プロローグ
三作目です。
───燃え盛る街並み、絶え間なく耳に流れ込んでくる悲鳴、その他様々な音。世界の終わりとはこういうことを言うのではないかと思わせる阿鼻叫喚の光景はしっかりとまだ幼い少年の目に焼き付いた。
少年はその事態をただ呆然と立ち尽くし見ていることしかできなかった。恐怖ゆえに足が動かなかった、ではないのだろう。事態を飲み込めていなかったのだ。今までと違うことに対して理解ができない、そんなことがあるはずがない、そうだきっとこれは悪い夢に違いないと。
しかし目の前で起こっているそれは現実でありまだ遠くに思えた脅威はすぐ近くにまで迫っていた。
この事態を引き起こした原因であるモンスターだ。
逃げ遅れた者、少年と同じような状態に陥ってしまった者は殺され、咀嚼され、蹂躙されていった。
ここでようやく少年の足は動いた。
ここにきて急に理解したわけではない。本能的に逃げなければと判断が下され逃げ出すことができた。
が、本能だけでは無理があったのか足がもつれ転んでしまう。
そこにはモンスターの牙が迫っていた。
一閃。
少年迫っていたモンスターはその場にドシャリと崩れ落ち血の池を作っていた。
やや遅れて少年は顔を上げる。
少年の見上げた先には青みがかった黒髪の青年が立っていた。
青年は少年はさの無事を確認すると持っていた剣を握り直し、周囲のモンスターを斬り伏せていった。
青年だけでなく十数人の武装した者たちが続き蹂躙していたモンスターを倒していく。
やがて聞こえていた悲鳴は歓声に変わって行き火も治まっていった。
彼らの働きで少年の集落は救われた。
その一団に集落の生き残った人々はこぞって礼を述べていた。
その中には少年の姿もあった。
「あの、先ほどは助けていただいてありがとうございました!」
「当然のことをしたまでさ」
おどおどしく礼を述べ頭を下げる少年に青年はいやいやと首を振る。
それに周りの人々が「そんなとんでもない。あなた方は我々の救世主ですよ」と声が続く。
このままでは収拾がつかないと思ったのか青年達は処理がありますのでと話を切った。
彼らの去り際に少年は
「あなたみたいになれますか?」
その声に青年は振り向くと柔和な笑みを浮かべて
「ッ!? ……勿論、なれるとも」
一瞬驚きの混じった表情を見せたがすぐに微笑んで一言返すと去っていった。
その後この集落は復興し集落を救った彼は様々な偉業を成し遂げ英雄として人々に讃えられるようになる。
少年はそんな彼に憧れ目標とし日々励んでいく。
これはその少年が名を残す英雄になるまでの物語である。