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序章 第9話 後日談とはじまり

二十一世紀の日本、その都市のひとつリトルヨコハマ。


そこの女子高レプシュール女学院にひとりの転校生の少女が外国からやってきた。


ショートカットでボーイッシュな金髪の髪型と碧い瞳、そしてモデルのようなスラリとした体形のその少女は、登校日初日からすでにその容姿で話題になっていた。



始業式も終わり校門を出て自宅へ向かう。自宅の場所は小高い丘の上にある三階建てのマンションの最上階。


歩いて15分くらいのところだ。


後ろから同じ学校の生徒の声が聞こえる。


「ねえあの人いいよね、美形で足も長くてきれいだし。まるでモデルみたい」

「外国の人であんなにきれいでかっこいい人、わたし初めてみた」


しばらく歩きながら少女はふと思った。

「以前とおんなじ反応。なつかしいなあ」


あたりをみますとそこには高いビルがいくつも建っていた。


「この国の景色。随分変わっちゃったし前より空気は少し悪い気がするけど、雰囲気はどこかやっぱり同じ。しゃべってる言葉も前来た時とそれほど変わらないし。でも……、


あの二人はもういないのか」



しばらく歩くと商店街に出た、すでに桜は散り始め、葉桜が目立ちはじめていた。


「このあたりもすっかりかわっちゃったなあ。確かこの付近に昔は……」


そういってあたりを見渡すと、また少しゆっくりとまわりをみながら歩きはじめた。



少女は少ししんみりとした気持ちになった。


「ダメダメ、こんな気持ちになるため日本に来たんじゃないし」

そう思った時、横をみると制服姿の自分がガラスに映っているのがみえた。


「うわあ、やっぱりこの制服可愛いなあ。この制服がいいからこの学校選んだんだけどほんと大正解(しかし吸血鬼がガラスや鏡に姿が映らないなんて迷信が本当だったら最悪だったよ)」


そういうと急に元気になったのか、


「さてと、今夜のアニメは何かな。週末は大洗とか沼津、それに来週は秩父や鷲宮にも行かないと。で、その次の週はイベントと新作の発表が……」


そういろいろ考えながら歩いていると、そこへ同じ学校の制服を着た生徒がいきなり前に立ちはだかった。


ポニーテールのその生徒はいきなり

「私はここを警備する組織の者。名は竜王寺要(かなめ)! あなたは今日うちの学校に来た転校生ですね」


その姿その声そしてその名前を聞いた少女は驚きの表情をみせた。


要はそんな彼女を指さしこう言った。


「あなた人間ではありませんね」



要のその言葉を聞くと少女は目を急に潤ませた。そして、


「君の言う通り、確かに僕は人間じゃないよ」


そう答えた。


当初相手が人間でない場合、即刻排除行動にでるはずだった要だが、眼を潤ませながら自分をみつめている彼女の表情に不思議なものをかんじ、排除行動をとる前に予定には無い質問をした。


「あなたはいったい何者なの」


少女はその碧い瞳を要に向けこう話し出した。


「僕の名前はリサ・セイバーズ。アルティメット・ヴァンパイアさ」


「アルティメット・ヴァンパイア! まさかあの伝説的最強の吸血鬼。いったい何しにここへ!」

要は前傾姿勢をとり戦闘態勢に入るような姿勢をとった。


すると、


「アニメを見に来ました。あとイベントとか聖地巡りとか」

リサはくったくの無い笑顔でそう答えた。


要はそれを聞くといきなり怒り出し、

「ふざけないでください! ヴァンパイア、しかもアルティメット・ヴァンパイアのくせにアニメがどうとか。誰がそんな事を!」

「えー、なんで? アルティメット・ヴァンパイアだってアニメが好きになったっていいじゃないですか。そんなの理不尽です。酷いです。ヴァンパイアだからって差別しないでください」


今度はリサが急に怒り出し要につめよってきた。


いきなり予想外の反撃にたじろぐ要。


「いえ、そこまでは言ってないんですけど……」

「じゃあいいじゃないですか。アニメくらい自由にさせてもらっても。それともヴァンパイアはラブライバーになっちゃいけないとでも言うんですか。僕そんなこと言われたらダメライバーになっちゃいますよ」

「そ、そうじゃなくって。(こまったなあ、何このおかしな展開? どうしよう)」


困ったような表情になった要をみてリサは、


「じゃあ僕の家に来ませんか、そうすればすべて分かってくれると思います」

リサは一転笑顔で要に話しかけた。


「あなたの家?」

「あそこに見える丘の上のマンションの三階です。それとも怖いですか」

「こ、怖くなどありません。こうみえてもグレネーダ流の魔法資格SSをもってますから」

「えっ、魔法使いなんですか? じゃあ魔法少女ですよね。短いスカート穿いてステッキもって呪文唱えながら箒に乗って空飛ぶんでしょ。みたいなあ。その、ちょっとでいいから……」

「しません!」

「そんなあ……」

「とにかく行きましょう、あそこの三階ですね(それにしてもこのヴァンパイア、外見は綺麗だけど、けっこう残念な人……、じゃなくてヴァンパイアなのかも)」


そういうと要ははリサの家に向かって歩きはじめた。


(よく似てるなあ、あの人に。容姿も声も、雰囲気は少し違うけど)

リサはなんだかとても嬉しい気持ちになってきた。




〇リサの家



「もうしわけありませんでした!」


家に入ると三分で要はリサに土下座をしていた。


応接室には大型のテレビと複数のビデオデッキ。

机の上には最新のアニメやゲーム雑誌、

ソファにはアニキャラのねそべりや抱き枕までおいてあり、

隣の部屋には夥しいDVDとそのBOXの数々。

さらにもうひとつの部屋にはフィギュアや同人誌が所狭しと並べられていた。


(まさかここまでのオタクだったとは……)


リサのそのあまりのオタクぶりに要はもう土下座するしかなかった。


「僕、以前ずっといろいろあって家に引き籠ってたんです。で、ある時日本でやってるアニメというのを偶然テレビでみてから、もう半世紀以上こうしてアニメにどっぷりなんです。だからいつかまた日本に行こうと思ってて。それでようやく今年……」

「えっ? 半世紀! それにまたって。あなたいったい……」

驚く要にリサは

「僕達ヴァンパイアは人間よりもとても長生きなんです。こうみえても僕、要さんの十倍以上は生きてますから」


「十倍!」


驚く要にリサは

「ところで要さん。あなたの先祖に弥太郎さんと茜さんという名前の人がいませんでしたか」


要はそれを聞くと驚いた表情で、


「弥太郎と茜は明治の頃にいた私の遠い祖先の名前です。以前ある方にその名前を教えてもらった事があります。竜王寺のお店を横浜につくった人という事ですが、どうしてその名前を?」


リサはゆっくりと要に話し始めた。


「要さん。僕は君に話したいことがたくさんあるんだ。すぐには信じてもらえないだろうけど、でもそれは君にとっても僕にとっても、とてもとても大切な話なんだ」



部屋に差し込んできた夕陽に照らされ、リサの笑顔が美しくキラキラと輝いていた。



序章、終り。

次回から第一部。いよいよ本編に突入です。舞台はリトルヨコハマへ。

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