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ハッピーエンドがハッピーとは限らない。 パート2

作者: 美月里亜
掲載日:2017/04/19

「ママ、どこ?」

瓦礫に埋もれた街の中で、私はママを探していた。 

蒸し暑くて、気持ちが悪い。

地面に焼けただれた死体が転がっている中、ママを探すのは至難の技だった。

最早、顔を判別することもできないぐらいの死体の数。

「ま、ママー」

泣くの我慢してたのに、涙が止まらない。 

昨日までの平凡な日常が嘘のような大惨事。

こんな中、きっと小学校の友達も死んでる。

「ねぇ、ママ、ミサイルって怖いの?」

昨日ベッドの中で隣のママに聞くと、ママは眠たげな声で。

「怖いけど、ミヤの側には必ずママがいるから大丈夫よ、ミヤはママが必ず守るから」

そう言ってくれたのに……。

今朝、学校へ行く用意をしている中、一瞬、大きな音とともに地震のような揺れを感じた。

その時の私の記憶はたったそれだけしかなく、気が付いたら目の前を悲惨な状況で覆い尽くされていた。


「ま!ママー」

声が掠れてきた。

私は遂に力尽きてその場にうずくまってしまった。

ママも死んじゃったのかな?

私はママにもらったペンギンのペンダントを握りしめた。

枯れはてたみたいで涙も出てこない。

その時。


「ミヤ」

頭の上でママの声がした。

「ママー」

顔を挙げると、ススで汚れていたけど、いつもと変わらないママの笑顔があった。

「遅くなってごめんね」

「ママー」

私はママに抱きついた。

柔らかいママの匂い。

そして、ママのぬくもり。

周りが暑いからかな?ママの体ひんやりしていて、気持ちがいい。

「一緒に帰ろう」

私はママの手を握り締め歩き出した。


****************


私とママは二人きりで生きてきた。

パパは私が生まれる前に、ママと別れてしまったようで写真の中のパパしか私は知らない。

ママは私を自分一人の手で育てるために、いつもいつも働いていた。

昼間は託児所のある職場を選んで働き、その仕事が終ると、まだ小さな私をオンブして、チラシ配りをして、家に帰ると夜遅くまで内職をする毎日だった。

そんな大変な暮らしだったけど、ママは私がいるから幸せなんだと、私がいるから頑張れるのだといつも言っていた。

生活は裕福じゃなかったけど、ママの作ってくれるご飯は美味しかったし、ママの作ってくれる洋服はとても可愛いかったし、私はママが世界で一番大好きだった。ママさえ側にいてくれれば何も怖いものは無かった。



「いい天気で良かったね、最高のお出掛け日より!」

7才の誕生日の日。

ママはお仕事を休んで水族館に連れて行ってくれた。

ペンギンを見てみたいと言う私のワガママを聞いてくれたのだ。

「ペンギン可愛かったー」

ママとこうしてお出掛けすることは多くないから、私はすごく嬉かった。

「ミヤ、誕生日おめでとう」

水族館を出て、近場の海を歩いてると、ママが急に立ち止まり、私の手にペンギンのペンダントを握らせた。

「うわー、可愛いー」

さっき、お土産売り場で私が真剣に見ていたことママは気付いてくれていた。

「ありがとう、ママ」

「つけてあげようか?」

ママに言われた私は肩にかかっている髪を持ち上げた。

首にキラキラとペンギンのペンダントが揺れた。



     *****************


「ママに会えて本当に良かったー」

ママが生きていて本当に良かった。

ママを見付けた私はしっかりとママの手を握っていた。

「おうち無くなっちゃったし、これからどこ行くの?」

「……、ずっと二人で過ごせる場所に行くのよ」

ママは歩みを弱めて、私の目をじっと見詰めた。

「ミヤ、大好きよ、これからもずっとずっと大好きよ、ママはミヤがいれば幸せよ」


何だろう?この言葉を聞いているうちに恐怖が甦ってきた。


私?今朝、ママと喧嘩してた?


『どうして、うちにはパパがいないの?どうして、うちは貧乏なの?みんなみたいに外でご飯食べたり、可愛い服着たいし、パパとお出掛けしたい』

些細な事がきっかけで、ママと言い合いになった。

いつも優しいママはパパの話になると人が変わったようになることがあって、今朝もそうだった。

『そんなにパパに会いたいの?』

明らかに不愉快そうなママの言葉に余計にイライラして、私は畳み掛けるように言葉をぶつけた。

『パパがいればこんな貧乏じゃなかったはずでしょ?何で別れたの?』

その言葉にママの表情は変わった。

まるで鬼のような形相で、私の首に手を掛けた。

『私はあなたのためにこんなに頑張ってるのに、自分を殺してまであなたのために生きてるのに、何が不満なの?』

首を締める力が強くなる。

く、苦しい……。

息ができなくなる。

「ママ、離して」

そんな言葉が口からこぼれでる。

意識が遠退いていく。


『私はミヤがいればずっと幸せよ』


ママの言葉が遠くなる。




「どうしたの?ミヤ?」

ママの言葉にはっと我に返る。


「う、ううん、何でも……」

無いと小さく言葉を続けようとした時何かを踏んだことに気が付いた。

足元をみると粉々になったペンギンのペンダントが落ちていた……。


「さ、これからも二人だけで生きていこうね」

優しいママの顔。

大好きなママの顔。


でも…………。


私は壊れたペンギンのペンダントを見詰めた。















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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルの通り、ハッピーエンドはハッピーエンドとは限りませんね……読んでいる時、すごく胸が苦しくなりました。 もしかすると、いずれ私たちの世界もこんな風になるのかもしれません。今は戦後じゃ…
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