてない。自分で言うのもなんやけどわいの鍛治の腕はグランデでもトップクラスやと思うとる。けどどういうわけか売れんのや」


 それは、立地のせいだと思う。確かに南西の武具屋が密集しているあのエリアに構えるのは難しいと思うけど。だとしても店を構えるならもっと他にあったと思う。

 それは口に出さないでおいた。


「けど、今日それを打開するきっかけが生まれたんや。そう、君がこの店に来た。さっき君の剣を整備して思うたんや。この武器と使用者は死線を越えたんやなって。見た感じ君、新人の冒険者やろ? それも、最近なったばっかの。それで死線を超えるゆうことは少しは素質があるゆうことや。提案言うのは近い未来が有望な君にわいの作品使ってもらって一緒に名前売り込もうって話。そのためにも今後もわいのところを贔屓にしてくれんか? てことや。もちろん、その分サービスはするつもりや。どうや?」


 この人の作る防具はとても質が高い。他のものをつけたことがないから比較なんてできないけどそれでもわかる。体に馴染んでくるこれは正しく一級品なんじゃないかって。もちろんそんなことはわからない。ただ、そう思っただけだ。けど、そんな風に思わせるほどのものなんだ。

 彼が言っていることは彼の作る武器や防具を使ってくれ。その代わりただ提供するだけじゃなくてきっちりサービスをしてやる、と言うことだ。

 彼の腕は間違いない、本物だ。なら、断る理由はない。

 僕は返事をする代わりに右手をスッと前に出した。

 それを確認した彼も右手を出してきて僕の手をとってギュッと握った。これで成立だ。


「これで、成立や。頼むで! わいはキール・ナガソネや」


「シュリ・フォルトです。よろしくお願いします」


「おっしゃ、なら早速餞別や!」


 そう言って工房の隅からプロテクタを取り出してきた。両の腕に付けるらしい。

 見た目は少々不恰好だが受け取って付けてみると胸当てと同様、しっかりと馴染んでくる。


「見た目が悪い失敗作やけどとっといてよかったわ! 安心してええよ、機能はちゃんとしてるから」


「ありがとうございます! また来ます」


「おお、頼むで!」


「カグツチ」を後にした。

 それにしても、胸当てと両腕のプロテクタだけだけど防具をつけて歩いていると冒険者って感じがするなぁ。昨日は剣だけだったのが部分的とはいえ防具を揃えた。気分が高揚している。大きめの道に出ると陽が傾き始めている頃で依頼で外に出ていた冒険者が帰ってきている。その中に僕も混じって家を目指しているんだけど、うん、いいなぁ。


 冒険者たちがそこら中の酒場で酒を飲みながら騒ぐ中、帰りに食堂によって日替わり定食(百八十ジール)を食べて帰った。内容はモンスターの肉をパン粉を付けて揚げたカツというものだった。故郷にはこんなものはなかった。噛んだ時にサクッという感じがしてその中に肉。これがすごく美味しい。あっという間にカツを平らげると代金を払って帰路に着いた。


 家に戻るとなんだか狭く感じた。それもそのはず、今日の午前に色々と買ってきたからだ。ほぼ一日中外にいたから戻ってきたときにいきなり者が増えたと感じた。運び込んだのは僕だけど。


 胸当てとプロテクタを外し丁寧に、飾るようにテーブルの上に置く。それから腰に下げている剣を外して立てかける。ポーチも外しこれも胸当ての横に置いた。

 そしてベッドに倒れこみそのまま目を閉じて眠りについた。








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